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血圧上昇による心不全の急性増悪

血圧が上がるだけでも心不全の急性増悪は起こりえます。


血圧が上がること自体でも、心不全になりえますが、おそらくほとんどは何らかの原因で交感神経系が過度に亢進して、その結果として血圧が過度に上昇し、心不全が急性増悪してしまうこともあります。これは、高血圧緊張症のひとつの表現型であり、治療として血圧を下げるということが重要になってきます。
また、高血圧自体は不整脈と同様に、慢性的な高血圧状態が心機能に障害というか、負荷を与え徐々に心筋組織の変化(いわゆる心肥大)を呈し、慢性心不全を発症させる、心不全自体の原因にもなります。この高血圧による心筋組織の変化については、拡張障害の重要な一つの原因として考えられており、また別にEFpEFという心不全についての項目でお話ししたいと思います。


高血圧というか、血圧の上昇が心不全の急性増悪を起こすということについてですが、160/100の血圧が持続的に続いていても、それ自体が急性増悪に寄与することはあまりないと思います。(高血圧状態自体は、塩分や水分を貯める方向にもっていくので、徐々に溢水を起こしていっている可能性は否定できません)。

高血圧が心不全の急性増悪の原因となるときには血圧そのものが上がる何らかの理由や原因があることが多いと思われます。この時の血圧の上昇の原因となっている血管の変化は、大動脈などの大きい血管が硬くなったり、末梢の小細動脈などの小さな血管の内腔が小さくなったりしています。このような変化は心臓にとっては後負荷の上昇ということになります。


まだ、心臓の圧容積関係(いわゆるPVループ)については、お話ししていないことに最近気づきましたが、それはまたお話しするとして、PVループでは後負荷が上昇すると心臓の左室収縮末期容積が増加します。左室の容積が増えると左室の圧も増加しますので、左室収縮末期圧が上昇します。心拍数が増えなければ、心拍出量は変わらないとすれば1回心拍出量は変わらないので、収縮末期容積が増えた分左室拡張末期容積が増えますし、頻脈になれば、1回拍出量は減少しますが、頻脈自体が後負荷を上昇させる原因となりますので、拡張末期圧を上昇させます要因になり得ます。
血圧の上昇が短時間におこると、代償機転が働かないこともあり、肺うっ血から高度な肺水腫をきたします。これを電撃性肺水腫ということがあります。


このような変化が起こるのに交感神経が強く関係していると考えられます。交感神経が活性化すると血管のα受容体が活性化されます。α受容体は静脈にはほとんどないため、静脈系には影響を与えにくいのですが、いわゆる貯蔵血液といわれる肝臓や脾臓の血管内の静脈にはα受容体があるため、交感神経が亢進すると静脈が収縮して、一気に肝臓と脾臓の血流が心臓に向かって戻ってきます。これによって、さらに強い肺水腫が起こるとされています。(もともとは出血の時に対応できるような生体の代償機能の一つです)

なぜ交感神経の亢進が起こるのかは、わかっていないと思います。ただ、これは一過性であり、大抵は、陽圧換気療法で呼吸管理を行いつつ、血管を拡張させるニトログリセリン製剤をスプレーなどで使用すると、落ち着くことがほとんどです。

落ち着いた後は、ほとんどの場合には再発せずに、そのまま改善してきます。そして、退院するのですが、なぜかまた繰り返す人がいます。

腎動脈の狭窄や副腎疾患など明らかな異常があることももちろんありますが、なぜか繰り返す人が一定数いるのも事実だと思います。

 


これに関係して、Aferload mismatch(後負荷不適合)という専門用語があります。時折、血圧が上がって、Afterload mismatchを起こして、肺うっ血・肺水腫になったとの発言をする方がいますが、これは間違いです。血圧が上がって、拡張末期圧があがるのは普通のことです。では、なにが不適合を起こしているかというと、心拍出量です。
後負荷が増加したときに、左室の収縮末期容積が増加します。それにともなって、左室拡張末期容積も同じ容積だけ増加できれば、肺うっ血は起こるものの、心拍出量は維持されます。しかし、左室拡張末期容積はどこまでも大きくなれるわけではありません。ある程度の硬さを持つ心膜の中でしか大きくなれません。左室拡張末期圧が増えているときには、右室にとっては後負荷増大となっているので、急性として右室も大きくなっていますので、一層左室の拡張末期容積が大きくなれる限界点というのは決まってきます。肺静脈から左房・左室へと血液を流し込む力(肺動脈楔入圧)を超える圧に対して、血液を流し込めはしませんから、左室拡張末期容積は、左室収縮末期容積+必要な1回心拍出量よりも小さい容積になります。すると、必要な1回心拍出量をした回る1回心拍出量しかだせなくなります。この一連の後負荷が上がり、それによって必要な心拍出量を維持できなくなった状態をAfterload mismatchといいます。
Afterload mismatchによっておこるのは、肺うっ血・肺水腫ではなく、循環不全ですので、循環不全の臨床所見があった時に、この循環不全はafterload mismatchが原因だと考えられますという言い方になります。