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感染症による心不全の急性増悪

感染症も慢性心不全の急性増悪の原因となります。特に感染症の中でも呼吸器感染症が心不全の急性増悪を引き起こしやすいといわれています。

 

心不全の急性増悪の原因のひとつは、普段の安静時に体が必要とする酸素の需要以上に酸素需要が増えて、それを満たすために心臓が過度に頑張らなければならない状態が続いて破綻するというものがありますが、感染はこれに該当します。

 

感染すると全身の代謝が上がりますので、それに伴って普段よりも多くの血流が必要とされ、心臓は前負荷を増やしてそれに対応しようとします。また、心拍数が上昇することも後負荷を増大させますが、心拍数 100-120bpm程度であれば、それほどこれだけで後負荷が増加するというほどではなく、全体の心拍出量を上げようとする反応として許容されると考えられます。ただ、感染の時には、心不全になりにくいような変化も起こります。感染症になると炎症性のサイトカインが増加します。この炎症性のサイトカインは末梢血管に作用して血管の抵抗性を減弱させます。そのため、多少頻拍になっても後負荷は相対的に減少することが多いと思います(感染で血圧が下がるのは原因の一端になります)

また、サイトカインは血管から組織への水の浸透性を上げることで、組織の浮腫を悪化させます。静脈圧が同じでも、浸透性が高ければそれだけ間質へ水は移動しますので、間質浮腫は悪化します。(このため静脈の血液流が減りますので、これも感染の時に血圧が下がる原因となります)

 

つまり、感染は意外に、前負荷と後負荷を減少させる効果もあるので、酸素需要の亢進はありますが、肺うっ血などの心房圧上昇による心不全の増悪は起こしにくいといえます。多くの心不全患者に起こる感染症では、全身の体浮腫が起こりますが、心不全によるものか浸透性の亢進による浮腫かはなかなかわからないことがあります。

感染か、心不全による浮腫かを見極めるのに一番簡単なのは、心エコーで下大静脈径を確認することです。心不全で血圧が低くて頻拍で、浮腫といわれて紹介されても、下大静脈が虚脱していることがあります。これは実は心不全ではなく、心機能が悪い人が感染で、血管の透過性亢進による浮腫とそれによる前負荷の不足で血圧の低下と頻拍状態になっているときがあります。こういう時には多少の輸液が必要です。輸液しても、しばらく尿は出ませんが、血行動態は落ち着きます。また、感染が抗生剤などで押さえられ始めたら解熱とともに、血管の浸透性が正常化し始め、自然と利尿が得られます。

 

このように感染の時には、心不全が増悪しにくいとはいえ、やはり酸素需要の亢進状態が続けば心臓が頑張り続けて、破綻するか、利尿が減ることもあり、水を蓄えて心不全の増悪へ進んできます。あと、輸液をしすぎてしまうと、心不全が増悪する原因になることもあります。

 

また、下気道感染(肺炎など)は少し違います。下気道感染はダイレクトに肺の血管の透過性を更新させて、たいして静脈圧が高くないにもかかわらず肺うっ血から肺水腫をきたしたり、呼吸不全から酸素の供給低下で心不全を増悪させたりするために、これだけは肺水腫中心としたいわゆる左心の後方不全を中心とした心不全の増悪となります。特に、CODP(慢性閉塞性肺疾患)を合併しているようなときには、呼吸不全から不穏やパニックがさらに循環の不全を助長します(安静に比べて酸素需要を大きく増加させる)ので、治療として鎮静薬などの使用も必要になります。この心不全の治療の時の麻薬・鎮静薬の特徴と使用方法は別途お話しします。