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心不全について私が知るすべてを話すブログ

心不全治療にCHDFの準備は必要だと思います。

心不全で、何らかの理由で利尿が得られず、うっ血の症状が強く出ているときには、CHDFによる除水で機械的に体内の水分バランスを保つことも重要です。
♯CHDF (continuous hemodiafiltration):持続的血液濾過透析
 
このCHDFやECUMについては、半透膜だの浸透圧だの、限外ろ過だのという説明が多くて、で、結局はどうしたらいいのかということを説明してくれているものは少ないように思います。
 
私も、これらの治療自体は腎臓内科や透析にかかわっている先生のように詳しいわけではありません。
ただ、心不全には絶対に不可欠な治療であると考えており、腎臓内科の先生がいない施設でもしなくてはならないときがあると思います。
(ただし、絶対に習熟した臨床工学技士さんの存在は必須です。いない場合には、患者さんを当該施設へ送りましょう。粘ってはいけません)
 
この心不全に対するCHDFに関して、臨床試験では有用という結果は一部であり、現時点では利尿薬で治療できるものは利尿薬で行くという方針にはなります。何でもかんでもしたらいいわけではありませんが、逆にCHDFをしたら悪いという結果もありませんので、消極的になる必要もありません。もちろん、利尿薬より費用の問題はでてきますが。
 
これらの臨床試験の結果の解釈は注意が必要です。それは、これらの研究が、実際の臨床に則していないということです。どういうことかというと、強心薬などと同じで、前向きにランダマイズで試験を行うと、必要ではない人(やってもやらなくてもいい人)にこの治療をやったほうが、より良いかどうかという研究デザインになります。
例えば、ラシックスを100mg静注しても、利尿が不十分な人に、ラシックスを300mgに増量するか、CHDFをするかという研究であれば、実際の臨床に近い結果が出るかもしれません。しかし、このデザインでは、かなり数を集めるのに苦労すると思われ、研究の実施自体が難しくなります。そのため、どうしても浮腫などの明かな心原性浮腫の所見があって、利尿薬でもいけるとは思うが、利尿薬以上の効果を期待して、透析を行うとより良いのではないかというデザインになります。つまり、本来であれば透析が必要そうではない人の集団に対して、利尿薬 vs CHDFという研究にならざるを得なくなります。その結果が、より良い効果はないということになっています。
 
実際の臨床では、患者のベースラインをみて、腎臓の問題で尿が出なさそうとか、循環を立て直すだけでは尿が出なさそうというのがあって、やっぱりいろいろやっても尿が出ないときには、積極的に早期にCHDFを使うことが望まれると考えています。
 
CHDFとはいっても、管理の問題で、1日6時間とか、日勤帯だけとかでもいいと思います。
CHDFに慣れていないのなら、導入時には必ず腎臓内科の先生か、習熟した臨床工学技士さんといっしょに開始しましょう。導入時に問題となるのは、設定と実際に回路を組むということです。回路を組むのは慣れればできます。CHDFを終わるときには、回路を外しますが、これは、慣れなくても一回みればできます。
導入時は慣れた人と一緒に行う必要がありますが、終わりは慣れていない循環器内科医一人だけでも大丈夫です。そのため、日勤帯に導入、回路が詰まるまで継続して、夜勤帯に回路が詰まった場合には、当直医が離脱させるということで対応可能だと思います。
 
 
では、CHDFの設定についてです。
循環器内科医が、意識しなければならいのは、一点だけで、血液の流量のみです。(他の設定は、臨床工学技士さんや腎臓内科の先生に丸投げでもいいと思います)
重症心不全であればあるほど、立ち上がりをゆっくりとしなければなりません。設定は、20ml/minから、血圧などを見ながら徐々に上げてはいきます。最終的には、50-80ml/min程度でも、機械的に問題がなければその程度の血液流量でもいいと思います。
 
CHDFを行うときに、選ぶ必要があるものは、透析のフィルターの種類と抗凝固薬の種類(ナファモスタット or ヘパリン)です。
フィルターは、特にそれほどこだわりはなく、管理の都合上できるだけ目詰まりしにくいものということで選択していました(セプザイリスという膜をよく使っていました)。
抗凝固に関しては、ヘパリンが多かったですが、出血のしやすさや、他の治療機器、内服などの関係で、できるだけ回路内だけの抗凝固をということであれば、ナファモスタットでいいと思います。
 
実際に開始する時に、設定値を選択・調整するものとしては、透析液流量と補液量、濾液量があります。
透析液量と補液量ですが、これは保険の関係で、24時間持続で行う前提であれば、透析液量 600ml/h、補液量 200ml/hは実質固定値になります。この値は治療中も変更しないと思います。
カリウムが高いので一時的に電解質除去を目的にしたいときには、透析液流量を1000-2000ml/hに上げる必要があるようですが、このあたりは専門家と相談しながら調整する必要があります。
 
実質的にいろいろと変更させるのは、濾液量です。濾液量の設定で除水量を決めます。除水量は、濾液量から透析液量と補液量の合計を引いた値になります。透析液量 600ml/h、補液量 200ml/hで固定となりますので、濾液量 800ml/hであれば、除水量は0、濾液量 900ml/hであれば、除水量は 100ml/hとなります。
 
つまり、CHDF開始時にはは、濾液量 800ml/hで除水を0ml/hにして、血液流量も20-30ml/h程度で開始して、特に血圧に注意しながら徐々に10-20ml/hずつ上げていきます。あまりに上げるのが遅いと凝固する可能性があるので、安定するまでつきっきりで調整してください。
補液量が200ml/hですので、個人的には60ml/hあれば問題ないと思います。
 
回路が安定して回り出したら、濾液量を調整して、50ml/h程度にいったん設定し、その後、行けそうなら60-150ml/H程度で、欲しい尿量をイメージしながら設定すればいいと思います。
 
CHDFに関しては、すこし乱暴な言い方になりますが、IABPやPCPSと違って、最悪何か起こっても、回路を止めればいいだけです。回路内で凝固してしまって返血できなければ、回路内の血液がロスしてしまいますが、それ以上のことは起こりません。
利尿がない中、うっ血による溢水で呼吸状態が不安定化している状態なら、循環不全の評価・治療をしたうえで、利尿薬をあれやこれやといじるだけでなく、CHDFという選択肢も常に意識して、必要な時には素早く導入し、水分管理を行うことを考えなければなりません。