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急性心不全の治療(26):頻拍に対する治療(洞調律の時)

循環不全や利尿が不十分で、その理由として心拍数が考えられる時には、心拍数そのものを治療しに行くことになります。
あくまで目安ですが、洞調律の時には110bpmくらいまでは、心拍出量が低下する原因にはなりにくいかと考えていて、甲状腺などの原因を調べるということは別にするとして、心拍数そのものに介入をしに行くときには、120bpm以上というのが目安で、110-120bpmは境界域といったところでしょうか。


具体的な方法としては、薬剤投与ということになります。ワソランは洞調律には効果はありませんので、ジギタリスとオノアクトということになります。
ジギタリスは、腎機能に注意が必要ですが、単回の投与では、中毒域にはならないと考えています。一応、小さい高齢女性などでは、ジゴシン注0.25mgを0.5A(0.125mg)だけ投与するようにしたり、多少の減量はしていました。ただ、ほとんどの場合には、1回のみの投与で、連投したり、毎日投与したりすることはあまりなく、ひとまず、一回ジゴシン静注を0.25mg (or 0.125mg)の量を30分程度で投与して、投与完了のタイミングでも、心拍数がまだ高い場合には、そのままオノアクトを持続で投与するという方針で行っていました。


オノアクトの投与方法は、少量からちょっとずつ増量していくという感じでした。開始は、0.5 or 1 or 2γ程度で、1γずつ増量していく感じです。 基本的に、心拍数の調整に薬剤を使用しているときには、低心拍出量の時だと思います。

心拍数を下げて、下がった分以上に1回心拍出量が増加することで、総合的な心拍出量を増やそうとするのが目的だと思いますので、オノアクトは、陰性変力作用がありますので、いきなりある程度の量を投与すると、低拍出が悪化することがあります。このある程度の量というのが、人によって違うので、あくまで低用量から、少しずつ増量していくということが安全だと思います。
もちろん、慣れれば各人の使い方でいいと思いますが、オノアクトをなれるほど使う人は限られているかと思います。


また、手持ちのデータでは、20人ほどオノアクトを使用していて、きれいに半数にジゴシンの先行投与を行っていました。すると、ジゴシンの先行投与を行っていた患者さんたちのほうが、主治医が適切だと思う心拍数に到達したときのオノアクトの使用量が半分で済んでいました。
かなり限られたデータですので、一般化はできません。ただ、どちらを使うかというよりことではなく、私は心拍数を管理する時には、基本的に透析や腎不全でもジゴシン(0.25 or 0.125mg)を先行投与し、そのあとでオノアクトを使用するというようにしていました(もちろん、普段からジゴシンを服用している人には血中濃度的に危ないので、オノアクトだけでいい思います)。
ちなみに、オノアクトの投与量は、だいたい2γ程度で、最大でも4γほどでした。
他の施設よりも少ないのは、それほど心拍数を下げるに必死になる必要はないという考え、ジゴシン投与を先行している例が半数あるのこと、頻拍時には、かならずなんらかの不整脈が隠れていないか、心拍数を早くする併存疾患はないかということを同時に調べていたせいもあると思います。
もちろん、オノアクトには陰性変力作用といって、心の機能を弱める作用があります。心拍数を下げることで至適な心拍数にもっていくことと多少なりとも心機能抑制がおこることを天秤に載せながら、心拍数の治療を行っていく必要があります。


この点、ジギタリスに関しては、強心作用がありますので、比較的気楽に使えます。ただ、濃度によっては中毒症状といって、消化管症状である悪心や嘔吐などの症状が出ますが、普段内服をしていない人で、普通の人であれば0.25mg、血液透析の人とか体格の小さい高齢女性で0.125mgを点滴静注する程度では中毒症状にならないと思います。
また、オノアクトは短時間作用なので、何かあっても中止すれば薬効自体は短時間で消失します。

ただ、何が理由であっても、循環動態が崩れると薬剤を中止して、薬の作用が切れたとしても、崩れた血行動態が改善されるわけではありませんので、短時間作用だから安全というわけではありません。
一度崩れたものを立て直すのは、大変です。

 

また、慢性期を見越して、アーチストやメインテートといった、左室収縮率の低下した心不全の慢性期に有効なβ受容体遮断薬を心拍数の管理目的に少しずつ導入することも可能だと思います。
ただ、急性期に、心不全の治療管理に慣れていないときには、β受容体遮断薬の導入は重症度や不安定性によっては心不全のさらなる悪化を起こす可能性があるために注意が必要です。
ビソノテープも使用することは可能です。内服よりは、何かあった時に中止後の血中からの薬効の消失は早いですし、効果自体の立ち上がりも穏やかなので、内服よりは安全な可能性もあります。保険適応の問題に注意が必要ですが(拡大していくと思います)、内服よりも安全に使用できる可能性は高いと思っています。一応、ビソノテープ 4mg(1枚)=メインテート 2.5mgが等価とされています。
心不全の急性期の心拍数管理に使用する時には、ビソノテープを4分割して、1mgで開始するのが安全です。メインテートで0.625mgであり、大体そのような感じになると思います。ただ、4分割すると結構はがれやすいので、優肌絆などで上からさらに固定する必要があります。