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フランク・スターリングの法則の原点となった論文

 
フランク・スターリングの法則は、オットー・フランク先生と、アーネスト・スターリング先生の2人の業績から得られた心臓の最も基本的な原理になります。
ちなみに、心力学の世界では、この2名と日本人である菅先生が同列に扱われ、数年前に、フランク、スターリング先生から菅先生というタイトルでレビューがなされていました (Kuhtz-Buschbeck JP, Lie RK, Schaefer J, Wilder N. Perspect Biol Med. 2016;59(4):471-490. Reassessing Diagrams of Cardiac Mechanics: From Otto Frank and Ernest Starling to Hiroyuki Suga.)。菅先生のもとにいらっしゃった砂川先生、杉町先生などこの分野では日本人が非常に重要な役割を果たしています。また、この分野は英語論文では難解なことも多々あると思いますので、是非、菅先生や砂川先生、杉町先生が日本語で書かれている参考書などを入門書とすることを強くお勧めいたします。
後、論文に採用されなかったため(査読者が理解できなかったため)、教科書にその原理を記載したGuyton先生を含めた4名がこの領域のlegendだと思っています。
 
フランク先生の論文はドイツ語だけで書かれたものが多いのか、Pubmedなどで検索しても原文がでてきませんが、実験の内容などは生理学の教科書などで知ることができます。またスターリング先生は、ロンドン大学であったということもあり、英語での論文が確認できます。
 
今知られているフランク・スターリングの法則というのは、実はこれという定義がお二人によってされたわけではないようです。のちの時代にお二人の実験結果や論文を中心に、一般化されたのがフランク・スターリングの法則というようになったようです。
 
スターリング先生の論文(J Physiol. 1914 Sep 8;48(5):357-79. On the mechanical factors which determine the output of the ventricles.)では、5kg前後の犬を開胸して、心臓を露出させた状態にします(Fig.1)。輸液システムのようなチャンバーの中に血液を貯めて、そこからカテーテルを通して右房へ血液が流れ込むようになっています。下大静脈から右房の中へ圧を測定するシステムが入れられて、右房圧を測定できるようになっています。また、左心耳にも圧が測定できるようなシステムが取り付けられていて、左房圧も測定できるようになっています。肺循環はそのまま残されていて、最後に大動脈は、冠動脈の分岐の後くらいで、カテーテルにつながれていて、最終的に輸液のチャンバーへつながるようになっています。再度、輸液チャンバーにたまった血液は順次右房へ流れていくようになっています。つまり、体循環を実験系の循環に入れ替えて、調整できるようになっている実験系となります。
また、大動脈と輸液チャンバーの間には、後負荷の代わりとなる抵抗と、加温器がつけられています。
このようなシステムを使って、輸液チャンバーの高さを変えることで、右房への流入圧(静脈圧)を調整し、チャンバーの高さと心拍出量の関係を調べてるものが、スターリングの法則のもととなった実験であると考えられます。
 
 
 
 
 
この表は、チャンバーの高さを変更して静脈圧を変更すると、1分間当たりの心拍出量が増減することを表しています。1分間当たりですが、心拍数は上6つは同じ162になっていますので、静脈圧が上がるにつれて、1回心拍出量も増加しているといえます。
 
 
Fig2は、静脈圧を上げていった時、つまりチャンバーを上げていった時の圧の上昇に対する心拍出量の変化をみています。縦軸は、mmH2Oで,横軸は、c.c.(= ml)になっています。ちなみに、横軸のoutput in 10°というのは、元論文に手書きで記載されています部分になります。
これを、90度回して、反転させると、以下のようになり、現在のスターリングの法則と同じ形になります。
 
 
 
徐々にチャンバーを上げていくと、ある程度までは直線状に心拍出量は増えていき、その後カーブ上になり、下降脚といわれる圧を上げても、心拍出量が下げるフェーズの3つに分かれます。
 
これが、スターリングの法則となった論文です。