心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

重症心不全の終末期には、心臓移植と緩和医療以外に、自費での植え込み型心室補助循環という選択肢もあります。

VAD(ventricular assist device, 心室補助装置)は、特殊な治療となります。
 
VADは、体外型と植え込み型に分けられます。
この2つには、臨床上の違い以外に保険適応の問題で大きな違いがあります。
現在(2019/5/13)、保険診療上、体外VADは、必要があればすべての人に対して使用することができます。一方、植え込み型VADに関しては、心臓移植の登録患者にのみ保険適応となります。心臓移植(transplant)を目的にして、心臓の手術が行われるまでの期間の橋渡し的な治療(brighe)としてのVAD治療ということで、心臓移植を前提にした植え込み型補助循環による治療をbrighe to transplant(BTT)といいます。これに対して、欧米などで行われている心臓移植を前提とせず、心機能不全に対する純粋な機械的な治療としてのVAD治療のことを、destination therapy(DT)といいます。destinationというのは、補助循環をつけると基本的にはそれなしでは生きていけないということを強く意識しているということになりますが、一度つけて離脱できない人がいないわけではありません。
 
現在、植え込みVADに関しては、日本ではBTTだけが保険診療で手術などの治療ができて、DTに関しては保険診療での治療ができません。もちろん保険適応の問題だけですので、心機能が悪く、何らかの理由で心臓移植登録ができない人に関しては、すべてを自費で賄うことができるなら植え込みVADの手術とその後の管理は可能です。およそ3000-6000万程度で可能かと思います。
 
 
この事実は、重要だと思っています。移植登録できない程度に高齢(67歳くらい)でも、全然現役でバリバリ働いていらっしゃる方は、数えきれないくらい大勢いらっしゃいます。そのような方で、心臓だけが悪いという方がいたとしたら、67歳で心臓移植できないから緩和医療というわけではないということです。このくらいの年齢であれば、5000万払ってでも、まだまだ生きたいんだという人はいらっしゃると思います。このような方にとって、自費診療による補助人工心臓というのは、治療のオプションになってきます。現に、いくつかの大学では数例ずつの患者さんの実例があります。
保険診療を行う医師が、認可はされているが保険診療の適応にはならない治療についてどこまで説明する義務を負うのかは、正直わかりません。ただ、法律的な義務とは別に、このような治療オプションがあって、それを提示するということは必要なことではないかと思います。
 
この問題に関しては、何らかの理由で移植登録できない人に関する左室補助循環の保険診療に対する臨床試験は4年ほど前に行われていて、その結果で認可される方向ではあると人伝に聞いています。ただ、高齢の方ではやはり脳梗塞などの血栓症が多い、移植登録の方でも50歳以上の方では、思ったほど予後が良くないなどの問題はあるようです。