前回の仮定の患者さんですが、もともと生活は完全に自立していて、家事全般自分で行っていた高血圧治療中の70歳女性。
肺うっ血多少で、少し息苦しい。全身の浮腫が強いが、低潅流所見はない。BNP 160pg/ml、Cr 1.2。エコーはpreseved EF。
入院当日の治療で呼吸困難はよくなったため、心リハ担当医は入院2日目に主治医に連絡の上、患者さんのもとへ。
ベット上半坐位(60°程度)であれば、しんどくもなく会話できるため、心リハについて説明。
酸素は低流量ながら流れていたため、心リハの担当者から心リハというものについての説明と、話していて息が上がらないかどうかに注意しながら、生活状況などを看護カルテに沿って確認し、さらに家の状態などについても補足的にお話を聴いていきます。
これは初回説明でありますが、初回心リハとして点数をとってもいいと思います。心リハの一番初めの準備段階ですし、現実に人が動いてますので、そのコストは発生しています。その後の心リハの導入での初回無料的な発想でもいいとも思いますが、そのあたりは施設毎の考え方かとも思います。
すぐに呼吸状態が安定し、酸素が不要になります。そうするとすぐに離床できるかどうか試していくことになります。この想定患者さんであれば、直前まで自立生活ですので、すぐに歩行できる可能性は高いと思います。
しかし、中には立てたものの不安定とか、歩くのに不安定感があるなど、もともと把握されていなかった不安定性が露呈したり、心不全で少し寝ているだけでも弱ってしまう方もいます。
このような時には、心リハの中でも理学療法士が中心となり、筋力やバランス感覚などのチェックをしていきます。安定して歩くのに何が弱っているのかを評価し、介入していくことが重要になります。これは、心リハができた当初に想定されていた心リハではありませんが、心不全の高齢者にとってはこのようなプロセスは非常に重要になります。
このような時のリハビリを勧めていくうえで最も重要な指標は、患者さんの自覚症状だと思います。重症心不全では、末梢低潅流などの所見が起こることがありますが、通常の心不全であれば、肺うっ血の症状が中心となります。心不全が安定しかかっているくらいのフェーズでは、呼吸困難を全く感じない程度に抑える必要があると思います。不安定な状態から安定している状態への移行期に、再度無理をすると不安定化することがあります。トイレ歩行や少しの距離の歩行が、息切れなくできるのであれば、積極的に行っていくほうがいいと思います。
また、レントゲンでうっ血がなくなり、BNPもその人が安定している状態であろう値まで低下しているような状態で、後は退院を目指すだけとなれば、しっかりと病棟内の歩行を行います。少し息が上がるかどうかというレベルまでもっていかないと、退院後に自宅生活ができませんので、自宅での生活レベルを意識した状態までリハビリを行いたいところです。
この息切れやしんどさといったものを指標化したのが、Borg指数で、最近では修正Borgというものが一般的です。(私はいまだにBorgに変換してしまいますが)
心リハでも、リハ担当医は患者さんの状態を判断して、理学療法士さんに、Borg 3までとというように、自覚症状の上限をつけて、その自覚症状の中でリハビリメニューを組んで遂行するように指示することが多いと思います。
Borgスケールは、以下のようにどの程度の自覚症状かというのを数字化したものです。弱い、強いは息苦しさにも使えますし、下肢などの疲労感などの指標にも使えます。必ず聞く前には、何に対する修正Borgスケールかということを明確にしましょう。
Borgスケール
6
7 非常に楽である
8
9 かなり楽である
10
11 楽である
12
13 ややきつい
14
15 きつい
16
17 かなりきつい
18
19 非常にきつい
20
修正Borgスケール
0 感じない
0.5 非常に弱い
1 やや弱い
2 弱い
3
4 多少強い
5 強い
6
7 とても強い
8
9
10 非常に強い