心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全の急性増悪を予防する最良の選択肢は、心臓リハビリテーションを中心にしたチーム医療だと考えています。

慢性心不全が代償状態から何かを原因として非代償化する、心不全の急性増悪の原因にはいくつかありますが、心不全の急性増悪を減らすための最も重要な仕組みがチーム医療だと考えています。
医師がサポートするチーム医療というのが理想だと思います。医師主導では、たぶん永続的には有効に機能しません。
 
心不全の急性増悪の原因を再度まとめると、
心臓:急性冠症候群、不整脈、肺血管疾患、心臓の構造物の急激な不全化
全身:過度な血圧の上昇、感染、COPDの急性増悪、内分泌疾患の不安化、貧血
脳:脳血管疾患、
精神:アルコール多飲
医原性:薬剤
 
患者側の原因:過労、怠薬、過度な飲水と塩分の摂取
 
というように分けれるかと思います。
心臓の中で構造物の急激な不全化というのは、自然に僧帽弁の腱索が切れたり、外傷とかなので、これは防げないと思います。
急性冠症候群は、動脈硬化によるものですので、スタチンなどで発症確率を下げることはできますし、心房細動などもあるとわかっていれば、アブレーションでの治療が一定の確率で可能です。
意外に一過性の血圧上昇をコントロールするのは難しいです。普段の血圧を下げても、一過性に突然上がるのを防げなかったりします(腎動脈狭窄などがあれば治療は可能ですが)。
感染などは、ワクチン接種やCOPDに対するムコダイン(ライノウイルスのICAMを阻害するらしいです)などで感染自体の発症の確率を下げることは可能かと思いますが、冬季のインフルエンザなどはワクチンを打っても、きっと減らせて入るんだとは思いますが、かなり多いのは否めません。
アルコールの多飲は、基本的に依存ですので、精神疾患となり、精神科との併診が必要です。
また、患者側の原因に関しては、患者さん自身がこれらが心不全を悪化させるということをしらないということが多いと思います。
 
このような心不全の急性増悪を防ぐための対策にはチーム医療が必要です。
医療として、適切な薬剤などの治療介入は必要ですが、多くは、日常生活上の諸注意になります。そこには、繰り返し話して理解を求める必要があります。
このような時間をとるということは、入院中なら何とか可能ですが、外来診療の中ではほぼ不可能です。
ただ、この時間を確保できるのが、外来心臓リハビリテーションということになります。
 
私は、外来心臓リハビリテーションを中心にした心不全の急性増悪の予防のためのチーム医療が非常に重要だと考えています。
病院も、昨今は公立病院ですら採算性を問われます(正直、不採算部門をなくしていいなら黒字化できる公立病院は多いと思いますが、それでいいのかと思うときあります)ので、まったくコストが発生しないところでスタッフを働かせるというのは困難です。そのため、ある程度のまとまった時間が確保でき、かつ、何らかのコストの発生するというのが心臓リハビリテーションにはそろっています。
心臓リハビリテーションでは、1日40 or 60分という時間で加算が可能であり、かつ多職種の介入も可能となります。
心臓リハビリテーションは、なんといっても最も重要なその人の活動性の評価が可能であり、その人個人が許容できる労作の負担の把握と指導が可能です。
また、筋力なども測定しますので、栄養状態を把握し、栄養指導士とともにグループで栄養と運動という両輪のサポートが可能です。
また、受診感覚も短くなることで、自分で心不全の兆候を診断できない高齢な方たちにも、リハビリ前に看護師が体重だけでなく、浮腫のチェックなどをすることで、心不全の増悪の早期把握も可能であり、さらに、心不全の兆候があれば運動の耐容能が低下しますので、リハビリ中にも心不全の不安定化を疑うことができます。
さらに、継続的なリハビリでの運動耐容能の変化は、心不全そのものの進行度を表しますので、非常に有用です。
 
もちろん、リハビリの根本的な部分は、運動による運動耐容能の向上、心血管疾患のリスクの低減ですが、多職種、特に理学療法士と栄養士がタッグを組むこと、また、そこに看護師はもちろん、薬剤師による投薬管理、臨床心理士による精神状態の確認が入れば、ほぼ完ぺきな心不全診療チームとなります。
 
重症で、心臓移植を前提とした入院患者患者さんが対象とはなりますが、私が、とある大学病院にいた時には、私がリハビリ担当の医師として、理学療法士3人(時に4人)とのカンファの時間に、心不全などの栄養に詳しい医師と栄養管理士さんが加わった6,7人のこじんまりとしたカンファレンスをしていましたが、非常に有意義なカンファレンスができていました。
ただ、一点だけ特殊な状況があり、私が、リハビリ担当であると同時に、急性期治療・CCU主任という立場で、ほぼすべての入院患者さんを把握し、特に急性期と重症患者さんの治療の責任者を兼ねていたというのことが一層有意性を増していたと思いますので、できれば患者さんの病棟での治療を含めた状況を把握している医師が参加することが望ましいと思います。