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LVAD植え込み後の循環不全の原因と対策

植え込み型左室補助循環装置(implantable left ventricular assist device, iLVAD, 植え込みVAD)の手術をすれば、かならず循環不全が改善し、心不全にはならないというわけではありません。少数ではありますが、LVAD植え込みでも心不全の治療を行う必要のある方がいます。
 
 
LVAD植え込み状態でで循環不全になる原因は、右心機能と左室の拡張性と心膜です。残存左心の収縮機能なども関係なくはないですが、寄与率としては、もともと収縮性が高度に障害されている人がほとんどですので、低いと思います。
 
LVAD植え込み状態でも、左室の内圧と容積が、関数の関係になっていることには変わりはありません。ごく簡単に傾きが正の1次関数だと思っていいと思います。容積が増えれば圧が上がるということです。ただ、ずっと同じ傾きの曲惨状にあるわけではなく、容積が増えれば、徐々に傾きも大きくなっていく、つまり、どんどんと違う急勾配な曲線に乗り移っていきます。その点をプロットしていくと指数関数になります。その前の1次関数はその関数の接線になるというわけです。
 
LVADをいれると左室の容積は激減しますので、左室圧も低下します。すると、右室にとって左室圧は後負荷ですので、後負荷が激減することになります。
柔らかい左室の心筋症の場合には、左室が大きくなっても圧の上昇はそれほどでもないため、右室にとっての負荷は増大せず、右室から左室へと血液を送ることができます。 
しかし、拘束性心筋症のように拡張性が非常に低い、容積の増大によってすぐに圧が上がってしまうような左室であった時には、逆に容積の変化あたりの圧の変動が大きいとも言えます。
 
LVADの循環は、LVADで回転数を欲しい流量になるように設定して、その血流量を維持します。もちろん、同じ設定でも前負荷や後負荷によって変化しますが、ひとまず負荷は一定と考えます。
血流量が、例えば4L/minと決まれば、その流量分だけ左室から一定のリズムで血液が脱血されていきます。その血液は循環しますので、定常状態になれば、心臓へ1分間に4Lの血液が心臓に戻ってくることになります。右室はこの4Lの血液を1分間にさばいて左室へどんどんと送る必要があります。
残存右室機能とは、このLVADでつくられた一定量の循環血流量をさばいて左室へ送る能力が十分にあるかどうかということになります。4L/分以上にさばける能力が荒れば、循環不全にはなりません。しかし、これを満たすことができない右室であれば、循環不全が生じます。
循環不全を防ぐために十分な前負荷を与えるとします。右室の前負荷を与えるということは、右室の容積を増やすということです。右室も容積が増えれば圧が上がります。容積が増えて、心膜が硬いと心膜が伸びずに、そのまま左室を圧排します。
また、左室圧は右室にとって後負荷となりますが、拡張性の悪い心筋であれば、左室の容積によって圧が大きく変化し、それが直接的に右室への負荷となるため、右室のパフォーマンスに直接影響します。
 
特に、LVAD留置後は、左室の圧が低く、かつ、当たり前ですが心臓術後ですので、程度の差はあれ、収縮性心外膜炎になっています。
つま。り、通常の状態よりも、右室の容積増加によって左室を圧迫しやすくし、さらに心膜が硬いため、左室の容積をさらに減らす方向へと進んでしまいます。要は、収縮性心膜炎の血行動態となります。
右室が左室を圧排すると、両心室の圧と容積の関係が、両室が干渉し始めた時点から、高度に急峻な直線(ほぼ垂直)になりますので、より右室にとっての後負荷が激増し、一気に血行動態的な破綻となり、循環不全になります。
これが、LVAD植え込み状態における循環不全の原因です。
 
これを防ぐためにできることを考えていきます。
手術時に、できるだけ右室周囲だけでも心膜を剥いでもらいます。心膜の影響がなければ、心外膜炎の血行動態にはなりません。心外膜はなくても、それほど問題にはなりません(心外膜の欠損は、ほとんど無症状でみつかり、ヘルニアによる突然死以外は、予後に影響しないのではと考えられています)
ただ、心外膜といっても、日本語では、心外膜と内側と外側の両方をまとめていっていますが、心外膜にはepiとperiといって、periはとれますが、epiをとることはできず、多少は心外膜炎の状態になるのは仕方ないのかもしれません。
また、術後にコルヒチンやNASIDSなどの抗炎症薬を投与して、心外膜の炎症を抑えるのも有効かもしれません。
 
 
術後の安定期には、血行動態的な治療としては、やはり右心と血管抵抗の2点が治療の対象になります。
前負荷は、輸液や飲水などで調整しますが、あまり増やしすぎると心膜が収縮性外膜炎状態になっていると逆に血行動態は悪化しますので、注意が必要です。
右心に対しては、強心薬の治療になります。もちろん、最終的には内服での治療を目指すことになりますので、少しでも強心作用のある薬を投与していきます。
順番としては、ピモベンダン 5mg。次に、ジゴキシンを中毒症状と心拍数をみながら投与します。最後は、タナドーパでしょうか。
心拍数に関しては、ある程度早いほうが、心筋のパフォーマンスは上がります。ペースメーカ(ICDやCRT)が入っていることが多いと思いますので、80-100bpmあたりでコントロールしてみるのが有効かもしれません。
心拍数に関しては、急性効果としてみれるとおもうので、右心カテーテル検査をしながら心拍数を調整する必要があるかと思います。
ただ、タナドーパや心拍数の調整は、ある程度の時間が経過すると心機能を低下させる可能性がありますので、短期的な効果をどうしても求めなければならないときに限定されるかと思います。
おそらく、ピモベンダンやジゴキシンは不整脈が起こるかもしれませんが、移植待機期間である4-6年程度では心機能を低下させることはないかと思います。
 
後、もっとも有効なのは、肺血管抵抗(PVR)を極限まで下げることです。
これも、NOの吸収をすれば急性効果をみることができます。
普通の左心不全では、NOの吸収をすると、一気に左室拡張末期圧が上昇して、肺水腫を医原性に起こす可能性がある(実際に起こったことがある)ので、基本的にはできませんが、LVADをつけていれば、収縮性心外膜炎の血行動態にならない限り、左室圧は上昇しませんので、気にせずに、肺血管抵抗を下げましょう。
有効であれば保険適応という大きな壁はありますが、それをどうするか、どうできるか次第にはなりますが、肺高血圧の治療薬を投与するのも有効ですし、肺高血圧に効くときには効くカルシムチャンネルブロッカーは、体血管抵抗も下げるので試す価値はあるかと思います。
 
PVRはどの程度で高いと感じるかというと、1.5以上は低くないと思います。通常の心不全ではないので、PVRは2以下にならないとおかしいです。
PVR 2-3は高いですが、困っていなければ治療する必要はもちろんありません。しかし、LVADの右心機能不全のための低循環という限られた状況であれば、積極的な治療の対象になりうると思います。
 

植え込み型左室補助循環について

植え込み型左室補助循環装置(implantable left ventricular assist device, 植え込みVAD)について少しお話ししたいと思います。
 
植え込みLVADの適応は、保険診療上は心臓移植が前提になります。では、心臓移植の登録のどの段階で可能かというと、移植施設内で行われる適応判定委員会での決定の段階で、保険診療での植え込みが可能となります(2018年の段階)。移植申請自体は、中央の移植に関する適応判定のための委員会によって決定された後に、移植登録料を支払って、移植リストに登録することによって心臓移植待機患者となりますが、植え込みVAD自体はその最終決定の前に行うことができます。そのため、移植申請が中央の判定で不適応とされる可能性もなくはないので、心臓移植自体はできないが、保険診療で植え込み型LVADをつけている患者が存在することになります。
 
なお、十分な数の心臓移植を実施している施設は、自施設内における移植判定委員会の決定をもって、最終の判断としていいとされていますので、国循や阪大、東大などは自施設内ですべての決定をすることが可能です。
 
 
さて、植え込みVADはいくつかの製品がありますが、VADとしての共通点は、左室の心尖部から脱血管をいれて、左室から脱血し、異常がなければ上行大動脈に送血管をつけて、送血します。大動脈弁を介さない血行動態になります。
他には、抗凝固療法が必要だったり、前負荷や後負荷の影響を強く受けること、右心機能や左心の残存心機能があるほど機械の合併症が起きにくいなどは共通しています。また、定常流ですので、大動脈に脈圧は生じないことが多いですが、残存心機能によっては橈骨動脈を触れてわかるくらいに脈圧が出る人もいます。これは、前負荷と残存の左心機能によります。
 
 
今使われている植え込みVADは、ポンプの違いで遠心ポンプと軸流ポンプの2つに分けられます。遠心ポンプには、ポンプの回転する部分が磁気で浮上するか、どこかで固定されているかによっても分けられます。
ざっくりと分けると、軸流は得られる流量が少ないが機械がかなり小さく、遠心ポンプは得られる流量は多いが、ポンプ自体が大きくなるという特徴はあります。そのため、右心機能などの残存心機能や体格などを考慮して、基本的には遠心ポンプのほうが汎用性は高くなりますが、どうしても小さい方に関しては軸流ポンプということになります。
ただ、徐々に技術の進歩で、遠心ポンプも小さくなり、軸流ポンプでも流量は増えてきているようです。
 
植え込みLVADの管理で問題となるのは、感染、血栓、出血、ポンプ不全、循環不全です。
感染と血栓と出血は、多かれ少なかれほとんどの人が経験します。どれも経験せずに心臓移植まで到達する人はほとんどいないと思います。
 
ポンプ不全に関しては、起きない人は起きませんし、多くの人は起きません。しかし、起きると厄介です。血栓などの影響でポンプ自体に異常が起こりますので、すぐにポンプの交換が必要です。
 
LVADでなぜ循環不全が起こるのかを次でお話ししたいと思います。

日本では使えない、Tandem HeartというpVAD

LVAD(left ventricular assist device)は、ニプロ式LVADの仲間とそれ以外にわけられます。体外かどうかということもありますが、血行動態的には、拍動か、連続流かどうかという点が違います。


ニプロ式の仲間は、東大型、ABS、ベルリンハート(Excor)などの心臓の動きを模した動きで拍動流となりますが、駆動させるために駆動装置が必要であったり、ポンプそのものが大きくなり、体外とせざるを得ないなどの欠点もあります。

他のポンプは、一定のリズムでずっと機械が動いている連続流になります。


血行動態的には、拍動流か連続流かが重要で、患者さんのQOL的には、体外式か、植え込み型かが重要で、抗凝固などの血栓や心拍出量の最大値という面では、軸流か遠心ポンプかということが重要になります。

 

ニプロの仲間と違って、連続流では、一定の速度でポンプを作動させて、一定の速度で血管内に定常の血液を流すということになります。連続流になるには、左室の収縮がほぼなく、負荷が一定であるということが必要になります。左室の収縮が残っていると連続流を修飾して拍動流にすることができます。

 


少し特殊なものに、Tandem HeartというVADがあります。鼠径部の大腿動静脈からの留置が可能なため、percutanous VAD(pVAD)ともいわれます。(Impellaも、pVADの仲間です)
Tandem Heartは、どちらかというとVA-ECMOから人工肺をなくすことで、機器の管理をしやすくし、中期的な管理を可能にしてた機械といえます。
連続の定常流をつくる遠心ポンプを体外に設置し、左房脱血、総腸骨動脈送血になります。脱血管を静脈(大腿静脈)を通して、右房へ、さらに右房から左房へとブロッケンブロー法により到達させ、左房内に脱血管の先端を留置させます。また、送血管の先端は大腿動脈をへて、総腸骨動脈あたりに先端が位置するような形になります。

前負荷や後負荷が最適化されていれば、最大5Lの心拍出量が見込めます。

Right Heart VAD(RVAD)用のTandem Heartも、存在はしています。CHDFで使うカテーテルのように、2本のカテーテルが一本にまとめられているような感じになっていて、先端と途中の2つの孔から開口しています。実際的にもCHDFカテーテルのように、途中の孔から脱血して、先端の孔から送血します。
穿刺部位は、右の鎖骨下静脈か、大腿静脈から留置することが可能で、脱血の孔が右房に、先端が肺動脈になるように留置します。前負荷と後負荷の条件次第ではありますが、最大4L程度の心拍出量を確保できるとのことです。

右心に関しては、右室梗塞などを含めて、一時的なサポートが必要となることがありますので、Impellaでも右心用がありますが、どちらでもいいので、このような比較的簡易に留置し、管理できる右心用のVADが日本でも使えるようになればいいのにと思います。

ニプロ式LVADとすこしだけ心臓移植登録について

体外式左心室補助循環(体外LVAD)で、特に昔はトーヨーボー、今はニプロといわれる単回使用体外設置式補助人工心臓ポンプについてお話ししたいと思います。

 

体外式左心室補助循環は、保険診療上特殊な制約(心臓移植登録済みなど)はありません。
臨床的に必要と判断され、循環器内科および心臓血管外科の体制が整っていれば導入することが可能です。

植え込み型も同じですが、体外LVADは、左心系から血液を脱血して、それを大動脈に返血するシステムとなっています。

VA-ECMOとの大きな違いは、右心系および肺循環に関与しないということになります。そのため、体外LVADでは、右心機能障害や肺の酸素化障害がある場合には、体外LVADだけでは循環・酸素化ができないため、何らかの酸素療法や、右室機能不全に対しての体外式の右室補助循環を使用する必要があります。

 

どのような患者さんに導入するかというと、現在では植え込み型VADが心臓移植登録患者さんに対して保険適応とされているため限定的です。


例えば、移植登録は少なくとも今はできないが、VA-ECMOで安定していて、呼吸機能や右心機能に特別のサポートは必要がないという状況になると思います。
具体亭には、好酸球や巨細胞などの劇症型心筋炎で、心筋炎自体の炎症は免疫抑制療法でコントロールでき、また、血行動態もVA-ECMOが導入されている状況で、安定しているが、左室の機能は依然と悪い、ただ、左室の補助循環を使用し、しばらくすればVADからの離脱が可能と考えられるような状態(bridge to recovery, BTR。植え込み型VAD限定の単語かもしれませんが、イメージは同じです)。
または、何らかの機械的な治療が必要なほど重症の慢性的な心不全が緩徐ながら確実に増悪傾向にある状態で、何らかの理由で心臓移植登録ができないが、その理由は近い将来に解除される公算がほぼ確定的(例えば、後1年で癌完治後5年になるとか)であり、肺に問題なく酸素化は行え、右心機能もさほど問題がなく、1年体外式VADで経過すれば、心臓移植登録がほぼ確実に申請できる状態(brighe to candidate, BTC)。
などかと思います。

 

以前は、VA-ECMOが入っていれば、それだけで心臓の移植登録ができないなどがあり、ECMO離脱するか、一時的に体外式にする必要がありました。しかし、現在は、慢性的な心不全が徐々に悪化する状態にあり、VA-ECMOが入っていても、その状態で安定していて、肺の酸素化に問題なく、肺血管抵抗なども一時的にVA-ECMOサポートを落としても、肺血管抵抗の上昇度合いから想定される値が登録範囲内の数値(6woods units)であれば、心臓移植登録は可能になってきましたので、わざわざリスクを冒して離脱してから登録するという必要はなくなりました。


もちろん、急性の疾患では、ある程度心機能が改善することも多く、VA-ECMO導入中に心機能が改善する可能性があり、ある程度の期間の心機能の改善がないことを証明しなければなりません。


時代はどんどん変わります。肝炎だって、完全に治癒する疾患になりました。
心臓移植の登録の条件や禁忌は、意外に抽象的な表現になっていますので、その時代の医療状況に合わせ、心臓移植の登録もいい意味で変化しています。

 

 

少し話がそれましたが、体外型VADについてです。
ニプロ式VADは、左室の心尖部付近に脱血管をいれて、上行大動脈に送血管をつなぎます。
酸素化自体は自分の肺で行ってもらうので、VA-ECMOと違って、人工肺がなく、その分管理がしやすくなり、機械的にも長持ちします。
左室は、基本的にはただの袋状態になりますが、左心機能がある程度残存していたり、回復してきたりすると、大動脈弁が開きます。
また、連続流ではないので、普段は大動脈弁が開いていくても、左室の脱血のタイミングと心臓の拡張期のタイミングが合って、前負荷が最大になると、大動脈弁がやや不規則ながら数拍に一度程度開放します。大動脈弁の開放は、長期管理の中で大動脈弁自体の変性などに関連するため、意外に重要です。

 

ニプロ式体外式VADには、いくつかの設定がありますが、私もそれほど詳しくはありません、すいません。
ニプロ式は、脱血した血液を一旦体外にある心臓を模したポンプのような袋の中に血液を脱血します。一方弁で一方向にしか流れないようになっています。プラスチックの箱の中にポンプとなる袋が入っている感じになっていて、箱の内側を陰圧にすることで血液を袋の中に引き込んで満たして、次いで陽圧をかけて、袋を絞ることで血液を駆出します。その血液は送血管を通って上行大動脈から全身に流れていきます。


設定としては、この袋にどれだけ血液を満たすかと、心拍数のように袋をどれだけの回数でポンプさせるかの回数を設定します。
それによって、1回心拍出量と心拍数と同じ感覚で、心拍出量を決めていきます。

この時に、設定を一定にしても、本当の心臓と同じで、前負荷と後負荷によって、心拍出量は変化します。そのために、できるだけ後負荷を下げるために、ACE阻害薬やARBといった内服を投与したり、前負荷は非常に重要ですので、飲水やどうしても足りないときには点滴を行ったりすることで、循環血流量を維持します。

 

また、植え込み型VADと違って、ポンプ内を直接みることができます。白色の血栓は多少であれば、日常茶飯事で観察されますが、黒色血栓は要注意です。抗凝固の状態や飲水・点滴などによって、対応することが必要です。また、状況によってはポンプ交換といって、送血管・脱血間の接合部を一時的に外して、新しいポンプに交換するような手術も必要になることがあります。
ポンプを駆動させる小さい冷蔵庫くらいの大きさの機械と常に管でつながっていますので、生活範囲もその管の届く範囲に限定されます。ただ、駆動装置自体は、バッテリー内臓で動かすことができますので、医療者がいっしょについて駆動装置を動かせば、散歩やリハビリも可能です。

 

一般の病院で、ニプロ式の体外型VADを管理することはまずないと思いますが、一応このような感じになっています。

重症心不全の終末期には、心臓移植と緩和医療以外に、自費での植え込み型心室補助循環という選択肢もあります。

VAD(ventricular assist device, 心室補助装置)は、特殊な治療となります。
 
VADは、体外型と植え込み型に分けられます。
この2つには、臨床上の違い以外に保険適応の問題で大きな違いがあります。
現在(2019/5/13)、保険診療上、体外VADは、必要があればすべての人に対して使用することができます。一方、植え込み型VADに関しては、心臓移植の登録患者にのみ保険適応となります。心臓移植(transplant)を目的にして、心臓の手術が行われるまでの期間の橋渡し的な治療(brighe)としてのVAD治療ということで、心臓移植を前提にした植え込み型補助循環による治療をbrighe to transplant(BTT)といいます。これに対して、欧米などで行われている心臓移植を前提とせず、心機能不全に対する純粋な機械的な治療としてのVAD治療のことを、destination therapy(DT)といいます。destinationというのは、補助循環をつけると基本的にはそれなしでは生きていけないということを強く意識しているということになりますが、一度つけて離脱できない人がいないわけではありません。
 
現在、植え込みVADに関しては、日本ではBTTだけが保険診療で手術などの治療ができて、DTに関しては保険診療での治療ができません。もちろん保険適応の問題だけですので、心機能が悪く、何らかの理由で心臓移植登録ができない人に関しては、すべてを自費で賄うことができるなら植え込みVADの手術とその後の管理は可能です。およそ3000-6000万程度で可能かと思います。
 
 
この事実は、重要だと思っています。移植登録できない程度に高齢(67歳くらい)でも、全然現役でバリバリ働いていらっしゃる方は、数えきれないくらい大勢いらっしゃいます。そのような方で、心臓だけが悪いという方がいたとしたら、67歳で心臓移植できないから緩和医療というわけではないということです。このくらいの年齢であれば、5000万払ってでも、まだまだ生きたいんだという人はいらっしゃると思います。このような方にとって、自費診療による補助人工心臓というのは、治療のオプションになってきます。現に、いくつかの大学では数例ずつの患者さんの実例があります。
保険診療を行う医師が、認可はされているが保険診療の適応にはならない治療についてどこまで説明する義務を負うのかは、正直わかりません。ただ、法律的な義務とは別に、このような治療オプションがあって、それを提示するということは必要なことではないかと思います。
 
この問題に関しては、何らかの理由で移植登録できない人に関する左室補助循環の保険診療に対する臨床試験は4年ほど前に行われていて、その結果で認可される方向ではあると人伝に聞いています。ただ、高齢の方ではやはり脳梗塞などの血栓症が多い、移植登録の方でも50歳以上の方では、思ったほど予後が良くないなどの問題はあるようです。

 

 

心不全治療にCHDFの準備は必要だと思います。

心不全で、何らかの理由で利尿が得られず、うっ血の症状が強く出ているときには、CHDFによる除水で機械的に体内の水分バランスを保つことも重要です。
♯CHDF (continuous hemodiafiltration):持続的血液濾過透析
 
このCHDFやECUMについては、半透膜だの浸透圧だの、限外ろ過だのという説明が多くて、で、結局はどうしたらいいのかということを説明してくれているものは少ないように思います。
 
私も、これらの治療自体は腎臓内科や透析にかかわっている先生のように詳しいわけではありません。
ただ、心不全には絶対に不可欠な治療であると考えており、腎臓内科の先生がいない施設でもしなくてはならないときがあると思います。
(ただし、絶対に習熟した臨床工学技士さんの存在は必須です。いない場合には、患者さんを当該施設へ送りましょう。粘ってはいけません)
 
この心不全に対するCHDFに関して、臨床試験では有用という結果は一部であり、現時点では利尿薬で治療できるものは利尿薬で行くという方針にはなります。何でもかんでもしたらいいわけではありませんが、逆にCHDFをしたら悪いという結果もありませんので、消極的になる必要もありません。もちろん、利尿薬より費用の問題はでてきますが。
 
これらの臨床試験の結果の解釈は注意が必要です。それは、これらの研究が、実際の臨床に則していないということです。どういうことかというと、強心薬などと同じで、前向きにランダマイズで試験を行うと、必要ではない人(やってもやらなくてもいい人)にこの治療をやったほうが、より良いかどうかという研究デザインになります。
例えば、ラシックスを100mg静注しても、利尿が不十分な人に、ラシックスを300mgに増量するか、CHDFをするかという研究であれば、実際の臨床に近い結果が出るかもしれません。しかし、このデザインでは、かなり数を集めるのに苦労すると思われ、研究の実施自体が難しくなります。そのため、どうしても浮腫などの明かな心原性浮腫の所見があって、利尿薬でもいけるとは思うが、利尿薬以上の効果を期待して、透析を行うとより良いのではないかというデザインになります。つまり、本来であれば透析が必要そうではない人の集団に対して、利尿薬 vs CHDFという研究にならざるを得なくなります。その結果が、より良い効果はないということになっています。
 
実際の臨床では、患者のベースラインをみて、腎臓の問題で尿が出なさそうとか、循環を立て直すだけでは尿が出なさそうというのがあって、やっぱりいろいろやっても尿が出ないときには、積極的に早期にCHDFを使うことが望まれると考えています。
 
CHDFとはいっても、管理の問題で、1日6時間とか、日勤帯だけとかでもいいと思います。
CHDFに慣れていないのなら、導入時には必ず腎臓内科の先生か、習熟した臨床工学技士さんといっしょに開始しましょう。導入時に問題となるのは、設定と実際に回路を組むということです。回路を組むのは慣れればできます。CHDFを終わるときには、回路を外しますが、これは、慣れなくても一回みればできます。
導入時は慣れた人と一緒に行う必要がありますが、終わりは慣れていない循環器内科医一人だけでも大丈夫です。そのため、日勤帯に導入、回路が詰まるまで継続して、夜勤帯に回路が詰まった場合には、当直医が離脱させるということで対応可能だと思います。
 
 
では、CHDFの設定についてです。
循環器内科医が、意識しなければならいのは、一点だけで、血液の流量のみです。(他の設定は、臨床工学技士さんや腎臓内科の先生に丸投げでもいいと思います)
重症心不全であればあるほど、立ち上がりをゆっくりとしなければなりません。設定は、20ml/minから、血圧などを見ながら徐々に上げてはいきます。最終的には、50-80ml/min程度でも、機械的に問題がなければその程度の血液流量でもいいと思います。
 
CHDFを行うときに、選ぶ必要があるものは、透析のフィルターの種類と抗凝固薬の種類(ナファモスタット or ヘパリン)です。
フィルターは、特にそれほどこだわりはなく、管理の都合上できるだけ目詰まりしにくいものということで選択していました(セプザイリスという膜をよく使っていました)。
抗凝固に関しては、ヘパリンが多かったですが、出血のしやすさや、他の治療機器、内服などの関係で、できるだけ回路内だけの抗凝固をということであれば、ナファモスタットでいいと思います。
 
実際に開始する時に、設定値を選択・調整するものとしては、透析液流量と補液量、濾液量があります。
透析液量と補液量ですが、これは保険の関係で、24時間持続で行う前提であれば、透析液量 600ml/h、補液量 200ml/hは実質固定値になります。この値は治療中も変更しないと思います。
カリウムが高いので一時的に電解質除去を目的にしたいときには、透析液流量を1000-2000ml/hに上げる必要があるようですが、このあたりは専門家と相談しながら調整する必要があります。
 
実質的にいろいろと変更させるのは、濾液量です。濾液量の設定で除水量を決めます。除水量は、濾液量から透析液量と補液量の合計を引いた値になります。透析液量 600ml/h、補液量 200ml/hで固定となりますので、濾液量 800ml/hであれば、除水量は0、濾液量 900ml/hであれば、除水量は 100ml/hとなります。
 
つまり、CHDF開始時にはは、濾液量 800ml/hで除水を0ml/hにして、血液流量も20-30ml/h程度で開始して、特に血圧に注意しながら徐々に10-20ml/hずつ上げていきます。あまりに上げるのが遅いと凝固する可能性があるので、安定するまでつきっきりで調整してください。
補液量が200ml/hですので、個人的には60ml/hあれば問題ないと思います。
 
回路が安定して回り出したら、濾液量を調整して、50ml/h程度にいったん設定し、その後、行けそうなら60-150ml/H程度で、欲しい尿量をイメージしながら設定すればいいと思います。
 
CHDFに関しては、すこし乱暴な言い方になりますが、IABPやPCPSと違って、最悪何か起こっても、回路を止めればいいだけです。回路内で凝固してしまって返血できなければ、回路内の血液がロスしてしまいますが、それ以上のことは起こりません。
利尿がない中、うっ血による溢水で呼吸状態が不安定化している状態なら、循環不全の評価・治療をしたうえで、利尿薬をあれやこれやといじるだけでなく、CHDFという選択肢も常に意識して、必要な時には素早く導入し、水分管理を行うことを考えなければなりません。

Impella時代になっても、VA-ECMOはもちろん重要です。

Impella時代になっても、VA-ECMOはもちろん重要です。
 
PCPS = VA-ECMO ​​
PCPS (percutaneous cardiopulmonary support):経皮的心肺補助[法、装置]​​
ECMO (extracorporeal membrane oxygenation)​:膜型人工肺による酸素化、体外膜型人工肺
IMPELLA:これは商品名で、総称としては補助循環用ポンプカテーテルではあるが、現時点ではIMPELLAしかないため、IMPELLAという単語のほうが一般的に使用される。
 
広範な急性心筋梗塞やそれによる心肺停止状態、劇症型心筋炎などのときに導入することが多いと思います。
慢性心不全の急性増悪では、VA-ECMOまで導入となることはほとんどないと思います。慢性心不全の急性増悪での導入の時には、重症心不全で心臓移植登録状態で、左室補助循環を導入する手術までに循環動態を立て直すのに、右室機能の問題でImpellaだけでは困難だと思われる時や、先天性心疾患などで右心機能が高度に障害されている状態で、循環不全が立て直せない状態で、積極的な治療を行わない理由がない時には、たとえその先にほとんどよい兆しがないとしても、循環不全を導入しない理由がないのであれば、VA-ECMOは導入されるべき治療となります。導入しない時には導入しない理由を主治医団は説明する義務があると考えています。
(強心薬は投与するが、機械的な治療は行わないというのは、勝手に医療者側がラインをひいていいものではないと考えています。これらの判断は、あくまで、そのような治療があること、その利点・欠点・合併症について説明し、患者側の意向を確認する必要があると考えています)
 
さて、VA-ECMOに関しては、急性心筋梗塞や心筋炎の項目でどのような感じで導入するのかはお話ししますが、導入に際しての注意点は、カニューレのフレンチ数(太さ)をどうするかということで悩むことがあるかと思います。
フレンチ数が小さいほど導入は簡単ですし、留置中の下肢の阻血も怒りにくいですし、抜去時に止血がしやすいなどといいことはあります。ただ、十分な流量を確保できないなどの問題もありますので、循環不全に対してVA-ECMOが必要な時にはある程度の流量が必要だと思いますので、体格が許す範囲で太いカニューレを選択する必要があります。
 
VA-ECMOの管理の正解はわかりません、すいません。
私は完全に乗せるか、サポート的に使うかで分けていたように思います。
完全に乗せるときには、flowを3-5Lにとりますが、こうすると自己の心臓からの駆出はほぼなくなると思います。血栓などの問題があるので、大動脈弁は何回かに一度でもいいので、開いてほしいと願いながら流量を少し落としたりしました。
 
また、右心機能が比較的保たれているときに、フローを落とすと、右室から左室へは自己の肺循環でどんどん血液が送られるが、フローが低めなので、ECMOを介した循環が少ないという状況になることがあります。この状況で大動脈弁が開いて、左室の中の血液が大動脈へ出てくれればいいのですが、これがない場合には、右室から左室への血液が停滞を起こし、肺を中心に高度のうっ血・溢水を起こすことがあります。こうなると肺がびしょびしょになりますので、強心薬を使って自己の左心を動かそうとする処置が必要になります。それでも左心が動かず大動脈弁が開かないときには、必要フローを上げて、右室の前負荷を落として肺動脈弁が開かないようにしないといけません。IABP,多量の強心薬、VA-ECMOの流量を上げてもなおその状況が続くのなら、CHDFを使ってでも右室の前負荷を下げる必要がありますが、ここまでの状況になることはあまりないかと思います。
 
また、心筋梗塞や心筋炎の急性期では、強心薬をできるだけつかわずに心臓を少しでも守りたいという考えもありますので、カテコラミンを使わずに、IABP+VA-ECMOに完全に依存するということもあります。心筋梗塞で2-3日程度であればそれでもいいと思いますが、心筋炎や長期になるなら、現時点ではIMPELLAを使える施設に相談しましょう。
 
 
ECMOに依存させるか、サポート的に使うかで、3-5L or 1.5-2Lくらいの設定になるかと思います。自己の残存する心機能のよる心拍出があるかどうか、ないにしても大動脈弁は数心拍に一度程度はできれば規則的に開いてほしいなどをみながら、右心カテーテルデータや他の全身の指標などをみつつ、調整していくしかないように思います。
ECMOで何をしたいのか、自己心とどのような関係性にしたいのかを明確にして、後は、その設定にした時のさまざまなデータから調整するしかないと思います。
 
 
合併症は血栓と留置部の下肢虚血が主なものかと思います。抗凝固は、使用する機械、カニューレの材質などによって変わりますし、その人の血栓性にも左右されます。ヘパリンでのACT or APTT管理だけでなく、アスピリンを併用したほうがいい時もありますし、抗凝固を一切しないほうがいい時もあります。
 
また、下肢の虚血に関しては、かならず1日3回は、医師と看護師で確認しましょう。穿刺側だけでなく両側の膝窩動脈と足背(or 後脛骨)動脈の血流の確認と、血流があるかだけではなく、足趾の色、冷たさ(手と比較)などにより灌流の状況も確認しましょう。それで、少しでもECMOのカニューレによる阻血が疑われたら、どこでもいいので穿刺して(私は浅大腿動脈をエコー下穿刺が多かったです)、かならず阻血を解除しましょう。
 
離脱する時には、フローを1.5Lでしばらくみて、心エコーをみながら、一時的に1.0Lにするとか、脱血管を鈍的な何かで挟んでフローを落とした状態にして、右心カテーテル(右房・肺動脈圧)と心エコーでの右室・左室のサイズ・動きなどがECMOなしでもいけそうかどうかをみて、判断します。
あまり長い時間低流量にすると血栓ができたりするらしいので、評価ができたら1.5L以上の設定に戻し、抜去していきます。
 
抜去は、用手的に圧迫する施設と外科の先生にお願いして縫合する施設とがあると思いますが、施設毎の取り決めに従っていただければいいかと思います。止まれば、きれいに止まるのは用手圧迫ですが、抗血小板や抗凝固を止めれないときには、用手圧迫は厳しいかもしれません。