心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

静脈還流と心拍出量は等しいので、右房圧と心拍出量が決まれば、末梢の静脈圧もある程度は決まる

フランクおよびスターリング先生の研究結果から、心筋を伸ばせば発生する圧が大きくなり、より多くの心拍出量を出せることがわかりました。これは、心臓からでていく心拍出量に注目した研究といえます。 ガイトン(Arthur Clifton Guyton)先生は、心臓に返っ…

生体内での心拍出量と右房圧が決まる経緯

スターリング曲線は、肺循環を含めた全体の心臓としての前負荷を反映する右房圧と心拍出量を2次元で分かりやすく表現した概念であると思います。 ここで、心拍出量と右房圧が、生体でどのように決定されるかを見ていきたいと思います。 心拍出量は、血液の組…

スターリング曲線を使うと、心不全の右房圧と心拍出量の関係が理解しやすくなる

フランク・スターリングの法則は、原理原則としては重要です。ただ、実際に見かけるのはほとんどがスターリング曲線です。スターリング曲線のほうが、実際の臨床でみる心不全の理解には役に立つと思います。それは、スターリング曲線が、前負荷と心拍出量の…

Frank-Starling Law と Starling curveの違い

Frankの法則について、お話ししたいと思います。​ フランク先生は、スターリング先生の一つ年上で、ドイツで同じ大学の前任者であったようです。​ ​ さて、フランク先生は、閉鎖系で左室の圧を測定する実験系を用いたようです。​ (ドイツ語の論文と40ドルい…

フランク・スターリングの法則の原点となった論文

フランク・スターリングの法則は、オットー・フランク先生と、アーネスト・スターリング先生の2人の業績から得られた心臓の最も基本的な原理になります。 ちなみに、心力学の世界では、この2名と日本人である菅先生が同列に扱われ、数年前に、フランク、スタ…

スターリング曲線とは、前負荷の増加に応じて心拍出量が増加すること、、、基本的には。

心不全の診療をするのに、絶対に必要な生理学的な法則はいくつかありますが、その一つであるスターリング曲線についてお話ししていたいと思います。 スターリング曲線では、心室容積(ml) または、平均心房圧(または心室拡張末期圧, mmHg)を横軸にして、1回心…

心不全診療は、主治医制よりもチーム制が望ましいと考えています。

心不全のチーム医療に関係する部分として、私は個人的に日本の多くの病院でとられている主治医制には反対です。 偶然、心不全を専門にしている医師が主治医になって、十分な治療を受けれればいいですが、そうでないこともあります。というか、一般の病院で心…

心不全の急性増悪を予防する最良の選択肢は、心臓リハビリテーションを中心にしたチーム医療だと考えています。

慢性心不全が代償状態から何かを原因として非代償化する、心不全の急性増悪の原因にはいくつかありますが、心不全の急性増悪を減らすための最も重要な仕組みがチーム医療だと考えています。 医師がサポートするチーム医療というのが理想だと思います。医師主…

心不全の急性増悪の原因がない時は、心不全の終末期だと考えられる。

慢性心不全が非代償化するときに、明らかな原因があるときには何とかなることが多いです。 例えば、薬を1週間飲んでいなかったとか、インフルエンザになったとかがあれば、それで増悪した心不全を治療して、薬を飲んでもらうように状況を整えたり、インフル…

不整脈と甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンは、心不全にも影響しますが、不整脈も問題になりますので、不整脈と甲状腺ホルモンについてもお話ししておきたいと思います。 これも前回と同じCirculation誌のまとめ的な記事からの引用になります。(Anne R. Cappola, et al. Circulation. 2…

甲状腺ホルモンと心不全の関係

甲状腺ホルモンと循環器疾患の関係性はとても重要です。 AHAのガイドラインなどでも、拡張型心筋症をはじめとした心筋症や心房細動の初回診断、また、急性心不全の時には、甲状腺のホルモンを調べることを推奨しています。また、疾患ではありませんが、心房…

過度な塩分や水分の摂取も心不全の増悪の原因になる。

過度な飲水や塩分摂取によっても心不全は増悪します。 飲水や塩分負荷は前負荷を無駄に増やします。本来前負荷は、必要な心拍出量を維持するために必要ですが、過度な飲水や塩分摂取は子の前負荷を不要に増加させて、うっ血を増悪させます。また、高血圧や心…

薬の飲み忘れも心不全の急性増悪の重要な原因の一つです。

怠薬も最も重要な心不全の増悪の原因の一つといえます。 怠薬には、いろんな理由があります。 例えば利尿薬であれば、尿の回数が多くなるのが嫌で、飲むのをやめてしまったということが結構あります。多くの人は夜に尿が増えると何度も起きるため、夜間に尿…

過労による心不全の増悪と、それに対する心臓リハビリテーションの役割

急性冠症候群や感染、貧血などは発症する率をさげるような対応は可能ですが、防ぐこと自体は結構困難です。冠動脈CTをしようが、運動負荷をしようが急性心筋梗塞は発症を予測し予防することはできないというのが事実で、脂質の治療などを通して発症する確率…

うっ血を伴う心不全の時の輸血について

心不全であっても、高度な貧血の時には輸血が必要になります。 心不全の治療中に輸血や輸液をするというのはなかなかに勇気がいることです。 ただ、心不全でも、輸液などが有効な時ももちろんあります。治療経過の中で水を引きすぎて、それにACE阻害薬などの…

貧血と頻脈による心不全の経験

貧血や動静脈シャントは、hyperdynamic stateの心不全といわれます。貧血では、赤血球中のヘモグロビンが減少しているので、それだけ酸素運搬能が低下しています。濃度として低下しているので、それを補うには、血流量を増やす必要があります。つまり、心拍…

心不全の増悪因子としての貧血

貧血は、慢性心不全にしばしば合併します。心不全では、十二指腸から分泌される鉄の吸収に関わるホルモンの低下や、心不全によく合併する腎機能障害に伴いエリスロポエチンも低下することから、さらに貧血の合併が増えるとされています。これらは心腎連関、…

感染症による心不全の急性増悪

感染症も慢性心不全の急性増悪の原因となります。特に感染症の中でも呼吸器感染症が心不全の急性増悪を引き起こしやすいといわれています。 心不全の急性増悪の原因のひとつは、普段の安静時に体が必要とする酸素の需要以上に酸素需要が増えて、それを満たす…

血圧上昇による心不全の急性増悪

血圧が上がるだけでも心不全の急性増悪は起こりえます。 血圧が上がること自体でも、心不全になりえますが、おそらくほとんどは何らかの原因で交感神経系が過度に亢進して、その結果として血圧が過度に上昇し、心不全が急性増悪してしまうこともあります。こ…

不整脈による心不全の急性増悪(心房細動や心房粗動の時)

心房細動や心房粗動によっても心不全は急性増悪します。心房粗動に関しては、心房が200bpmを超える頻拍となることやそれにより心房心室の連関がうまくいかないことで、心房機能が弱まります。また、ほとんどの場合には、心房と心室の伝導比が2:1となり、心室…

不整脈による心不全の急性増悪(徐脈と頻脈の時の心不全の違い)

不整脈も心不全の増悪の原因となります。もちろん心不全そのものの原因となることもあります。頻脈誘発性心筋症(TIC)という疾患概念や、動物実験で心不全のモデルを作るときに思いっきり早く右室ペースを続けることをしますので、正常な心臓でも頻拍を続ける…

慢性心不全の治療:急性増悪を防ぐために、急性増悪の原因を知ろう

心不全の慢性期治療を行うのにあたっては、①-③が目標になるのではないかと考えています。 ①心不全そのものの進行を遅らせること、可能であれば改善させること。​ ②心不全による症状をできるだけ抑えること。​ ③心不全の増悪(非代償化)させないこと。させたと…

慢性心不全の治療目標:治療の目標と私が考える緩和医療の定義

心不全の慢性期治療を行うのにあたっては、①-③が目標になるのではないかと考えています。 ①心不全そのものの進行を遅らせること、可能であれば改善させること。​ ②心不全による症状をできるだけ抑えること。​ ③心不全の増悪(非代償化)させないこと。させたと…

ヨーロッパ心臓病学会のガイドラインにみる慢性心不全にやってはいけない治療

心不全患者にやってはいけないこともガイドラインでは、まとめてあります。ESC(ヨーロッパ心臓病学会)のガイドラインをみていきます。 まずは、薬剤投与について記載があります。 有症候性のHFrEF患者に、ジアゼパムやベラパミルの使用は推奨しないとありま…

心不全に対する慢性期治療(5):イバブラジンと心不全へのEPA投与

今回は日本で発売されているイバブラジンとEPA(エイコサペント酸)についてお話ししていこうかと思います。 イバブラジンですが、日本では商品プロコラランというようです。この薬剤は、洞調律の心拍数を落とします。イバブラジンが作用するIfというチャンネ…

心不全に対する慢性期治療(4):ARNI

慢性心不全のHFrEF(Heart Failure with Reduced Ejection Fraction)に対する治療で、ACE阻害薬、βブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬以外の薬物治療についてのお話ししたいと思います。 主に、今回はまず、日本で未発売のARNIについてお話しして…

心不全に対する慢性期治療(3): βブロッカーとACE阻害薬とMR拮抗薬

HFrEFの治療としての2トップは、βブロッカーとACE阻害薬です。トップ下にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬といったところでしょうか。 基本的には、禁忌事項がない限り導入していくことになります。 βブロッカーとACE阻害薬のどちらから導入するかというと…

心不全に対する慢性期治療(2):HFrEFの治療

HFrEF(左室駆出率の低下した心不全、Heart Failure with reduced Ejection Fration)の慢性期の治療薬とDeviceに関しては、ガイドラインに詳細に記述されています。HFrEFは、心エコーで左室駆出率が40%以下の心不全を指します。また、他のHFpEFなどは心不全症…

心不全に対する慢性期治療(1)

心不全の慢性期治療に関しては、ある程度共通の治療と、何らかの原因があれば、その原因に対しての特異的な治療があります。特異的な治療に関しては、原因毎にありますので、ここではある程度共通する一般的な慢性期治療の話をしていこうかと思います。 特定…

心臓移植登録の流れ(5)

ー厚生労働省資料ー 3 適応条件 ​ I. 不治の末期的状態にあり、以下のいずれかの条件を満たす場合 ​ a. 長期間またはくり返し入院治療を必要とする心不全 ​ b. β遮断薬および ACE 阻害薬を含む従来の治療法では NYHA3 度ないし4度から改善しない心不全 ​ c.…