心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

大動脈弁閉鎖不全症

Pressure half time(ARとMSの重症度評価)

エコーの重症度評価に用いられる指標で、お話しし忘れた項目がありましたので、ここでお話します。 Pressure half time(PHT)は、大動脈弁閉鎖不全症と僧帽弁狭窄症の評価で用いられる指標です。 これは、弁の前後の圧較差を利用した指標です。 圧較差がどれ…

AR(12):ARの非代償性心不全の治療の注意点と思い出ーARは頻脈がお好きー

大動脈弁閉鎖不全症(Aortic valve regurgitation, AR)による非代償性心不全の治療についての、ちょっとした注意点です。​ちなみに、非代償性心不全というのは、慢性心不全の中で、うっ血や低潅流による症状が悪化して不安定化している状態の心不全のことを言…

AR(11):重症度分類と心機能を、ガイドラインに沿って

AHAのガイドラインで、心機能に関する記述を示しながら、注釈のような感じでみていきたいと思います。AHAのガイドラインでは、Systolic function(収縮機能)はLVEF(左室駆出率)で、LV volume(左室容積) (dilatation(拡大))は、LVESV(or LVESD)(左室収縮末期容…

AR(10):心機能評価指標について

ARの診断し、重症度を評価する中で心機能も重要な要素として診断基準の中に加えられています。​AHAのガイドラインの中では、左室の駆出率(LVEF, left ventricular ejection fraction)と左室の収縮末期径(LVESD, left ventricular end-systolic diameter)によ…

AR(9):腹部大動脈の拡張期逆流波形(Holodiastolic flow reversal in the proximal abdominal aorta)

重症度評価の項目で、高度かどうかをみるのに重要な評価項目がHolodiastolic flow reversal in the proximal abdominal aortaです。これは、腹部大動脈に拡張期の逆流があるかどうかという指標で、これがあると高度であるということなります。 測定の方法と…

AR(8):PISA法による重症度評価

Mild AR: ERO <0.10 cm2​, RVol <30 mL/beat​, Moderate AR:​ ERO 0.10–0.29 cm​2, RVol 30–59 mL/beat, Severe AR: ERO ≥0.3 cm2​, RVol ≥60 mL/beat, 今回は、PISA法(Proximal Isovelocity Surface Area)法といわれる方法についてです。この項目も大半は、…

AR(7):連続の式による重症度評価

(RVol:逆流量, RF:逆流率) Mild AR: RVol <30 mL/beat​ and RF <30% (両方を満たす必要あり)​ Moderate AR:​RVol 30–59 mL/beat​、RF 30%–49%​ (基本的にはmildでもなく、severeでもないものがmoderateになる) Severe AR:RVol ≥60 mL/beat or RF ≥50% (どち…

AR(6):AR jet width と vena contracta

Jet width of LVOT (左室流出路の断面におけるARジェットの占める面積率)​ Mild AR <25% of LVOT​ Moderate AR 25%–64% of LVOT​ Severe AR ≥65% of LVOT; ​ ​ Jet width of LVOTとは、LVOT(左室流出路)の断面像で、ARの逆流ジェットの断面がどれだけの面積…

AR(5):重症度評価に用いられる心エコー指標

大動脈弁閉鎖不全症の診断には心エコーが必須です。 心電図やレントゲンなどは、なんとなくの心機能障害や心不全の状態を把握するのには有用ですが、大動脈弁閉鎖不全の診断そのものには、関係ありません。​ 身体所見にも特徴的な所見はありますが、あくまで…

AR(4):大動脈造影の注意点と評価基準

ゴールデンスタンダードといえるカテーテルによる大動脈弁閉鎖不全症の評価です。 大動脈造影といって、大動脈に造影剤を十分に投与して大動脈から弁逆流がどれだけ起こっているのかを観察する検査になります。 検査の方法としては、まず大動脈造影用のカテ…

AR(3):重症度評価とその難しさ

大動脈弁閉鎖不全の重症度の評価は、細かくは5段階にわかれますが、実質的には4段階になります。細かく分けると、none(なし)、trace(わずか)、mild(軽度)、moderate(中等度)、severe(高度)の5段階ですが、traceはごくわずかという感じですので、noneと合わせ…

AR(2):原因と、昔の思い出

www.kenkohlive.com 大動脈弁閉鎖不全症の原因で多いのは、加齢性変化、二尖弁、大動脈弁輪拡大、大動脈弁の逸脱症ではないでしょうか。時折、大動脈炎などに合併したものもみますが、リウマチ性変化はかなり減っていると思います。他には、感染性心内膜炎は…

大動脈弁の構造

今更ですが、大動脈弁の解剖です。 3つの弁で構成されています。3尖弁です。 左室短軸のレベルを上にあげていくと大動脈弁の正面像がみえます。 上に右室がみえて、左下に右房、真下から右下にかけて左房がみえます。 大動脈弁の上の右室側になるのを右冠尖…

AR(1):大動脈弁閉鎖不全症とは。 ー最も難しい弁膜症ー

大動脈弁逆流症(AR、aortic valve regurgitation)、または、大動脈弁閉鎖不全(AI、Aortic valve insufficiency)はもっとも難しい弁膜症です。(正確に言うと大動脈弁閉鎖不全によっておこるのが、大動脈弁逆流症ということになります) 過大評価だけでなく、…