心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

AR(7):連続の式による重症度評価

(RVol:逆流量, RF:逆流率)

Mild AR: 
RVol <30 mL/beat​ and RF <30%

(両方を満たす必要あり)​

Moderate AR:​
RVol 30–59 mL/beat​、RF 30%–49%​

(基本的にはmildでもなく、severeでもないものがmoderateになる)

Severe AR:
RVol ≥60 mL/beat or RF ≥50%

(どちらかが越えていればsevereとなる)


逆流量の測定はかなりの慣れが必要です。普段から、余裕のある時に弁膜症のない人でも測定しておくことが重要です。いざ、異常があるからといって、その時にだけ計測しても、正確な数値を出すことはできません。

 

さて、測定方法です。
血流の速度時間積分(VTI, velocity time integral)を用います。
これは、通過する血流量を測定したい血流に、パルスドプラーをあてて、その部分の血流の速度を時間で積分することで、ある時間に通過した血流量を求めることができます。これが、VTIといわれるものです。
左室の流出路でVTIを測定して、それに左室流出路の断面積をかければ、左室流出路血流量を求めることができ、弁膜症や加速血流がなければ(断面を通過する血流が同じ速度)、1回心拍出量を測定していることになります。

大動脈弁逆流の時の逆流量の計測には、左室の流出路の血流量と、僧帽弁の通過血流量を用いて逆流量を測定します。
僧帽弁を通過する血流量は、逆流しない有効な体循環血流量となりますので、左室流出路血流から僧帽弁の通過血流を引いた血流量が逆流している血流量ということになります。また、理論的には、左室の1回心拍出量と右室の1回心拍出量は同じですので、僧帽弁通過血流量を右室の流出路血流量に変えても計算は可能です。

左室の流出路血流量(LVOToutput=大動脈弁を一度は通過する血流量)は、左室の流出路の面積を傍胸骨左室長軸像の径から求めて、次に、左室の心尖部からの5腔像か、3腔像で測定します。(3腔と5腔で両方測定して、同じ値になるのが理想)

具体的には、傍胸骨左室長軸像で左室の流出路の径(R)を測定します。
これがその断面の直径になりますので、この値を用いて断面積を算出します。D(LVOT)=(R/2×R/2×π)cm2となります。
次に、心尖部からの3腔か、5腔像で、左室流出路のVTIを計測しま、断面積を測定することで、左室流出路通過血流=大動脈弁通過血流が求められます。
ARでは、この大動脈弁通過血流には、有効な体循環血流量と逆流量の足し算になっています。

 

次に、有効な体循環血流量を求めます。
僧帽弁閉鎖不全がない時には、僧帽弁通過血流量が、有効な体循環血流量となりますので、1心拍当たりの僧帽弁の通過血流量を求めていきます。

僧帽弁の通過血流(MVflow)を、僧帽弁輪の面積と僧帽弁を通過する血流から計算します。
僧帽弁輪の面積は、僧帽弁自体が楕円形をしていますので、長径と短径から楕円の公式を用いて算出します。
長径は、心尖部からの4腔像とされていますが、正確には、2腔像です。弁を長径で切っている断面は2腔像で、それと直行するのが、3腔像ですので、本来であれば、2と3腔像で面積を算出します。特に2腔像の測定のコツは、まず左室短軸の僧帽弁レベルから、弁の中心をとおる水平の線を意識しながら長軸に徐々に振っていって、真ん中が前尖で、両端に後尖がみえるような断面像が理想です。この断面で、長径を測定します。
短軸は、それと直交するように3腔像にして、弁輪を弁の可動域の根元で測定しください。
そして、そのまま3腔像で、流入血流を測定します。弁の中央に、パルスドプラーをセットして、そこの血流のVTIを測定して、最終的に、面積とかけることで、僧帽弁通過血流を求めることができます。
パルスドプラーの注意点は、いつも拡張機能の指標として、E波やA波を測定しますが、その時は、解放しきった一番遠くの弁尖の間で測定しますが、血流量を測定するときには、かならず面積を計算したした面の中心にパルスドプラーを置いてください。この時には、弁輪の中心において、測定することになります。

特に注意が必要なのは、面積です。僧帽弁の面積は測定が少しずれるだけで結構値が変わりますので、正しい描出を行って、正しい位置で測定しましょう。

ただし、実は僧帽弁の通過血流は、中心と弁輪部で速度が異なるため、正確ではありません。ただ、駆出する血液と違い、左室が弛緩することで左房から左室へ圧較差を使って流れていく血流ですので、この位置による血流速度の違いは、誤差の範囲と考えます。
(このため、実は心房の収縮による血流移動が増えると誤差が拡大する可能性があります。実際、弁輪部と弁中央でそくていしても、まぁ、誤差の範囲でいいのかなとは思いました)

 

また、僧帽弁閉鎖不全があるときには、右室流出路血流を測定して、それを有効な体循環血流量とします。
測定は、大動脈弁が正面視できる短軸レベルで右室流出路の直径を測定し、同じようにそれを断面積として、その断面を通過する血流量をパルスドプラーを使って、測定します。それを同じように、断面積を計算して、右室流出路のVTIをかけることで、有効な体循環血流量とします。


Rvol (逆流量) = 左室流出路通過血流 - 有効な体循環血流量
Rvol (逆流量) = 左室流出路通過血流 - (僧帽弁通過血流 or 右室流出路通過血流)
となります。

逆流量は、分母が左室流出路血流量で、分子が逆流量になります。
   
50%以上の逆流があれば、高度と考え、1回心拍出量は正常であれば、60ml程度あろうとのことで、逆流量が60ml以上あれば、50%以上の逆流であろうということで(たぶん)、高度大動脈弁逆流症であるとしています。
その半分で、30-59mlの逆流量であれば、中等度としています。しかし、逆流量は25%ではなく、30%がcut off値になっていますので、注意してください。
両方ともそれ以下であれば、軽度です。

 

逆流率と逆流量の重症度が違うときには、以下のように取り扱われます。
逆流率50%以上か、逆流量60mlのどちらかを1つを満たせば、高度。
逆流率30%未満で、逆流量30ml未満の両方を満たせば、軽度。
それ以外が中等度になります。

 

例えば、
逆流率 45%でも、逆流量が65mlあれば、高度。
逆流率 55%で、逆流量45mlであれば、高度。

逆流率 25%で、逆流量 25mlであれば、軽度。

逆流率 35%、逆流量 25mlは、逆流量は少ないものの、逆流率は軽度ではないために、中等度になります。
(低心拍出の傾向にあるときです、逆流量が25mlで、有効な体循環血流量60mlであれば、1回左室流出路通過血流は85mlとなり、逆流率は29%となり、軽度となります。しかし、有効な体循環血流量が50mlであれば、逆流量25mlで、1回左室流出路通過血流は75mlとなり、逆流率は33%のため、逆流量と逆流率の片方が軽度ではないため、中等度の評価となります)