健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

セミリタイアした医者のブログ。元気に長生きするためにしっておいてほしいこと。平日は毎日更新していこうと思っています。

急性心不全の治療(9):呼吸管理の始め方、CO2は静脈血でもいいと思う

 
 
急性心不全の呼吸管理に関しては、酸素投与は必要なことが多いと思います。
その中でも心不全の呼吸管理では、陽圧管理が必要かどうかということが重要になると思います。
 
非侵襲的な陽圧管理(noninvasive positive airway pressure ventilation, NiPPV)は心不全の非代償状態の患者においては不必要に血圧を低下させたりすることはありませんので、安全に使用できます。
これは、今までのデータでもそうですし、ある程度重症といわれる心不全患者を診てきましたが、非侵襲的な陽圧換気を行うことで血圧が下がって、陽圧換気を中止したり、それに対して治療を行ったことがないという経験に基づきます。(データと経験が一致すると一層安心できます)
特に、急性期の心不全に対するNiPPVは悪いことは何もありませんので、迷ったら行う。行ってみて、不要そうなら早めにやめてみるということでいいと思います。
 
また、後述しますが、慢性期では、重症な閉塞性無呼吸症候群以外にNiPPV(CPAP)は行ってはいけません。臨床試験でもそういう結果が出ていますし、理屈的にもいいはずはありません。やってはいけません。
 
 
呼吸管理をするうえで非常に重要になるのが、血液中の二酸化炭素(CO2)濃度だと思います。CO2の貯留さえなければ、後はSpO2(経皮的に測定できる動脈血酸素飽和度, 皮ではなく爪ですが)と呼吸回数で、呼吸管理は行っていけます。
血液のCO2の測定は、呼気のCO2濃度を測定できるものもあり、気管挿管での人工呼吸管理では使われていると思いますが、非侵襲的な状況では、測定できるものはありますが、(2019年現在)一般的ではないため、現時点では動脈血を採取しているというのが一般的かと思います。ただ、ひとまずのCO2の確認は、静脈血でいいと思います。理屈的に、動脈血のCO2よりも静脈血のCO2のほうが高いはずですので、静脈血で高くなければ、動脈血も高くないはずです。
 
動脈血を採取するタイミングがあったり、それなりに重症で動脈血が必要と判断されればもちろん動脈血を確認することは重要だと思いますが、まぁ、それほどでもないというときには、心不全入院の時には通常の静脈血の血液検査は必ずすると思いますので、静脈血でガス成分の検査を行って、それで、<45torr以下であれば、正常と判断できると思います。(静脈血で<50torrであれば、まぁ大丈夫ですが)
COPDなどが併存していなければ、大抵は心不全による呼吸不全のための過換気でCO2はとんでいて低めのことが多いです。
ただ、もちろん心不全だけでも、末梢気道浮腫(左心不全による細気管支中心の浮腫)により肺胞内の換気が不十分になってCO2が貯留していることもありますので、CO2をチェックしないよりは、静脈血でもチェックしておいたほうがいいと思います。
 
非侵襲的陽圧換気をするかどうかについては、ガイドラインなどにもありますが、3点に絞れるかと思います。
CO2の貯留がない。
呼吸数が少なくとも20回以下で、酸素投与と安静で、10-15回程度で努力性の呼吸ではなくなる。
陽圧換気を行わなくても十分に酸素化ができている。
ということであれば、陽圧換気を使わなくてもいいと思います。(もちろん使ってもいいです)
 
逆に、行ってはいけない状態は、正直あまりないと思います。
不穏や意識障害、アシドーシスの高度な時など、いくつか条件は決められています。確かにこれらの状態では、気管挿管などをして、しっかりと治療を行うことが必要な状態が多いのは確かです。そのために、非侵襲的な陽圧換気を行うとしても、かならず常に気管挿管が必要になるかもしれないという前提で、しっかりと状態を監視できる環境であれば、別に初めは非侵襲的な換気を試みるのでもいいと思います。
このような状態の人では、まず用手的に換気を行っていることが多いと思います。そのような状態で、しっかりと酸素化を確保したうえで、鎮痛や軽い鎮静などを試みながら、呼吸の状態をしっかりと監視しつつ、非侵襲的な呼吸管理を始めてみるというのは、決して悪い選択ではないと思います。繰り返しますが、常に気管挿管ができる準備は必要ですので、酸素化が維持できないとなったらすぐに気管挿管に移ってください。
もちろん、もうショック状態で、代謝性のアシドーシスでということであれば、気管挿管の上、がっちりと呼吸と循環管理をしていくほうがいいと思います。
 
最重症であれば、もう何も考えずにどんどん侵襲的な検査・治療を行っていけるのである意味迷わないのですが、重症の中で、どこまで必要か迷うようなグレーゾーンのようなものは絶対にあります。個人的には、迷ったときには重症度を一段上げて対応するというのが安全だとは思います。
また、常に一度下した判断に固執せず、常にスムーズに違うレベルの治療に移行できるように、デバイス的な面でも、スタッフの意識的な面でも準備しておくことが重要かと思います。
 

急性心不全の治療(8):PICCカテーテル挿入時に簡易的な右心カテーテル検査ができる。

何度かPICCという言葉を説明なく使いました。PICC(peripherally inserted central catheter)というのは、日本語では末梢静脈挿入型中心静脈カテーテルという風になります。
つまり、両腕の末梢静脈から細めのカテーテルを入れて、それを中心静脈かそれに近い鎖骨下静脈あたりまで進めていって留置します。この位置であれば、安定して薬剤や中心静脈栄養といわれる濃度の濃い薬液を投与することができます。
 
今はわかりませんが、1年前は、singleかdoubleといって、カテーテルの内腔に仕切りのないsingleか、しきりがあって、2つに分けれているdoubleかしかありませんでした。ただ、海外ではtripleといって3つに分かれているものも存在はしていましたので、日本でも使えなくはないと思います。また、比較的近位の上腕のあたりから穿刺するなら、少し細めのCV(central vein)カテーテルを代用することはできますので、どうしてもtripleルーメンが必要な時には、考慮してみてください。
 
さて、このPICCの優れているところは、やはり感染が少ないということにつきます。
もちろん、穿刺前に石鹸などできれいにして、十分にマキシマルな清潔操作で挿入することも必要ですし、管理も3方活栓をシュアプラグというものに変更したり、圧ラインを閉鎖式にしたり、さまざまな感染対策を十分にすることは必要です(これらで本当にカテーテル感染は減ったと思います)。
PICCは、腕に留置するため、きっと発汗なども少ないのかもしれませんし、よほど関節に近くない限り動く場所でもないので、安定しています。
留置部管理がしやすいのと、留置部と中心静脈に距離があるので、留置部が少し発赤したり感染が怪しいと思った段階ですぐに入れ替えれば、感染などもほとんどなく経過することが可能です。
非常に優れたカテーテルだと思います。
 
病棟の処置室などで留置されることも多いと思いますが、私はカテーテル室で留置していました。
循環器内科医でしたので、カテーテル室のハードルが低いというのは絶対的にありますが、カテーテル留置の際に、混合静脈血と簡易的な右心カテーテル検査を同時に行っていたからです。
すこしの工夫で、簡単な右心カテができてしまうのです。
 
では、正しいかどうかはわかりませんし、マネをしてくださいとも言いません。
臨床工学士の人と、こっそりと二人でやっていた検査です。
 
こつは、一番長いPICCカテーテルを選びます。また、親水性コートとされていない、曲げようと思えば曲げれるガイドワイヤーのものを選びます。
そして、いったん上大静脈くらいまでカテーテルをもっていって、そこで、いったんワイヤーを抜いて、思いっきりワイヤを曲げます。
くるくるくるとねずみ花火的な先端にします。
それを入れていくと、いい感じでカテーテルの先が上を向くので、そのまま肺動脈まで持っていきます。
そこで、圧ラインをつないぎます。
すると、肺動脈圧が測定できます。この時に、よほど重症の心不全で肺血管まで傷んでしまっているような心不全でなければ、肺動脈の拡張期圧と左室の拡張末期圧はほぼ同じ値になりますので、肺動脈圧ならびに左室拡張末期圧を測定できます。
そのまま、肺動脈で混合静脈血を測定することで、心拍出量も測定することができます(この辺りは、心臓カテーテル検査で述べます)。
さらに、どんどんとカテーテルを引いていくと、右室圧、右房圧を測定することができます。
そして、最後は上大動脈のいいところに先端を確認して、固定して終了します。
 
現在ほとんどのカテーテルは、液体充満型カテーテルといって、カテーテルの先端の液面にかかる圧がカテーテルの中の液体を押し上げる圧を計っています。そのため、直接コンデンサーで測る圧よりも不正確です。カテーテルが、長く細くなればなるほど、この値は不正確になります。特に、時間と圧の関係が不正確になり、時間当たりの圧変化率のデータは評価してはいけないとされています。
ただ、最高圧や最低圧に関しては、ある程度信用できる値になります。
もちろん、PICCはかなり細径のカテーテルですので、正確な値ではありませんが、参考程度にはなります。

急性心不全の治療(7):ドブタミンとミルリノンの具体的な使用方法とにニフェカラントについても少し

ドブタミンとミルリノンの具体的な使用方法をもう少し具体的にみていきます。

①ドブタミン
 使用量:1.5 or 2γ程度から開始し、5γ程度にとどめる ​
 ドブタミン 3γ程度で循環不全の症状が改善がないときは、ミルリノンの併用を早期から考慮する ​
 (感染などによるショックの時は10γまでの使用を考慮する)
②ミルリノン ​
 腎機能正常であれば、0.1γ程度から使用し、0.05か0.1γ程度ずつ増量し、0.3γ程度までにとどめる。 ​
 腎障害があるときには、目安として、投与量(γ)をクレアチニンの値 ​で割った値が大体の目安となる。

と、先日記載しました。
初回の投与方法に関しても、繰り返しになりますが、まずは、末梢静脈ルートから投与します。薬液の濃さに関しては、できるだけ薄めにして、流量を早めに設定することで、静脈炎による点滴ルートの漏れを予防し、また、安定して薬剤を投与します。

本体ルートを用いてもいいですが、 これをすると全体的に点滴の投与量が意外に多くなったりすることがあるので、そこには注意が必要です。特に、循環不全で利尿が不十分な時に、20ml/Hとかで投与すると結構な負荷になります。
私の使用法では、基本的には2γから開始します。30分から1時間程度様子を見て、倦怠感や低酸素を伴わない呼吸困難などの症状が循環不全からくると診断できていれば、そのあたりの症状(大阪弁で言う、なんか知らんけどしんどい、息すんのもしんどいという症状)を指標にして、症状が改善すれば投与量を固定します。
症状の改善がない時には、他の所見や尿量もみますが、心室性の不整脈が増えていなければ、2.5 or 3γに増量して、再度状態を0.5-1時間程度みます。
​それでも、症状や循環不全の所見に改善がみられないときには、ミルリノンを併用します。
併用時には、基本的に同じ末梢ルートから投与します。いわゆる共流し状態です。(ただし、安定すればすぐにPICCカテーテルに変更しましょう)

ミルリノンは、0.1γ程度から開始します。腎機能が悪い時には、クレアチニンで割ったγ数にします。
例えば、Cr 2であれば0.05γ、Cr 4であれば0.025γです。ミルリノンは腎代謝ですが、腎障害性があるわけではありませんので、心室性の不整脈の出現に注意しつつ、気持ち少なめから開始します。
これも、症状をみながら、0.5-1時間程度の期間でみていきます。
この段階で、ドブタミン3γ、ミルリノン 0.1γですので、これで改善されない低潅流からくる循環不全はかなり重篤です。


一応、ミルリノンを0.05γか0.1γずつ増量して、0.3γまでは増量します。
この段階で、ドブタミン3γ、ミルリノン0.3γです。これで改善されない循環不全は、薬剤投与のみでは無理だと思います。社会的な状況によりますが、心移植を念頭に置きましょう。特に、この段階で心不全が悪くなっている明確な因子があって、それが改善させることができるものがある状態であればいいのですが、これがないときには、本当に心不全を安定化させることは困難と考えてもいいです。また、改善できても、一過性に強心薬を中止することができたとしても、また繰り返します、しかも、短時間で。基本的に繰り返したときの心不全のほうが、重症のことがあり、治療がさらに困難になることは多々あります。(特に基礎となる心疾患の進行が速い場合には要注意)

さて、年齢などの問題で、強心薬でいくしかないときには、ミルリノンは0.3γ程度以上にはあげずに、ドブタミンを5γ程度まで上げていきましょう。
感染などの増悪因子がない時の心不全への強心薬投与としては、これが最大用量だと思っていただいていいと思います。
これ以上上げても、意味がなくはないのですが、頻脈や中期的な治療ではかなり困難になります。
もちろん、感染やなんらかの一時的な増悪因子があって、それを改善させる間だけの一時的な投与であれば、ドブタミンはもっと増やしてもいいと思います。その間に、感染などをコントロールできれば、そのあとに強心薬を減量できる可能性は大いにあります。


強心薬投与で心室性不整脈が増えているときには、どうするかですが、心室性期外収縮は健常者であれば無視してもいいくらいの数(10-20%とか)でも、心不全の急性増悪の時には、それでも不安定化することがあったり、特に短い心室頻拍や持続せず短いながらも心室粗動が出ているときには、一気に急変の可能性もあります。

このような不整脈がある時でも、強心薬の維持や増量が必要な時には抗不整脈薬を併用します。(強心薬を増やして状態を安定させれたらと不整脈が減ることもあります)
お勧めは、ニフェカラントです。これは、Kチャンネル選択的に阻害するため、心機能にほとんど影響を与えません。
特に重症な心不全患者では、一般的なアミオダロンのローディングなどすると一気にショック状態になることが多々ありますが、ニフェカラントであれば、静注してから維持用量持続注射しても、血圧は基本的に下がりませんし、心不全の管理自体には特に影響は与えません。
もちろん、投与中に心電図でQT間隔を確認しながら、用量調整が必要ですが、非常に有効だと思います。
繰り返しますが、アンカロンのローディングは危険ですので、循環不全をきたしているような心不全ではしないことをお勧めします。

また、ここまでしないといけない心不全は集中治療室に準じる場所で治療をしていることと思いますので、こまめにカリウムの値の補正も行います。基本的には、4.8-5.5mEq/Lのレンジを目標に、基本的には5は切らないというような感じでいきます。また、マグネシウムも時には必要ですので。

急性心不全の治療(6):強心薬の具体的な使用

強心薬の具体的な使用の仕方をお話ししていきたいと思います。
 
強心薬として使われているのは、ドブタミン、ミルリノン、オルプリノンドーパミンになるかと思います。
また、強心薬と似て、非なるものが昇圧薬です。これには、ノルアドレナリン、バソプレシン、ドーパミン、アドレナリンがあります。
 
まずは、強心薬と昇圧薬は違うということを認識していただければと思います。
昇圧薬は、末梢血管抵抗を上げることで血圧を維持します。つまり、心臓にとっては後負荷の増加ですので、基本的にはうれしくないことです。しかし、最低限の血圧を保つというのは、腎臓には必要なことですので、血圧が低い時には、昇圧薬が必要になります。
(糸球体のろ過圧は、平均動脈圧と中心静脈圧の差以上にはなりません)
ただし、重症心不全の方では、収縮期血圧70ちょっとでも、尿量が確保されていて、日常生活を送れるような人もいますので、あくまで、昇圧薬を使用するのは、血圧が低くて、それによる何らかの不都合や障害(主に腎臓)があるときということになります。
 
さて、強心薬の使用の順番というのはないのですが、使いやすさでいくと、ドブタミン、ミルリノンの2つだと思います。
オルプリノンは、ミルリノンに準じて使用していただければいいですし、ドーパミンは、昇圧作用がありますので、昇圧させたい時以外の心不全の使用には適しません。特に利尿がコントロールできていない状態(=利尿薬投与で利尿が確保できていない状態)では、左室拡張末期圧があがり、呼吸状態が不安定化することがあります。
 
全体的な注意事項としては、脈が速くなるだけでなく、心室性の不整脈が不安定化することがあるのと、解除されていない(虚血による症状があったり、心電図で虚血性変化が顕在化している)重症な虚血によって心機能が低下しているときに、ドブタミンやドーパミンを投与すると心筋の酸素需要が増大するために虚血が一層不安定化することがあり、虚血症状が悪化し、さらに、全身状態が不安定化することがあります。
虚血で心機能低下があり、PCIやバイパスされていて、主要な血管による虚血の所見がない時には、強心薬の使用は全く問題ありませんが、心電図の変化や虚血による症状があり、虚血が顕在化しながらしているときには、IABPが有効ですので、IABPを導入したうえで、血行再建を行いましょう。
 
 
まず、各薬剤の使用を簡単にみていきます。
(投与量はγという単位になります。γ=μg/kg/min)
 
①ドブタミン
 使用量:1.5 or 2γ程度から開始し、4-5γ程度にとどめる ​
 ドブタミン 3γ程度でLOSの症状が改善がないときは、ミルリノンの併用を早期から考慮する
 (単剤増量よりも併用のほうが有効なことが多い)​
 また、感染などによるショックの時は10γまでの使用を考慮します。 ​
 ​
②ミルリノン ​
 腎機能正常であれば、0.1γ程度から使用し、0.05か0.1γ程度ずつ増量し、0.3γ程度までにとどめる。 ​
 腎障害があるときには、目安として、投与量(γ)をクレアチニンの値で割った値が大体の目安となる。
 
③オルプリノン 
 ミルリノンよりも血管拡張作用が強いとされる。​
 使用はミルリノンと同じで、ミルリノンと同量であれば、2倍の効果あるため、半量を目安にする。 ​
 
④ドーパミン ​
  強心薬としては、ドブタミンに対するアレルギーなどの際に使用する。
急性期に使用するときは、可能な限り血管拡張作用のあるPDEIII阻害薬と併用する。
ショックを伴う心不全の急性期の昇圧目的に使用する際には、かならず十分な量のドブタミンを使用したうえで、最小限を使用する。 ​
 使用量:1.5 or 2γ程度から開始し、4γ程度にとどめる。4γ以上必要な時は、NADを使用する。
 
 基本的に、昇圧するときには、ドーパミンを投与するよりも、ドブタミンとノルアドレナリンを併用し、ドブタミンは循環不全の所見がなくなるような用量に調整し、血圧自体はノルアドレナリンで調整するのがいいとおもいます。
 
 また、投与経路ですが、まずは、薬剤は薄め溶いて末梢のルートから投与し、落ち着いてきたら、できれば、その日のうちに、遅くとも翌日にはPICCカテーテルからの投与を強く推奨します。
 強心薬を投与しても落ち着かなかったら、もっといろいろとしないといけないので、まず、これで落ち着いたとして話を進めたいと思います。
 投与に関してですが、具体的には、速やかに循環不全を改善させるのが優先ですので、末梢静脈から専用のルートをとって、投与を開始します。できれば、薬液は薄めにしてください。薄めて、投与スピードを速くするほうが投与自体は安定させれます。速やかに投与することを優先しつつも、末梢静脈からの投与は、漏れてしまうことがありますので、これをもっとも注意して投与をします。
 一定期間で入れ替えても、やはり、末梢ルートでは漏れてしまう危険があります。漏れてしまうと、入れ替えの間に薬剤の投与が切れてしまいます。これをもっとも避けたいので、できるだけ、速やかにPICCか、CVカテーテルによる安定した投与を行いたいところです。CVカテーテルでは、感染の問題が出てきますので、できればPICCを選択したいところです。

急性心不全の治療(5):低潅流による循環不全に強心薬の投与をためらってはいけない

循環不全と診断したら、強心薬を使用する必要があります。
 
一部の観察研究などのデータで、心不全の治療に強心薬を使うと、多変量解析でほかの因子を補正しても、予後が悪いので、できるだけ使用しないほうがいいという意見があります。
このような意見は基本的に無視でいいと思います。
 
まず、多変量解析で他の因子を補正できません。
急性心不全で、循環不全になっているようなときには、循環不全という因子が大きすぎて、他と強い相関関係をもちます。当たり前です。
循環不全になるだけで、肝障害もでますし、腎機能障害もでますし、尿量も減れば、食事の摂取量も格段に落ちます。このような状況で、統計ソフトをたたいて、補正したといっても、できているわけがないというのが現実です。
循環不全になれば、強心薬を使う。強心薬を使うと臨床医が判断するような循環不全の状態の各因子から、強心薬を使うということだけを独立させて評価することなど統計ソフトは想定していません。それぞれの相関が高すぎます。
 
また、前向きの臨床研究も循環不全に対する強心薬の是非を問うてはいません。
ミルリノンなどで臨床試験はありますが、基本的に強心薬を投与してもしなくても、どちらでもいい人というのが試験の前提になっています。
これは、心不全に対する薬の有効性の評価であって、強心薬の是非を問うているわけではありません。
つまり、どんな心不全の人でもこの薬を使うと心不全が早くよくなるよとか、急性期にこの薬を使うとある一定の心不全の人なら慢性期にいい影響が出るよということを証明するための評価試験であって、本当に強心薬が必要な循環不全の人に、強心薬を投与するかどうかを評価するための臨床試験はないですし、また、今後もおそらく倫理的な問題で実施できないと思います。
 
もちろん、強心薬に限らず体にいい薬なんてものはありません。薬なんてものは使わなくていいならそれに越したことはありません。
ある病気や病態があって、それに対して、治療しない場合どうなるか、治療をするなら、薬を飲んでおこる作用、副作用はどうなのか、それらすべてを考慮して、どうするかという判断と実行が治療です。
 
つまり、循環不全があるかどうかをしっかり評価できること。
これが重要で、その次に、診断できた循環不全に対して、強心薬の作用と副作用とを考慮して、投与するかどうかの判断をすることが、心不全の一番重要な治療判断になります。
 
もちろん、心臓の状態、全身状態、社会的背景などから、強心薬よりももっと強力な循環不全に対する治療を行う必要があるときも多々あります。
IABPやImpella、PCPSなどの通常の病院でもできる治療(impellaはいずれできると思います。値段との相談は必要ですが)と、VADなどの心臓外科や特殊な循環器内科医がないとできない治療、または、緊急心移植なども考慮しないといけません。
(注:緊急心移植という言葉はありません。しかし、マージナルドナーからの心移植といって、何らかの理由で多少移植される心臓が不適切でも心移植にふみきらないといけない状態の患者さんに対しては、通常よりも早いタイミングで心移植が行われる時もあります)
 
これらの基本となる判断は、すべての心不全を診療する人に判断することが求められます。
もちろん移植だ、補助循環かという各論ではなく、強心薬をいくかどうか、そして、強心薬だけでいけるかどうかということです。
より高次の医療機関に送るかどうかも常に考えておかねばなりません。
 
 
また、話は変わりますが、緩和医療における強心薬も重要です。緩和だから強心薬なんてという人がいますが、違います。低灌流による倦怠感には強心薬を使用します。もちろん、フェンタニルや、必要に応じてプレセデックスなども使用します。
緩和ステージの人で、強心薬を使ったからといって、残念ながらそれほど寿命は変わりません。時として、催不整脈性から予後を短くすることもあります。
その治療が寿命を短くしたとしても長くしたとしても、今ある症状を最大限緩和するのが緩和医療です。
循環不全のある終末期心不全の患者さんに対しては強心薬も緩和医療の一つの選択肢であることは、忘れてはいけません。
緩和ステージでしてはいかない治療というは、患者さんの苦痛をしいてまで治療を行ってはならないということです。ラーメンを食べたいなら食べてもらえばいいですし、不整脈がでまくっていても、モニターの届かない庭で桜をみたければ、みてもらえばいいのです。強心薬で楽になるならすればいい、鎮静・人工呼吸管理(非侵襲的なもの)で楽になるならそうすればいいのです。
緩和の心不全は、ある意味これらをしたからといって、それほど延命できません。
 
すこし、話がそれましたが、次回具体的な強心薬の使用方法について述べていきます。
 

急性心不全の治療(4):心不全治療における尿中生化学の解釈 (クレアチニン、尿素窒素、尿酸)について

心不全の時に尿化学検査をどのように評価をするかですが、個人的にはいろいろと模索した結果、電解質だけをみればいいのではないかと思うようになりました。
 
ただ、尿中のクレアチニン(urinary Cr, uCr)や尿素窒素(urinary UN, uUN)、尿酸(urinary UA, uUA)に意味がないわけではありません。
 
1日の尿中のクレアチニン排泄量は、個人によって違います。ただし、入院中のような2週間程度で、ほぼ同じ生活強度であれば、1日の尿中のクレアチニン排泄量は、同一の個人で同じです。
さらに、時間当たりの尿中のクレアチニン排泄量もほぼ一定です。
つまり、1日に1g、1000mgのクレアチニンを排泄する人であれば、1時間あたりは、ほぼ40mgと一定なのです。
これは、尿量の推移に使えます。
朝一番の尿中のクレアチニン量を比較すると、ある日の尿中クレアチニンの濃度が80で、翌日が40であれば、純粋に2日目のその時の時間当たりの尿量は、1日目と比べて2倍になっています。
尿道バルーンなどを入れていれば、時間当たりの尿量を調べることができますが、ラシックスなどの利尿薬の投与前と、投与して1-2時間くらいの尿中のクレアチニン濃度を測定して、その比を見ることで、ラシックスの効き具合が尿量という時間当たりの結果よりも早く知ることができます。
ただ、少し待ったら尿量がわかるので、これだけのために、尿生化を見る必要はないと思います。
 
大事なのは、uUNやuUAもuCrと同じように濃度が変化するということです。
これを利用すると、尿量が減った時に、ただの利尿薬不足か、循環不全の悪化なのかの情報の一つとすることができます。
 
循環がよくなろうがわるくなろうが、Crは多少尿細管から分泌されるとはいえ、ほぼその排出量は、1日で決まっています。循環、特に腎循環には影響を受けません。
しかし、uUNや特にuUAは腎循環によって大きな影響を受けます。循環不全になると再吸収が亢進するため、尿中の排泄量が低下します。
 
つまり、前日と比べて尿量が低下した時であったとしても、尿中のクレアチニンと尿素窒素の比、または尿中クレアチニンと尿中尿酸の比が一定であれば、腎循環の悪化はなく、ただの利尿薬不足の可能性があるため、利尿薬を投与を続ければ、利尿は得られます。
しかし、この比が変化、つまり、尿中クレアチニンあたりの尿中の尿素窒素や尿中尿酸の濃度が低下するときには、循環不全を起こしている可能性があります。
 
この時には、2つの可能性があります。すでに引ける水がなくなっているときには、うっ血の治療は終了です。利尿薬を維持容量に減量します。
もう一つは、引けそうな水があるのに、この尿生化学検査で循環不全のサインが出ているときには、強心薬の投与や、利尿の速度を落としてあげる必要があります。
このように治療のマーカーの一つとして利用することができます。
 
それでは、尿中尿素窒素と尿酸のどちらがいいかというと、尿酸です。
両方とも、それぞれにちがう理由で再吸収が亢進しますが、尿酸は近位尿細管で乳酸と交換で再吸収されます。
とまり、腎臓での組織内での乳酸の濃度が上昇している可能性が示唆されるためです。
これは、臨床の私のデータでも、尿酸のほうが少し、さまざまな悪化を予見できる可能性が高いという結果を説明する要素だと考えています。
 
さらに、どの変化すれば優位ととるのかというと、20%を超える変化は優位だと思います。10%以下は、特に何も変化なくても変わりうる値だと思いますし、10-20%はグレイゾーンです。
また、尿検査の異常の後には、血液検査の異常が出てきます。つまり、尿中の排泄量が減った尿素窒素や尿酸が血液検査として変化したときには、尿中の変化はいったんリセットする必要がありますので、血液検査との兼ね合いも重要です。
あくまで、血液検査が変わる前に、尿検査のほうが早く変化するので、この変化をとらえに行っていると思ってください。

急性心不全の治療(3):尿中クロール濃度は循環不全のマーカーである

低潅流による循環不全のゴールドスタンダードはなんでしょうか。
私の答えは、尿中クロールです。
10割本気です。
 
一時期、心筋マニア、心不全オタク、ただの通りすがりの心不全屋などなど、いろいろといわれながら、たどり着いたラフテル、それが心不全の循環不全を評価するスタンダードは尿中クロールだということでした。
 
以前にも少し述べていますが、心不全の時にどのように尿中生化学をみていけばいいかをお話ししたいと思います。
 
まず、尿生化学検査は、蓄尿してはいけません。かならず、スポット尿といって、1回分の尿で検査するか、バルーンで尿を管理しているときには、10ml程度を検査用にとってそれを検査に出します。
検査をするタイミングとしては、入院時と入院2日目の朝です。
入院時の測定は、入院後に初めての尿か、バルーンを入れた場合には、バルーンに流れてきた初めの10mlを検査に出して測定します。
次に、入院翌朝食事前、内服前の排尿時のものがいいのですが、それが困難であれば、起床後の一番初めのものを検査に出します。バルーンの場合には、大腿私は、6時に0-6時までの尿量を測定してもらって、その尿は廃棄して、6時から30分くらいでた待った尿を検査に出してもらっていました。
初めは、なかなか理解してもらえませんが、何回もお願いすると、看護師さんからはおしっこの先生といわれながらも、協力してくれるようになります。
(その後、大学の院生の研究の関係で、循環器疾患と便の細菌の関係を調べる病棟側の担当をすることになり、とうとう便にまで手を出したのかと、看護師さんにいじられたのも思い出です)
 
さて、測定する項目は、最低限は、尿中クロール、カリウムで、通常はナトリウムも加えた3項目です。可能なら、クレアチニン、尿素窒素。さらに、可能なら尿酸の合計6項目を測定します。
入院2日目以降は、同じように尿中クロールと、カリウムに、ナトリウムの3項目は測定したいところですが、さまざまなしがらみの中で決めていただければよいかと思います。
 
さて、解釈ですが、尿中クロール濃度をまずみます。
30mEq/L以下だとほぼ循環不全確定です。
 (以前、入院2日目の尿で尿中クロール35mEq/L以下は、ほぼ強心薬かそれに準ずる機械をつけているという臨床報告をしましたが、なかなか受け入れてもらえず、挫折した過去があります)
30-40mEq/Lなら、循環不全の可能性が結構あります。
40-60mEq/Lなら、おそらく循環不全はありません、たぶん大丈夫です。
そして、60mEq/L以上であれば、循環不全ではありません。大丈夫です。
 
これだけみるのでも大丈夫ですが、さらにカリウム濃度を合わせてみると、ざっくりいうとクロール濃度よりも高ければ循環不全です。
 
また、ナトリウム濃度は、だいたいクロール濃度と相関して動きますので、クロールと同じように考えていただければ結構です。
 
まずこれだけを把握していただければ十分ですが、次回、時間経過でどう見るかをお話しします。
 
ちなみにどうしてこのような変化となるかについては、ちょうど100日前に記載しています。