心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

うっ血を伴う心不全の時の輸血について

心不全であっても、高度な貧血の時には輸血が必要になります。

心不全の治療中に輸血や輸液をするというのはなかなかに勇気がいることです。

ただ、心不全でも、輸液などが有効な時ももちろんあります。
治療経過の中で水を引きすぎて、それにACE阻害薬などの薬剤の最も有効な時間帯に血圧が過度に低下することはあり得ます。この時に輸液を試すというのは有効です。Fluid challengeといいます。Fluid challengeは、心不全の時だけの言葉ではなく、輸液による反応を見ること全般を言います。本来はどんと輸液をいれます。しかし、心不全では過度な輸液は禁物ですので、具体的には、100ml程度の生食を10分程度で投与します。もちろん、Fluid challengeの前には、経過から血管内に十分な前負荷を作る血液がないと判断できるだけの検査などをいくつかしてから行います。
エコーなどでhypovolemiaの所見があればいいのですが、重症心不全ではなかなかこのような所見はありませんので、今までの治療経過と、体重、血圧の経過、薬剤とその有効な時間などを見極めたうえで行います。このfulid chanllengeで血圧が戻るのであれば、やはりその人の血行動態からしたら少し水を引きすぎなので利尿薬を減らす必要性が考慮されます。

さて、話は戻って、貧血の時です。
高度な貧血を伴う心不全では輸血が必要となることが結構あります。Fluid challengeとは違って、うっ血があって、水をひかなければならない状態ではあるが、貧血に対して輸血をしないと、心不全が安定しないと判断される時です。
このような時でも、ひとまず利尿薬に反応しているときには、時間当たりの尿量をみて、1単位(約280ml)を尿量を越えない程度で投与します。

利尿の反応が悪い時には、呼吸状態に細心の注意を払いながら、1単位(約280ml)を6時間程度で投与します。これ以上時間をかけると製剤自体が溶血したりするので、適当ではありません。6時間でも少し長いですが、利尿の反応が悪い以上仕方ないかと思います。

また、どうしても利尿が悪くて、輸血の水分ですら投与が難しいと判断されれば、機械的に血液透析で抜きつつ入れるしかありません。
さらに血液浄化の機械がない時には、瀉血も考える必要があります。要は、薄い血液を抜いてその分濃い血液を入れるという発想です。私は、基本的に血液浄化の機械がないことがなかったので、したことはありませんが、一部昔の先生は薄い血を抜いて、濃い血を入れるということをされたことがあるとのことでした。血を抜いただけで、利尿がつくときがあったとのことですが、血を静脈から直接抜くと、その分前負荷が低下しますので、血管拡張薬のような作用があるのかもしれません。
瀉血を100ml程度して、前負荷をとんと落として、その後、濃い血液を入れるのはどうしても代替する方法がないのであれば、なくはないのかなと思います。