心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心不全の治療(23):患者さんのセルフケアの必要性、外来での急性心不全治療での利尿薬の使い方

 
急性心不全の治療は、循環不全を常に意識し、呼吸状態を安定させながら、全身の溢水とうっ血を改善させるということになります。

 
 基本的には、どんな心不全でも考え方や評価の仕方は同じで、重症になればなるほど、低拍出による循環不全が前面に出てくるので、循環の立て直しに、さまざまな機械的な循環サポートや、呼吸管理にも機械的なサポートが必要なことが多く、また、しばらく利尿がない期間を許容しなくてはならなかったり、利尿の状況によっては、血液浄化療法を行ったりする必要があるだけです。


また、軽症の心不全では利尿薬の調整だけで外来治療で急性期を乗り切って、そのまま慢性期治療や精密検査を行っていけることも多々あります。
外来を受診されたときに、初回の心不全の方は難しいと思いますが、心不全の増悪を繰り返しているような方に関しては、外来での治療だけで非代償状態を代償状態にすることも可能です。
慢性心不全の患者さんのセルフチェックが必要な理由がここにあります。外来が1か月に一度だと、心不全の急性増悪は数日から1週間程度で起こりますので、1か月の間に肺うっ血ないし肺水腫までおこりえますので、そうなった時には入院が必要になります。入院が必要かどうかの大きな要因は、循環不全と呼吸不全だと思います。
患者さんがセルフチェックでこれらの症状が現れる前に、一定以上の期間での体重増加(例えば3日で2kg以上)や、下腿の浮腫の有無を評価できて、それらの症状がでたときに、予約外で受診し、一時的に利尿薬を増量することで、心不全の増悪自体は起こっていても、入院を回避することができます。

(重症心不全で、外来で週に3回ほど強心薬と利尿薬を3-4時間程度投与するという治療がありますので、外来注射もないわけではありませんが、これは安定している重症心不全の方に行われる治療だと思います)


さて、少し話がそれましたが、外来か、入院でも軽症のほうで、内服の調整で治療が可能な非代償状態の心不全をみていきます。
ここでは、内服の利尿薬と慢性期治療薬でもあるACE阻害薬が重要な治療オプションになってきます。
時折、ジギタリスやピモベンダンの短期投与も重要です。
ジギタリスは誤解の多い薬剤ですので、また、別にお話ししますが、誤解の多い部分だけお話ししますと、心房細動にジギタリスを慢性的に使って良い効果があるというエビデンスはありません、逆に予後を悪くするという観察研究がいくつかあります。心不全に対するジギタリスは、あくまで洞調律の心不全患者に、少量使う(=低い血中濃度)と心不全の再入院を減らしたりする効果があるということです。
ただ、強心薬として使用する時もあると思いますが、こういう時はある意味緩和的な段階(ジギタリスを強心薬として使用するときはかなり追い込まれているとき)だと思いますので、いわゆる有効血中濃度内でなら多少高めの濃度でもかまいません。


外来で、いつも見ている患者さんが、足がむくんでいて、レントゲンで胸水はあるが、肺うっ血はそれほどでもない。労作時の息切れも日常生活範囲なら大丈夫でSpO2 98%程度はある。血液検査でも、BNPは多少高くなっていて、クレアチニンとT-bilが若干高くなっているかなという程度で、AST/ALTは正常範囲という状態だったとします。

入院でももちろんいいですが、外来での治療でもいいと思います。


この時は、腎機能ともともと飲んでいる利尿薬の量にもよりますが、ループ利尿薬をフロセミド換算で40-60mgの内服追加か、ループ利尿薬の量がもともと多い人は、5割増しくらいでいいと思います。そのうえで、できるだけ翌日、すくなくとも翌々日には受診していただいて、再度評価することでいいと思います。もちろん、家が近いとか状況が許せば、ラシックス10mg静注でもいいと思います。
(おおよそ、フロセミド 40mg = ダイアート60mg = ルプラック 8mg)


サムスカに関しては、初回外来導入は禁止されています(2019/4/10現在)が、再導入は可能なようですので、入院中に服用した経験があれば、サムスカの3.75 or 7.5mgの追加投与でもいいと思います。


また、心不全の増悪時には、血清ナトリウムが多少なりとも低くなることが多いのですが、ナトリウムが高い人(148mEq/L程度)が時折いて、そのような方にはサイアザイド系利尿薬の追加も有用です。私は、いろいろと調べた結果サイアザイド系の利尿薬ではナトリックスがいいなと思いましたので、心不全の治療に使うときには、2mgの追加で、高血圧や心不全の慢性期に使うときには1mgを中心に投与していました。


さらに、カリウム濃度によっては、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬であるアルダクトンの追加も有用です。これは、ある程度異常の心不全の慢性期治療薬でもあります。

多少のうっ血・胸水であれば、ループ利尿薬を使わなくてもアルダクトンないし、エプレレノンだけでもコントロールが可能な時があります。ただ、これは症状がない多少のうっ血・胸水の時や慢性期の維持に限定するほうが安全です。これだけで治療にいくには、薬効が弱いと思います。
また、最近ミネブロという新しいミネラルコルチコイド受容体阻害薬がでているようですが、使用したことがないので、何とも言えません。データだけ見るといいようですが、わかりません。