心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心臓リハビリテーション(4)

心不全のリハビリの対象の多くは、BNP 80pg/ml (or NT-proBNP 400pg/ml)以上であろうと思います。LVEFが40%以下で、BNP 80以下という状態の方は、安定している外来患者さんや、慢性心不全ではあるものの、心不全とは別の理由で入院してきた患者さんではありうる数値だと思います。また、心肺運動負荷試験をして、推定のpeakVO2を下回って、80%程度であっても適応となりますが、実際にやればほぼすべての人で適応となってしまうかもしれません。80%以下っている値は、BNPでいうと40pg/mlくらいな感じではないかと思います。


さて、BNPといっても、いつのBNPかというと、いつでもいいです。BNPがどんなときでも80gp/mlを超えるというのは、それだけで十分に心リハをする必要がある患者さんということになります。さすがに数年前の値とかはどうかと思いますが、心リハ登録直前は60pg/mlではあるものの、その入院の入院時140pg/mlであれば、その140という値をもって心リハ登録でいいと思います。大事なのは、必要なできるだけ多くの患者さんにリハビリテーションを施すということだと思います。

 

心リハをいつ、どのタイミングで始めるかというと、できるだけ早くだと思います。
以前にも言いましたが、運動療法に禁忌はありますが、心リハに禁忌はありません。適応があるなら、その段階からスタートです。

入院時に、急性心不全で入院となった時にはもちろんですが、心不全の合併を疑われたときにもBNPは測定されると思います。その時にBNP 80pg/mlであれば、心リハの候補です。BNP 80pg/mlだけではもちろん心リハの適応にはなりませんが、何らかの基準や臨床的な判断で心不全と診断されれば、その入院が心不全に関係するものでなくとも、その人は心不全患者であるわけですから、心不全心リハの対象となります。
そして、心リハの対象であれば速やかに心リハの登録となり、多職種による心リハチームがかかわっていくことになります。

心リハは、あくまで運動療法を中心とした包括的な治療のことをいいますので、点滴をして、酸素を吸っている状態でも、心リハチームの介入は必要です。運動療法をしてはいけないだけです。


また、登録に関して重要なのは、できるだけリハの登録を主治医の主体性に任せないということです。主治医の心リハの登録指示を待っていると、主治医の意識の高い低いによって登録の早い遅いが起きてしまい、患者さんに適切な心リハが提供できなくなります。
理想は、病棟の責任者クラスが心リハの担当になって、主治医よりも高い権限で登録や心リハのメニューを決めれるのがいいと思っています。
こうすると、主治医の意識如何ではなく、その病院の循環器内科として統一した基準、意思決定により心リハを行うことが可能だからです。もちろん、この責任者クラスは心不全に対して、どの主治医よりも病態を適切に把握し、治療する能力を有していなければなりません。そうでなければ、治療の邪魔をするというあってはならないことをしてしまうこととなってしまいます。

 

私が、ある大学病院にいた時には、CCU病棟の主任と急性期治療の責任者(他の病棟を含めた循環器疾患の治療責任者)が兼務で、さらに心リハの担当も行っていたため、重症・急性期治療の意思決定と心リハの意思決定がずれることはありませんでした。個人的には、この形態が最も心リハを有効に運用できると思いっています。これは、あくまで理想ですが、やはり心リハの担当医は、心不全に対して、その病院で最も詳しい医師であるのが望ましく、かつ、各主治医よりも高い地位にあればいうことはないと思います。
心不全に詳しいということは、専門的に技術はないにしても、冠動脈や不整脈に関しては何も知らないということはまずない(逆は大いにある)と思いますので、術後や心筋梗塞を含め、すべての心リハを安全に、かつ効果的に運用できるのではないかと思います。