カルペリチドの具体的に使用用法としては、少量から開始し、必要があれば増量するということでいいだろうと思います。
具体的には、0.01γ(=ug/kg/min)程度で開始して、0.005 or 0.01γずつ30-60分程度で増量していく感じでいいと思います。
それ以下でしか始められそうにないような血圧の低い時や、低潅流などがあるときには使用する必要はないと思います。
繰り返しますが、増量によって得られるのは、血管拡張作用であって、利尿作用ではありません。利尿が不十分な時には、カルペリチドを増量するのではなく、利尿薬を積極的に追加投与するほうが有効です。
また、単独のルートによる投与でないと混濁するのでだめです。これにルートがひとつ占領されます。
さて、カルペリチドの循環器学会のガイドライン上についての扱いです。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参考にすると、2つの使用方法が勧められています。
1) 非代償性心不全患者での肺うっ血に対する投与
クラス IIa:見解から有用・有効である可能性が高い
レベル B:単一の無作為介入臨床試験,または大規模な無作為介入でない臨床試験で実証されたもの.
グレード B:科学的根拠があり,行うよう勧められる.
エビデンスレベルII:1つ以上のランダム化比較試験
(この肺うっ血に対する投与では、硝酸薬のほうがエビデンスレベルなどすべての項目で上回っています)
2) 難治性心不全患者での強心薬との併用投与
クラス IIa:見解から有用・有効である可能性が高い
レベル B:単一の無作為介入臨床試験,または大規模な無作為介入でない臨床試験で実証されたもの.
グレード C1:科学的根拠はないが,行うよう勧められる.
エビデンスレベルII:1つ以上のランダム化比較試験
1)は、呼吸困難に対する治療ですので、まぁそうなのかなと思いますが、2)に関しては、以前から正直よくわからないなと思っています。
2006年くらいの前のガイドラインにも掲載されていますので、この先も含めて15年以上の間ガイドラインに載せることに作成員の皆さんの同意があったということだと思いますので、間違いないのだろうと思います。
ただ、私が調べた範囲では、難治性心不全患者への強心薬の併用を推奨するようなレベルB、エビデンスレベルII相当の臨床試験などは見当たりませんでした。
調べた方法は、pubmedで、[carperitide]とだけ入力して、出てきた380のタイトルをみて、人間に投与されている臨床試験のSummaryに目を通しました。この段階で、すくなくともレベルB程度で臨床試験の結論部分に、強心薬と併用するとよさそうだというような結果はありませんでした。
そもそも、何らかの前向き試験・研究で、強心薬とカルペリチドの併用を行おうとしているものはありませんでした。
ただ、一つの症例報告のみありましたので、それだけ参照を示しておきます。
Jpn Heart J. 2000 Jul;41(4):527-33.
Marked and prompt hemodynamic improvement by carperitide in refractory congestive heart failure due to dilated cardiomyopathy.