心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

急性心不全の治療

急性心不全の退院直前のクレアチニン上昇は、ループ利尿薬に騙された腎臓の悲哀

心不全の治療の最後の方で、血中の尿素窒素とクレアチニンが上昇するということは、よくあります。 これに関して、脱水による変化、つまり腎前性腎不全であると説明されます。 本当でしょうか。私は以前から違うなと思っています。 心不全で溢水の治療として…

左室の駆出率の保たれた心不全について(2)

HFpEFの急性心不全治療の注意点 急性心不全の治療と被る部分がありますが、HFpEFの非代償性心不全の治療の注意点は、循環不全と原因疾患です。 循環不全に関しては、すべての心不全に共通していますが、LVEFがそれなりにいいと、心拍出量は問題ないという先…

心不全診療は、主治医制よりもチーム制が望ましいと考えています。

心不全のチーム医療に関係する部分として、私は個人的に日本の多くの病院でとられている主治医制には反対です。 偶然、心不全を専門にしている医師が主治医になって、十分な治療を受けれればいいですが、そうでないこともあります。というか、一般の病院で心…

うっ血を伴う心不全の時の輸血について

心不全であっても、高度な貧血の時には輸血が必要になります。 心不全の治療中に輸血や輸液をするというのはなかなかに勇気がいることです。 ただ、心不全でも、輸液などが有効な時ももちろんあります。治療経過の中で水を引きすぎて、それにACE阻害薬などの…

貧血と頻脈による心不全の経験

貧血や動静脈シャントは、hyperdynamic stateの心不全といわれます。貧血では、赤血球中のヘモグロビンが減少しているので、それだけ酸素運搬能が低下しています。濃度として低下しているので、それを補うには、血流量を増やす必要があります。つまり、心拍…

血圧上昇による心不全の急性増悪

血圧が上がるだけでも心不全の急性増悪は起こりえます。 血圧が上がること自体でも、心不全になりえますが、おそらくほとんどは何らかの原因で交感神経系が過度に亢進して、その結果として血圧が過度に上昇し、心不全が急性増悪してしまうこともあります。こ…

日本では使えない、Tandem HeartというpVAD

LVAD(left ventricular assist device)は、ニプロ式LVADの仲間とそれ以外にわけられます。体外かどうかということもありますが、血行動態的には、拍動か、連続流かどうかという点が違います。 ニプロ式の仲間は、東大型、ABS、ベルリンハート(Excor)などの心…

重症心不全の終末期には、心臓移植と緩和医療以外に、自費での植え込み型心室補助循環という選択肢もあります。

VAD(ventricular assist device, 心室補助装置)は、特殊な治療となります。 VADは、体外型と植え込み型に分けられます。 この2つには、臨床上の違い以外に保険適応の問題で大きな違いがあります。 現在(2019/5/13)、保険診療上、体外型VADは、必要があればす…

心不全治療にCHDFの準備は必要だと思います。

心不全で、何らかの理由で利尿が得られず、うっ血の症状が強く出ているときには、CHDFによる除水で機械的に体内の水分バランスを保つことも重要です。 ♯CHDF (continuous hemodiafiltration):持続的血液濾過透析 このCHDFやECUMについては、半透膜だの浸透圧…

Impella時代になっても、VA-ECMOはもちろん重要です。

Impella時代になっても、VA-ECMOはもちろん重要です。 PCPS = VA-ECMO ​​ PCPS (percutaneous cardiopulmonary support):経皮的心肺補助[法、装置]​​ ECMO (extracorporeal membrane oxygenation)​:膜型人工肺による酸素化、体外膜型人工肺 IMPELLA:これは商…

心不全の急性期治療としての機械的な治療、IABPについて

急性期の機械的な治療についてです。 現在、心不全で使用される機械的な治療としては、呼吸管理のほかには、IABP, IMPELLA, PCPS(VA-ECMO), VAD, ECUM, CHDF, (VV-ECMO)があると思います。 IABP (intra-aortic balloon pumping)​:大動脈内バルーンパンピング…

なぜ、サムスカは有効なのか、血行動態的に安全なのか。それは、腎静脈のナトリウム濃度の変化にあると考えられる。

すこし浮腫に関してのおさらいです。 心不全の時には、何らかの理由で心内圧が上昇します。その結果、心臓の最も下流にある右房圧が上昇します。すると全身の静脈圧が上昇し、それによって全身の浮腫が生じます。この時の血管から間質への水の漏れはスターリ…

サムスカが教えてくれたこと:水はどのように全身に分布するのか。

サムスカが教えてくれた水の分布についてです。 ​ 心不全の時には、体に余分な水が貯まります。​ 水のたまり方について、サムスカは考えさせてくれました。​ ​ 輸液の考え方で、水(自由水=ブドウ糖液)を輸液するときと、生理食塩水を輸液するとき、アルブミ…

サムスカという薬

サムスカという利尿薬があります。発売が2010年12月14日とのことですので、すでに8年と少し経っていることになります。 新しい機序の薬というのは、治療の新たな一手となるだけではなく、特に臨床医に病態を考え直すきっかけを与えたり、改めて今までにもあ…

急性心不全の治療(29):急性心不全で徐脈を合併しているときには

急性心不全の時には、なんだかんだでしんどくなりますので、普段よりも脈は速くなります。しかし、徐脈性の不整脈が合併していて、明らかに徐脈になっていたり、心不全の急性期のわりに徐脈っぽくなっていることがあります。 心エコーでの心臓の動きは正常で…

急性心不全の治療(28):心不全と心房細動とジギタリスと

ジギタリス製剤は、心房細動によく投与されているのをみかけますが、慢性期の心房細動の患者に投与するのは、エビデンス的には、有害な可能性がありますので、心房細動を伴う心不全患者への投与は勧められません。 ジギタリスの作用としては、Na/Kチャンネル…

急性心不全の治療(27):頻拍に対する治療(心房細動、心房粗動の時)

心房細動の時にどうするかですが、心房細動の時には、洞調律の時に使えるジギタリス、オノアクトに加えて、ワソランやヘルベッサーも有効になります。また、特に初回の心房細動では電気的除細動をどのタイミングで行うかというのも、重要な選択肢になります。…

急性心不全の治療(26):頻拍に対する治療(洞調律の時)

循環不全や利尿が不十分で、その理由として心拍数が考えられる時には、心拍数そのものを治療しに行くことになります。あくまで目安ですが、洞調律の時には110bpmくらいまでは、心拍出量が低下する原因にはなりにくいかと考えていて、甲状腺などの原因を調べ…

急性心不全の治療(25):急性期の心拍数の評価は、モニター心電図を使いましょう。

心不全の急性期に心拍数に対して治療するかどうかは、悩ましい問題です。 救急外来や入院直後の頻拍に関しては、循環不全や呼吸不全に対して治療を行うことで安定することは多いと思います。 では、どのくらいの心拍数なら、そのまま様子を見るかという問題…

急性心不全の治療(24):急性期および重症心不全治療におけるACE阻害薬の意味と使い方

心不全の慢性期に、予後などをよくすることを目的にして使用する薬剤として代表的なものに、ACE阻害薬とβ受容体遮断薬があります。 β受容体遮断薬は、心機能を一時的に抑制する作用があるため、急性期から使用する時には、心拍数を何とかしたいというとき以…

急性心不全の治療(23):患者さんのセルフケアの必要性、外来での急性心不全治療での利尿薬の使い方

急性心不全の治療は、循環不全を常に意識し、呼吸状態を安定させながら、全身の溢水とうっ血を改善させるということになります。 基本的には、どんな心不全でも考え方や評価の仕方は同じで、重症になればなるほど、低拍出による循環不全が前面に出てくるので…

急性心不全の治療(22):心不全治療の時の1日尿量は2500±500mlくらいでいいと思います。

ファーストタッチの後に、具体的にどのように利尿薬を使用するかをお話ししました。 心不全の急性期の治療において、どれくらいの尿量があればよしとするかについての、私がなんとなくこれくらいかなと思っていることをお話ししたいと思います。 できるだけ…

急性心不全の治療(21):ひとまずのラシックス静注後の利尿薬の選択をどうするか。そして、ラシックスはクロールとともに持続静注を。

慢性心不全の急性増悪の時に私が行っていた利尿薬の投与法は、まず、ラシックスを10 or 20mg静注して、その反応を60分程度でみて、次にどうするかを考えていました。 次に打つ手として多いのが、トルバプタン(サムスカ)の追加内服か、ラシックスの追加静注で…

急性心不全の治療(20):ファーストタッチのラシックス10 (or 20)mg投与

心不全の急性期の薬剤治療については、最も重要なのが利尿薬です。 また、特に重症心不全などでは利尿薬を使いつつ、ECUMという選択肢を意識しておくのも重要です。 さて、ほとんどの心不全の増悪状態では、ある程度余分な水が体にたまっていることがほとん…

急性心不全の治療(19):カルペリチドの具体的使用方法とガイドラインでの扱いに対する疑問

カルペリチドの具体的に使用用法としては、少量から開始し、必要があれば増量するということでいいだろうと思います。具体的には、0.01γ(=ug/kg/min)程度で開始して、0.005 or 0.01γずつ30-60分程度で増量していく感じでいいと思います。それ以下でしか始め…

急性心不全の治療(18):私がカルペリチドを使わなかった理由

日本で一番使用されているらしい血管拡張薬のカルペリチドについてです。確認ですが、カルペリチドは血管拡張薬で、少し利尿作用がある薬剤です。利尿薬ではありませんので、利尿作用は付加価値的に考えるのがいいと思います。 また、薬理的にはアルドステロ…

急性心不全の治療(17):血管拡張薬、特にNO供与体(ミオコール®、ニトロール®、ニコランジル®)

血管拡張薬の具体的な使用方法を述べていきたいと思います。何度も繰り返しになりますが、血管拡張薬を、私は呼吸管理の一環と考えています。心不全だから、血管拡張薬という風に素直にいかずに、すべての治療でそうですが、目の前にある心不全に対して、ど…

急性心不全の治療(15):静脈の弛緩の生理学と腹腔内静脈が交感神経支配を受けている意義

現在、心不全で血管拡張薬として使用されている持続静注の薬剤(主にニトロ系の製剤とhANP)は、基本的に静脈系の血管拡張薬であり、前負荷を軽減させること、つまり、右室拡張末期圧、左室拡張末期圧を低下させる効果があります。拡張末期圧の低下は、拡張末…

急性心不全の治療(14):うっ血の治療は? 利尿薬・ECUM・血管拡張薬

心不全の治療で、重要な循環不全と呼吸不全に対する評価と治療を行ったら、次に重要なのはうっ血の解除です。 時間的に次に重要と記載しただけで、心不全の治療とは、循環を維持しながら、うっ血をコントロールすることですから、うっ血の治療はとても重要で…

急性心不全の治療(13):普段の心不全入院患者さんの診察について

うっ血の治療についてお話しする前に、私自身が自分の受け持ちの心不全の入院患者さんに、毎日診察していた所見についてお話します。もちろん、看護師さんがつけてくれる熱型表や記事内容、心電図モニターを確認したうえで、ベッドサイドにいって食欲はどう…