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心不全について私が知るすべてを話すブログ

HFpEFには心リハだと思う理由

左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF, Heart Failure with preserved ejection fraction)は、一見心エコーやMRIなどでみると左室駆出率(LVEF)が、少なくとも50%以上あって悪くはないのに心不全を行いている症候群です。原因はひとまず問われず、心不全患者のLVEFだけをみて、大きく2つ(ないし3-4つ)にわけることになります。

原因としては、アミロイドーシスや心ファブリーなどの何かが心筋組織に蓄積するようなある程度特殊なもの以外に、比較的良く見るのが高齢女性という集団になります。もちろん高齢男性にもみられることはありますが、統計的には高齢の女性に多くみられます。

なぜか。また、現状何故有効な薬剤治療がないのか。今回はそのあたりを私の完全な私見でお話していきます。

 

すべては後負荷が原因であると思っています。後負荷というのは、別で述べていますが、血管そのものと血管内の血液によって作られる、心臓の収縮に対して邪魔するように働く負荷になります。また、心臓はこの後負荷に対して、仕事をして循環を維持するというものになります。

心臓は、収縮して血液を駆出するこことで、すでに血管の中にある血液を動かします。動かされた血液は、さらに前方にある血液を押しながら進む成分と、血管を拡張させて拡張期に流れるために一時的にプールされる血液にわかれます。この連続によって血液は血圧を作り、かつ、末梢へ血液を進めます。

また、末梢組織では、終末細動脈が抵抗血管となって圧をそぎ取って、末梢組織内の毛細血管に過度な負荷がかからないように調整しています。末梢血管抵抗を下げると血圧が下がるといわれますが、末梢血管抵抗は末梢組織を保護していますので、低下させるには限りがあります(本当に末梢血管抵抗の低下が血圧を下げているのかどうかも検討する必要があります)。毛細血管内は通常では浮腫が起きない(血管から組織への水の移動量がリンパからの汲み取り可能量以下)程度の圧で、かつ、定常流で、少し赤血球は変形しながら流れます。毛細血管内をある一定の状態に保たなければなりませんので、最終の目的である毛細血管の状態はあまり変化させないような範囲でしか手前の循環的な要素を変化させることはできないのです。

 

この制約の中でもっとも後負荷を規定する要素は、大血管のコンプライアンスと末梢血管の数です。大血管、つまり、大動脈のコンプライアンスは、急心不全の原因となることが推測されており、急性にコンプライアンスが増加して、心臓に強い後負荷の変化を与え、さらに左室拡張末期圧を上昇させると推測されています。しかし、急性の変化に対するニトロスプレーのような治療はあっても慢性期により大血管を弛緩させるような治療はなく、また、このようなタイプの心不全の急性増悪を予防することが難しいことも、また、実臨床の中で経験されている事実でもあります。

 

次に、末梢血管の数もまた、後負荷に強く影響します。末梢血管が増えれば、血管の総面積が増えますので、総面積ないし、総容積の増加は、並列回路の発想と同じで総抵抗を減少させます。

この2つの要素が最も出やすいのが高齢の女性ということになるのではないかと考えています。血管は、否応なく加齢に伴いコンプライアンスが低下します。また、高齢の女性は、高齢男性や若年者と比較して、筋肉量が少ない傾向にあります。それは、もともとの運動習慣であったり、体格そのものが小さいということが関係すると思います。筋肉量が少ないということは、すなわち可変の末梢血管の数の減少という結果となり、後負荷の上昇につながります。

つまり、大血管が固くなってしまい、末梢の動脈が少ないということが、高齢女性というグループをいわゆるHFpEFにしている大きな要素ではないかと考えています。

 

ここから、HFpEFの治療において、薬剤がなかなか有効ではないという理由もみえてきますし、最も重要な治療が、運動であるということに帰結するように思っています。

1次予防としてのジムや運動教室、2次予防としての心臓リハビリが非常に重要な治療になってくると考えられます。

 

以上が、私が、心臓リハビリこそがHFpEFの治療の最も有効な治療であると考える理論的な背景となります。理論循環器学と私が勝手に呼んでいる学問内での妄想ですので、本当かどうかはわかりませんが、今わかっていることから、矛盾なく、一つ一つ解き明かそうとするとこのような結果となるような気がします。

一瞬心筋炎かと思った多枝冠動脈攣縮と攣縮に対する特殊な治療

 以前、50歳くらいの患者さんが救急外来にショック状態で運ばれてきました。

心電図では、右冠動脈の完全閉塞とほかの血管に異常があると思われるような所見で、多枝の心筋梗塞かなと思いエコーをあてると、全体的に心筋が動いておらず、え、心筋炎かと思いました。
とにかく、冠動脈造影をすると、右冠動脈と回旋枝が完全閉塞し、前下行枝が高度に狭窄していました。収縮期血圧も80mmHgあるかないかの状態でしたが、検査中にどんどんと血圧が低下していき、そのまま心停止となり、VA-ECMOとIABPを留置しました。
状態が落ち着いてから、冠攣縮を疑って、ニトロールを冠動脈内投与したら、冠動脈は完全に開存しました。
その後、CCUで、ニコランジル、ニトロール点滴静注し、アダラート®とエパデール®の経鼻胃管からの投与を行いました。
スワンガンツカテーテルを留置して、血行動態もモニタリングを行っておりましたが、CCUで再度心電図で右冠動脈閉塞の変化が出て、Cardiac Output 2.5L/min ⇒ 1.0L/minまで低下するということが起こりました。病棟で、ニトロール静注追加したり、気管挿管状態ではありましたが、ニトロペンを舌下投与してみましたが、改善はなく、結局再度心カテ室でニトロールを冠動脈投与し、改善しました。
 
しかし、再度CCUに戻ってしばらくすると、冠動脈攣縮がおこりました。その時に何度もカテ室に行く以外に方法はないのかものかと考え、IABPの先端は圧を測定するためにカテーテルになっていたので、IABPの先端からニトロールを打てば、上行大動脈のニトロール濃度は非常に高くなり、さらに、IABPの収縮・拡張によって、冠動脈にニトロールが高濃度の状態で押し込まれるので、よりよいのではないかと考えました。実際にIABPの先端からニトロールを5mg静注ではなく、動注すると、心電図で右冠動脈の虚血が改善したようになり、血行動態も安定しました。
 
その後も、攣縮が頻回に起こりましたが、IABPの先端からニトロールを投与すれば、攣縮が改善する状態ではありました。
しかし、攣縮はいつ起こるかわからず、そのたびにニトロールをIABP先端から投与する必要がありましたし、血行動態が不安定であったり、下血もありましたので、それらに対する対応を行う必要があり、まだ、私自身30歳前半で元気であったので、CCUに宿泊用ベットをつくり、CCUでの寝泊まり生活が始まりました。ま、それはいいのですが、とにかく攣縮が起こると一気に低拍出によるショックが起こるものの、IABPからすぐにニトロールを動注すれば改善することがわかりましたので、その治療を続け、徐々に攣縮の頻度が低下し、ほぼおこらなくなった3病日にECMO離脱し、それからしばらくすると攣縮は完全になくなりましたので、10病日程度でIABPからも離脱しました。
 
なかなかの攣縮であったと思います。
最終的には右室は、エコーおよび右心カテーテルのデータからは、障害はほぼないと判断されましたが、左室駆出率は40%程度での状態で最終的に退院となっています。
患者さんは50歳代であったこともあり、攣縮の嵐の時に、一度心臓移植も考えましたが、攣縮もコントロールでき、左室駆出率40%まで改善したため、そのまま心リハを含めた外来治療を続けることになりました。
 
いまIABPの先端がコンデンサーチップになっているものもあるようですので、同じことができるかどうかはわかりませんが、静注で改善せず、冠動脈注入でしか改善しないものに関しては、IABP動注が攣縮の治療として有効な時があります。

急性心筋炎の診断と治療

急性心筋炎の診断と治療に関してのお話をしたいと思います。

劇症型心筋炎を意識してお話します。ただ、後述しますが、来院時は、劇症ではなくても、入院後に劇症化することも多々ありますので、すべての心筋炎は劇症化する前提での対応が重要です。

 

 

診断に関しては、どのような心筋炎であるかというに関しては、心筋の病理標本を基準にしたがって診断していきます。ただそれは、病理学の先生と相談するか、わからなければ私が以前勤務をしていた循環器の専門施設の病理部門の先生にコンタクトをとれば、患者さんの重要な命にかかわる診断ですので、病理組織の診断に力を貸してくれると思います。

私も、病理標本はある程度しかよめませんので、病理組織の診断は、ここでは(できないので)しないで起きます。

(私の病理の知識は、提示された心筋標本の特徴とか、好酸球とか巨細胞とか、心筋が肥大しているとか線維化が強いとか診断程度です)

 

それでは、心筋炎を実際の臨床の経過について、補足していきながら説明していきます。

一言だけお断りをいれておきますが、心筋炎の治療に関しては、特にステロイドと免疫抑制薬の使い方に関しては、異論はあると思います。たぶん、私がある大学の急性期の治療の担当をしていた時に、きっと私のやり方に否定的だった人がいたかもしれません。そのくらいに定まってはいない側面もあるものだということだと思います。

 

急性心筋炎は、突然心機能が低下した急性心不全の状態で来院します。救急外来でのパッと見の所見としては、意識混濁、低血圧、顔面蒼白、冷汗、呼吸困難かと思います。急性に来ると浮腫などはあまり目立ちません。亜急性のように一定の期間をかけて悪くなるとその間に水が貯まるので、浮腫を伴うこともあります。

 

これらの所見から、かなり急性心筋梗塞を疑って、心電図、心エコー、血液検査が行われます。心筋梗塞であれば、閉塞した冠動脈に応じた特徴的な変化が生じて、実際には心電図から、どこの血管が閉塞したのかを診断します。心筋炎の場合には、心電図は、STが上昇していたりしますが、心電図所所見からはどこの閉塞かはまったくわからないような変化となります。この段階では、一瞬肺血栓塞栓症を思い浮かべたりしますが、心エコーを行うと全く違う所見がみられます。心エコーでは、左室が肥厚して、全体的に動きが悪くなり、かつ、筋肉の粘度があがったようなどろっとしたような何とも言えない動きになっており、この段階でほぼ心筋炎という診断ができると思います。

血液検査はこれらの検査の後に出てくると思いますが、所見としては、心筋梗塞の所見と大して変わらない、白血球が高く、CK、CKMB、トロポニンが上昇しているという状態になります。

ここで重症度に関しての注意ですが、心筋梗塞でCK 1000であれば、軽症か、まだ上がる手前かと思います。しかし、心筋炎でCK 1000というのは重症です。心筋梗塞のように一瞬で血管が詰まって、その後に心筋から流れ出るCKと、ずっと炎症が続いて心筋そのものが痛み続けて持続的に出続けるCKでは値の持つ意味が変わります。心筋炎の CK 1000は重症と考えてください。

また、心筋梗塞はなった時の心機能がひとまずの底で、そこからどんどんと状態が悪くなることはあっても、心機能そのものがどんどんと悪くなるということはないと思いますが、心筋炎はどんどんと悪くなります。来院時が底ではなく、心筋の炎症は持続的に続くため、来院後特にその日から翌日にかけて悪くなることを覚悟しないといけません。

 

 

さて、心筋炎の治療としては、血行動態や症状に対する治療としては、普通の急性心不全の治療と同じです。ただ、通常の急性心不全と心筋炎は、決定的違う点が一点あり、繰り返しとなりますが、心機能障害が進行するということです。普通の心不全であれば、入院の段階から水分バランスの調整(循環を保ちつつ利尿する)がうまくいかずに難儀することはありますが、基本的に心機能そのものは変わりありません。しかし、心筋炎の時には、入院後も心筋の炎症はある程度の期間続きますので、その炎症が続く限り心機能は低下していきます。日中の入院時になかった循環不全が、夜間に出現することもあります。というか、でます。そのため、常に時々刻々循環不全や心機能を評価しつつ、柔軟に、かつ適切に機械的な治療を導入する必要があります。

この点が、心筋炎を治療するにあたって重々意識せねばならない点です。入院後も病気の根本が進行し続ける病気というのはあまりなく、特に循環器領域では、いらないことをしなければ、基本的に入院したときの状態が底のことがほとんどですので、治療に困ることはあっても、どんどんと悪くなることはあまりありませんが、心筋炎だけはそこが根本的に違って、ここを誤ると助けられる患者が助からないということになります。

 

心筋炎には、特別なことが一つあります。診断のために、心筋生検を行うことが必要であるということです。心筋炎であるかどうかということまでは、上述のように、普通の検査でほぼ診断ができます。ただし、心筋炎の中にはステロイドの治療によって、心筋の炎症自体を抑えることができる疾患(好酸や巨細胞、サルコイドーシス)があり、これらの疾患に対しては、適切にステロイドと免疫抑制薬を使うことで心筋炎の進行を止められます。他の疾患は、どうかというと、心筋炎の炎症は、風邪のようにただ待つしかありません。インフルエンザであれば、抗インフルエンザ薬を点滴静注したり、原因となるウイルスが簡易にわかって、治療薬があればそれを投与しますが、あるほうがまれです。

このステロイド反応性の心筋炎かどうかを、見極めるために心筋生検を早期に行うことがあります。

どれくらい早期にすればいいかというと、数時間でも早くです。心筋梗塞の緊急カテーテルのように5分でも早くというわけではありませんが、可能な限り早く行うべきです。それだけ、ステロイドで心筋の炎症を抑えることが重要だと私は考えているからです。

 

具体的に私がいた施設ではどうしていたかというと、緊急呼び出しです。

心筋生検ができる人間が2名以上いたので可能だったというのもありますが、それができない施設は、心筋炎を見てはいけないと思っています。すぐに高次医療機関に送るべきです。

具体的には、心筋炎の患者が来るとします。冠動脈造影で冠動脈による心機能低下ではないことを確認して、そのまま右でも左でもいいので、心筋生検を行います。そして、右心機能の評価カテーテル(スワンガンツカテーテル)で心機能を評価したうえで、持続評価できるように留置します。この時に、繰り返しますが、この時点よりも刻々と心機能は悪くなっていきます。このことを念頭において、IABP、Impella、VA-ECMOを導入します。また、IABPやImpellaもいいですが、右心・左心もやられるということも重要で、左心を中心の補助するデバイスでは、病態の進行に、押し負ける可能性がありますので、常に、VA-ECMOを念頭に治療する必要があります。

その時に、病理部が動いている日勤帯かどうかで場合分けになります。病理部が動いている時間なら、そのまま検体を提出して、ステロイドが有効な心筋炎であれば、ステロイドのパルス療法(1g×3日)を行います。好酸球心筋炎であれば、パルスだけを行って様子を見るか、40mg程度で継続して、徐々に減量するのでもいいと思います。

巨細胞性心筋炎の場合には、ステロイドパルス療法の後は、免疫抑制薬を使用します。子の場合は2剤併用で、長期間の使用になりますので、通常の医療機関で対応することはないと思います。

病理部が動いていないときには、夜間などになると思いますが、とにかく心筋生検できる人間を呼び出して、心筋生検を含めた心臓カテーテル検査を行います。病理部が動くまでの間に、どの心筋炎かわからない状態でありますが、とにかくステロイドパルスとして1g投与します。1日だけ投与して、翌日すぐに心筋炎の診断をしていただいて、ステロイドパルスの適応があれば続けて、なければ中止です。

この判断には異論があると思います。

劇症型のような状態であれば、いわゆる敗血症性ショックの治療が感染の部分を除いて適応される可能性があり、その時のステロイド投与(300-500mg)は、悪いことはしないという(症例によってはよくなる程度)結果ですので、1回1gの投与であれば、心筋炎の治療という意味では、ステロイドの適応がないものであっても、感染なども問題にはならないと判断しました。

また、ステロイドが有効でない心筋炎の場合には、両室の補助人工心臓を導入する可能性がありますので、免疫を抑制するステロイドパルスをすると術後感染や縫合不全の可能性があります。ただ、これに関しては、1度のステロイド投与で術後問題となるようなことはないように思うとの心臓外科側からの意見もあり、行っていました。一度のパルスよりも、中等量の持続投与のほうが問題になるのではないかということでしたが、もちろん、データに裏付けられたものではありません。

 

 

心筋炎の治療に関してのポイントは、主にこの2つです。

入院後も心機能障害自体が増悪していく

心筋生検は可能な限り早く行い、ステロイドパルスはフライング気味で開始する。

 

あと、追加するとしたら、心筋梗塞のCKの値と、心筋炎のCKの値は異なるという点だと思います。

 

心筋炎の原因を別にまとめようかと思いましたが、多くはウイルス性で、時折全身の好酸球が上がる疾患の随伴、おそらく次に多いのは薬物(合法、非合法、変なガス含む)あたりかと思います。AHAのガイドラインでは、他に細菌や真菌などの感染症を起こすほぼすべてのものや全身疾患が列挙されています。

ちなみに、好酸球性心筋炎は、全身の好酸球が上がる疾患に随伴するものもありますが、末梢血の好酸球が上がらないものも結構ありますので、注意してください。

後負荷とは

後負荷とは、心臓が収縮して血液を大動脈に拍出するのに対して邪魔するをすべてのものとなります。

後負荷を理解するには、2つの要素の理解が必要になります。まずは、血圧。そして、閉塞性肥大型心筋症と、その閉塞の程度に対する降圧薬の効果です。

まずは、血圧が何かからみていきます。
血圧は、動脈中の血液が血管を外方向へ押し広げる力(とそれを押さえつける血管の力が釣り合った力)を測定しています。動脈のある場所における血圧は、その場所における血液の量の変化(外へ押し広げる力)と血管のコンプライアンス(血管の硬さ)によって決まります。血管のコンプライアンスについては、血管自体の材質(性質or性能)や、血管のサイズ(同じ材質でも小さくなればコンプライアンスは低くなる)などにより決定します。

心臓が収縮して、動脈のある測定点で血液が増えて、血管を押し広げ、それに対して血管が抵抗するときに最大血圧になります。ちなみに血液の移動速度と、血圧の伝わる速さは違います。心臓から血液が駆出される時には、通常の最高速度は60-80cm/sec程度で駆出されます(1m/secを超えると狭窄・閉塞があるかもしれないと疑います)。脈波は、1200cm/sec程度で伝わりますので、10倍以上の差があります。これは、血圧は血液そのものの移動ではないことを示唆します。血液は大動脈に駆出されたときに、血管内にすでにある血液を押し込みます、すると、動脈は外側に進展しますので、大動脈の中の血液は、膨れる分と前に進む分に分かれます。前に進むといっても、自分がどんどん進むというよりも、すでに血管の中にある血液を推し進める感じで血液全体として前に進みます。そのため、駆出された血液が移動するのではなく、どんどんと前を押し込むことで、脈波として伝わるので、実際の血液の移動速度よりも血圧(脈波)の移動速度は速くなります。血液を押し込んで行くと、末梢では終末細動脈が抵抗を作っているので、そこでいったん渋滞します。すると、押し込んでいた血液が、おっとっとという感じで、抵抗を感じてストップしていきます。この抵抗によるストップは、逆方向に伝わりますので、反射波と呼ばれます。この反射波(実際に何かが戻っているわけではない)によって、最終的には大動脈を閉鎖させます。

例えてみると、これは、ドミノ倒しのようであり、高速道路での工事渋滞のようでもあります。
もう一度説明しますと、心臓から出た血液は、すぐそこにある上行大動脈の血液をプッシュします。すると上行大動脈の血液は押し込まれますので、大動脈を進展させて膨らみながら、さらに前方をプッシュします。プッシュされて膨らみながらさらに前方をプッシュすることが連続的に起こって、血液の移動速度を超える速度で血圧は血管を伝わっていきます。そして、抵抗血管である終末細動脈にまでプッシュすると横方向に逃げれず前方をプッシュしますが、同時に行き止まりとまではいきませんが、それに近い状態になり、前方をプッシュできずに停滞します。停滞すると、その停滞がどんどん後方へ波及し、最終的に上行大動脈まで停滞が起こり、その時に大動脈弁が閉鎖し、収縮期が終了します。心臓の収縮期は、だいたい心電図のQT時間と考えると、0.3-0.4secとなり、この時間の間に前方プッシュによる血圧の伝播から停滞による後方渋滞が生じることになります。
血液がプッシュされて膨らんだ時の力と、血管の硬さによって血圧が決まります。ちなみに、大動脈内の血液の流れをエコーで確認すると、収縮期に最高速度60-100cm/sec程度の順行性血流があって、収縮期の終わりに一瞬逆流の波があり(停滞による後方プッシュ)、拡張期には静脈のようなだらだらとした遅い血流が少し流れます。
いわゆる血圧は、このプッシュされて膨らむ力が血管を押す力になりますので、血管が硬ければそれだけ力がかかりますので、血圧が高くなります。血管の硬さは、血管トーヌスといって、NO、アンギオテンシンIIなどのホルモンや、イオンチャネルなどによって、可逆的に調整されていたり、動脈硬化のように不可逆的に硬くなったりします。また、物理的に同じ材質でも径が小さいほうがコンプライアンスが低くなりますので、硬くなるといえます。

さて、次に閉塞性肥大型心筋症を考えます。左室の流出路の周囲の、特に中隔の心筋が肥厚していると、収縮期に中隔の肥厚している心筋が左室流出路の少し手前で狭窄を生じ左室からの拍出を邪魔するという病態です。狭窄による圧較差によって症状などが生じ、最大100mmHg以上の圧較差を生じるような狭窄もそれほど珍しくはありません。
もちろん、大動脈弁狭窄症のようにずっと狭窄しているわけではないので、必ずしも症状があったりするわけではありませんが、それでも失神や胸痛などの症状は起こることがあり、このような場合には圧較差を減じる治療が必要になります。
圧較差を減じる治療に関しては、カテーテルなどいくつかの治療がありますが、初手としては内服調整を行います。この圧較差は、心臓の収縮性が高くなる、後負荷が低くなる、または、前負荷が低くなると、悪化しますので、もし、このうちのどれかに関係する作用がある内服の場合には、それらを中止することになります。多いのは、降圧薬です。降圧薬は、前負荷か、後負荷を落とす作用を持っているものがほとんどですので、基本的に高血圧治療は中止となります。ただし、β遮断薬だけは、心臓の収縮機能を低下させるため、α遮断作用のないテノーミンなどを十分な量投与することは、圧較差を減じるのにも、降圧にも有用ですので、閉塞性肥大型心筋症の降圧治療の第一選択は、禁忌のない限りテノーミンやメインテートになります。他にも、シベノールなどが有効ですが、それはまた別のお話です。
さて、降圧薬の中でもこの閉塞性肥大型心筋症に対しての作用は、結構異なります。特にACE阻害薬(やARB)は如実に圧較差を悪化させます。しかし、カルシウムチャネル拮抗薬(CCB)に関しては、意外に圧較差を変化させないことが多く、βブロッカーだけで降圧が不十分であったり、禁忌があって使えないときには、あくまで心エコーで圧較差の悪化がないことを確認しながらですが、CCBは使用可能です。ACE阻害薬とCCBは、どちらも標準容量であれば、同じ程度の降圧効果となりますが、この閉塞性肥大型心筋症に対する影響の違いから明らかに血行動態的に異なるということが言えます。つまり、ACE阻害薬のほうが、前負荷及び後負荷を減じる作用が有意に強いということになります。確かに、静脈は、NOや一部腹腔臓器の静脈はα受容体があり交感神経の支配を受けていて、レニンアギオテンシン系はそれらとクロストークしますので、前負荷を減じている可能性があります。しかし、後負荷に関して、特に大動脈にような平滑筋の少ない動脈は、カルシウムによる制御をほとんど受けておらず、アンギオテンシンなどのホルモン的な支配を強く受けていることがわかっていますので、同様の降圧作用でも、CCBは末梢の平滑筋の多い動脈に作用して、ACE阻害薬は大動脈にも作用するという可能性があります。この差が、2つの薬剤の差であれば、心臓にとっての後負荷の減少作用は、ACE阻害薬が優れているということになると同時に、CCBでは減ぜすに、ACE阻害薬で減ずるとすれば、心臓の後負荷は大動脈がになっているといえます。

上記2つの事柄から、心臓の内的な抵抗以外の外的な後負荷のメインとなるのが、大動脈とその中にある血液であるということが言えます。
であれば、大動脈径が細ければ、後負荷は増加して、不全心筋となりやすかったりという可能性も考えられます。また、血圧が上昇していて、急激な肺水腫をおこなしているいわゆる電撃性肺水腫には、ニトロスプレーが有効ですが、ニトロスプレーには、大血管を弛緩させる作用がありますので、大動脈が弛緩し、後負荷が軽減し、左室の拡張末期圧が低下することで肺水腫が軽減されるということにもつながります。

上行大動脈の血管系は、3cm程度ありますので、断面積は、約7cm2であり、およそ8cm分(2-3椎体分)で60mlになります。これだけの血液が毎拍出ごとに駆出され、プッシュプッシュを繰り返し、脈波が伝わります。

心房のサイズが拡張機能の指標となる理由

心エコーで、拡張機能の評価や心不全の治療反応評価で測定される指標として、左房容積、E/A、E/e'といわれる項目があります。特に、左房容積は、拡張機能が悪い心不全の指標の一つとして重要視されています。
 
心房は、基本的に組織的な構造は心室と同じです。
ただ、イオンチャンネルの種類や分布が異なっていたりすることで、いわゆる分極の2相が平坦ではなく、全体として三角形ぽくみえたり、カリウムチェンネルでアセチルコリン誘発のカリウムチャンネルがあったりします。また、ミオシンの構造も少し違います(胎児性ミオシン)。
さらに、心耳という、心房にくっついた耳のような空間があります。心房細動になると、この心耳に血栓ができるために、デバイスでこの心耳を埋め立ててやると血栓症が減ります。なぜ心耳があるのかと思うこともありますが、なぜ心耳があるのかというよりは、発生学的にまず心耳があって、その後に心房ができていはます。ANPも主に心耳から出ます。
 
心房が拡大することは、心室の拡張機能の低下の重要な指標となります。
心房が拡大すり理由としてはいくつかあります。
心室と同じように拡大する理由の一つは、収縮機能の低下です。心房細動になると、実質的に心房は収縮しなくなりますので、心房は拡大していきます。
もう一つは、慢性的な圧負荷によっても拡大します。左心室であれば、慢性的な圧負荷は左室の求心性肥大という状況で、小さくてよく動いているけど、実際には、拍出量は小さくて、拡張期圧も非常に高いという状況になります(典型的なHFpEF)。ただ、心房にはこのような現象は基本的には認められておらず、慢性的な圧負荷によって、どんどん拡張していきます。圧に負けて拡張を始めたら、物理学的に拡張するしかありません。どんどんと拡張していきます。拡張すると破裂するのではと思いますが、確かに心房破裂による死亡の報告は、あるにはあります(ROBERT M. Circulation. 1954;10:221–231. Atrial Rupture of the Heart: Report of Case following Atrial Infarction and Summary of 79 Cases Collected from the Literature)。心房破裂の原因の多くは、外傷や腫瘍、心筋梗塞に伴うものですが、弁膜症に伴うものもあるようです。急性かどうかが記載がないものもありますが、一つの原因として僧帽弁狭窄が挙げられており、僧帽弁狭窄は急性におこることはない(腫瘍による狭窄の可能性あるが、それであれば腫瘍に分類されている)ので、慢性経過で心房が大きくなって裂けることはあるにはあると思われます。ちなみに、僧帽弁狭窄は、若い技師さんや医師は結構見逃します。大動脈弁の開放制限は注意していても、僧帽弁の開放制限や、E波やA波が異常に高いことを見逃すことが多いです。これも僧帽弁狭窄症自体がほぼなくなっているという現状があるからだと思います。移民が増えれば、また、状況は変わるのかもしれません。さて、この論文自体はかなり古いのですが、自然発症的なものには大きな変化はないと思います、ただ最近ではデバイス関連の心房破裂ないし、心房からの血液の漏れによる心タンポナーデなどが多いように思います。(主にペースメーカ抜去)
個人的にみたことがある最大の左房は、拡張型心筋症に機能性僧帽弁閉鎖不全が合併していて、エコーでBiplaneディスク法をつかって測定した容積が350mlという大きさでした。測定値にはかなり誤差があると思いますが、相当大きいです。普通の人の心臓そのものよりも大きいように思いました。
 
左房は、容量負荷によっても拡大します。多いのは、心房中隔欠損症や僧帽弁閉鎖不全症になります。
 
心房の場合には、求心性肥大がないため、収縮機能低下、後負荷(=左室拡張期圧±僧帽弁狭窄症)、容量負荷によって、心房が拡大します。
容量負荷は、弁膜症や短絡疾患がないかどうかをみればわかります。
収縮機能に関しては、現時点で評価する指標はありません。
ということで、心房が大きいということは、他に原因がないのであれば、後負荷の増大が原因ということになりやすくなります(収縮機能障害を評価できないため)。
心房も心室もある程度は一時的に大きくなったり元に戻ったりしますので、心不全でも基本的には代償されていて、容量と圧が適正化された状態で測定された値が、評価するための測定値ということになります。この慢性安定状態での左房に後負荷として影響を与えるのが、心房収縮の抵抗となるA波に対する圧であり、おおよそ拡張末期圧といえます。つまり、拡張末期圧の時間的な積み重ねの圧(時間での積分)が心房のサイズとして反映されていると考えますので、慢性的に拡張末期圧が高いと大きくなりやすいといえます。
 
あるエコーの先生が、心房の大きさをみて、正常であれば心エコーの検査はそこで終わっていいといえるくらい、大事ですといっていました。
私も、その通りだと思います。まず、ぱっとエコーを当てて、左房の大きさをみて、少しでも大きいと感じたら何かはあると思いますし、小さければ、正常な可能性が高いのかなと思います。
 
3DエコーやMRI、またはMappingなどであれば3次元的に心房の大きさを測定することは可能ですが、まだ、一般的な方法とは言えません。そのため、実際に心房の大きさを測定するのは、普通の心エコーということになると思います。
 
一番行われているのは、左室長軸断面で、左房後壁側の接線に対する垂線となるように測定するか、Mモードで大動脈の軸と直行するように心房の径を測定する方法だと思います。ただ、これで測定される心房径に関しては、簡便で再現性があるものの一方向の径のみであり、心房の拡張を正確に反映しません。そのため、容積を測定するのが一般的となってきており、基本的には、この測定方法での左房径は参考程度とするのがいいと思います。
 
容積の測定には、Area-Lenght法とBiplaneディスク法があります。両方とも測定方法自体には大きな違いはなく、心尖部からの2腔像と4腔像で心房がしっかりと見えるように調整して(僧帽弁輪から心房が最大にみえるように)、測定します。
Area-Length法は、心房が楕円球であると仮定します。測定の方法としては、4腔像と2腔像のそれぞれで、僧帽弁の弁輪の中心から心房の底までの距離を測定し、その距離の差は5mm以内でなければ、断面がずれていると考えられるので、5mm以内になるように調整します。そのうえで、それぞれ断面で左心耳と肺静脈を除いた面積を測定すると、心房の容積が測定されます。
Biplaneディスク法は、軸に対して、断面が円形である形を想定します(球、回転楕円、瓢箪型など)。測定には、4腔、2腔でそれぞれで、心房の内面を面積を測定するのと同じように縁取っていきます。次に、中心線を設定するように要求されますので、僧帽弁の中心から心房の底を結ぶ直線を設定します。すると、その直線を軸にして、設定した面積の縁取りの線までを直径する20分割した円がディスクとして設定されます。これを4腔と2腔のそれぞれで行うと、それぞれのディスクの面積と軸の距離からある程度自由度の高い形に対応した容積を測定することができます(瓢箪のような形でも断面が円であれば測定可能です)。これは、壁運動に異常をきたした左室の容積の測定でも有用です。
 
Area-Length法、またはBiplaneディスク法で測定された心房容積は体表面積で補正され、35ml/m2以上を左房拡大とするとされています。
ちなみに、心房の測定の際には、個人的には2腔像から先に描出したほうが、正確に測定できるように思います。
 
このように左房容積を測定することで、左室の拡張末期圧の時間積分値を測定できると考え、拡張機能の指標と考えられています。

右心機能評価(2)

エコーに関しては、アメリカの超音波学会のガイドラインを参考にします。
the American Society of Echocardiography
Recommendations for Cardiac Chamber Quantification by Echocardiography in Adults: An Update from the American Society of Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging​
www.asecho.org/guidelines

 
右心機能は、複数のモダリティで評価されます。
その中で簡便で繰り返しできることもあり、一般的なのは、心エコーでの評価だと思います。
心臓カテーテル検査の右室圧や右房圧と左房圧の比較で右心機能を推定することも重要です。
現時点で、右室では、アミロイドーシスなどは別にして、左室でみられるHFpEFのような小さくて動いているけど、拡張期圧が高いというような病態は確認されていませんので、エコーなどで小さくてよく動いている右室に関してはいい右心と思っていいのではないでしょうか。
 
心エコーでの評価では、まずみるのは大きさです。機能評価は、左室と同じで、正常は小さくて、コンパクトに元気に動いていることが重要ですので、そうではないことを確認していくということになります。
心エコーでの大きさの測定に関して、複数の測定方法が示されていますが、一番簡便なのは、4腔像を描出して、右室がきれいに見えるように調整して、拡張末期の三尖弁輪レベルでの右室径(RVD1)と、右室の心尖部と三尖弁レベル(RVD1)のちょうど真ん中の径(RVD2)を測定するということになります。
他にも、大動脈弁の短軸でみえる流出路を測定したりすることもありますが、個人的には、4腔像の右室中心像による測定をお勧めします。
さらに4腔像で右室の面積を測定することもありますが、これをするときには、拡張末期と収縮末期をそれぞれ測定して、FAC(fractional area change)を測定するといいと思います。
一般的に右室に焦点を当てた心尖部四腔像(RV-focused apical four chamber view)で、基部(RVD1)が 41mm 以上、中部(RVD2)が 35mm以上あると右室拡大が示唆されるとなっています。
 
右室腔サイズの正常値   指標 平均±標準偏差 (2SDとしたときの正常範囲)
正常範囲右室基部径(mm)   33±4 (25-41)  (RVD1) 
右室中部径(mm)                 27±4 (19-35)  (RVD2)

右室長軸径(mm)                 71±6 (59-83) 
傍胸骨長軸像右室流出路径(mm) 25±2.5 (20-30) 
右室流出路近位部径(mm)   28±3.5 (21-35) 
右室流出路遠位部径(mm)   22±2.5 (17-27) 
右室壁厚(mm)                     3±1 (1-5) 

右室流出路拡張末期面積(cm2)                                      男性 17±3.5 (10-24)       女性 14±3 (8-20) 
右室拡張末期面積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 8.8±1.9 (5-12.6)     女性 8.0±1.75 (4.5-11.5) 
右室収縮末期面積(cm2)                                                男性 9±3 (3-15)              女性 7±2  (3-11) 
右室収縮末期面積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 4.7±1.35 (2.0-7.4)  女性 4.0±1.2 (1.6-6.4) 
右室拡張末期容積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 61±13 (35-87)        女性 53±10.5 (32-74) 
右室収縮末期容積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 27±8.5 (10-44)       女性 22±7  (8-36) 

 

 
大きさをみて、測定した後は、三尖弁輪の筋肉の動きをMモードとTissue doppler modeで評価します。時に、いわゆるTEI indexや拡張機能の評価として三尖弁の通過速度を計測することもあります(私はやったことないですが)。
 
さらに、FAC(fractional area change)を評価します。これらは主に右室の収縮機能異常をみるとされていますが、右室の拡張機能障害があるのかどうかはわかりませんので、ざっくりと右室機能でいいとも思います。
 
まず、TAPSEです。三尖弁輪収縮期移動距離(Tricuspid annular plane systolic excursion, TAPSE)といいます。
右室の大きさを測定したのと同じ心尖部4腔像を右室中心に少し調整して、三尖弁輪の側壁の弁輪にくっついている部分で、よく動いている筋肉の部分を含むようにMモードのガイドビーコンを出します。すると、その部分が波打つように描出されます。まるで、左室長軸のMモードの左室の後壁のような動きを見せます。その一番谷の深いところと山の高いところの差を測定します。コツではないですが、一番大きな差となるように弁輪の筋肉が動いている軸とガイドビーコンの軸を合わせる必要はあります。
TAPSE 平均±標準偏差 (2SDとしたときの正常範囲) 
24±3.5 <17 (mm)
となっていて、17mm未満なら右室機能障害の可能性が示唆されます。ただ、20を超えることは少ないように思いますが、私の経験が少ないのかもしれません。個人的には、10を十分に上回っていれば、悪くはないのではないかな、15を上回っていれば、まぁ大丈夫だろうという感覚です。
 
つぎに、TAPSEに続いて、同じ4腔像で、組織ドプラーに変更して、三尖弁の付け根の筋肉の部分にカーソルをすこし範囲を広くして、あてます。
すると、収縮期の波であるs'を測定することができます。
S' >= 9.5 (cm/sec)
であり、9.5未満は機能低下の可能性が示唆されます。
私の肌感覚では、おおむね10以上であれば、正常で、7-10はグレーゾーンでおそらく問題ない時もあるし、ある時もある。7以下はきっと悪くて、5以下は絶対に悪いという感じです。
 
最後に、FACです。FAC(fractional area change)といいます。
これも基本的な描出断面は、4腔像の右室中心となります。
この像で、拡張末期と収縮末期の面積をそれぞれ測定して、比を出すだけです。
左室であれば、径を計るだけで容積の概算と左室駆出率がでますが、これは左室が回転楕円(ラグビーボール)を切ったものという前提がありますので成立しますが、右室は三日月のような形をしているので、このようなことはできません。そのため、ある断面を決めてその断面の拡張期と収縮期の比率を2次元で出して、比較するしかないのでそうしているという指標になります。
RV fractional area change (%) 49±7 <35
ということで、35%以下なら機能低下がしさせれるということになります。
正直、あまりFACを計測したことがないので、肌感覚はありません。だいたいは、RVD2とTAPSE、s’を測定して、右室機能を評価していました。ただ、一番重視していたのは、結局見た目で、他の指標は裏付けというような感じで測定していました。
 
他の指標も併記しておきます。
RIMP (RV index of myocardial performance)という指標があります。日本ではTEI indexというほうが一般かと思います
測定の方法は、拡張期と拡張期の間(つまり等容弛緩✛収縮期+等容収縮の3期間)のうち、2つの等容期の占める割合の指標です。
一般的にはパルスドップラーで測定しますが、組織ドプラーで測定することもあります。
値としては、パルスドプラーで 0.43以上、組織ドプラーで0.54以上であると右室機能障害が示唆されるということになっています。
私自身、ほとんど測定したことがないので、肌感覚的なものや測定のコツなどはありません。
 
 
2Dで形そのものが重症度によって変化する右室の大きさを評価するのは困難ですが、3Dではもちろん評価可能です。
心臓MRIやCT、3D心エコーで一括評価が可能です。
現時点では、機器自体の問題でMRIやCTが現実的だと思います。検査自体に一定の時間や手間がかかるのと、解析も慣れていないとできないと思いますので、現実的にやれるとことやれないところに分かれてしまうかもしれません。
 
心臓カテーテルの右室圧からも右心機能を推測することは可能です。
右心機能が本当にいいなと思った右心カテーテル検査がありました。疾患的には、肺動脈弁化狭窄で、肺動脈弁の下に繊維輪ができていて、そこで高度の狭窄があるという状態です。基本的には先天性疾患で、生まれた時からずっとあるということです。
この患者さんの右心カテーテルの特徴は、まず、右室の拡張期圧が正常で、拡張期の間の上昇もほどんとなく、A波の前後でも圧の上昇はほとんどないという状況であるにもかかわらず、収縮期には高度狭窄があるため、一気に収縮期120mmHg程度まで上昇します。
この方の右心は、エコーでみても左室かと思うようなしっかりした壁厚のある筋肉が収縮しているという状況でした。
生まれつき狭窄があるので、途中でできる肺高血圧とは違い、右室が完全に狭窄に対応して左室のようになりつつ、かつ、圧データをみても、まったく不全心ではなく、両方とも左室という感じでした。
肺高血圧では、基本的には何らかの理由で生まれた後や大人になった後になりますので、もともと薄い低圧系に対応した右室が、途中から圧に対応した右室になるので、途中は低い右室圧で肺高血圧に対応できますが、エコーでは右室が大きくなったり異常をきたしていることが多いです。
 
つまり、平均右房圧(右室拡張末期圧)が高かったり、拡張期にどんどん圧があがっていったり、A波の圧が高かったり、等容収縮期に差し掛かっていて、ほぼ無力化していたり、本来A波である心房収縮は、拡張期圧を不必要に上げずに拡張末期容積を増やす効果があるにもかかわらず、A波の前後で圧が不要に上昇していたり(等容収縮にあることが多い)と、後負荷や前負荷も含めた右室に何らかの異常があると考えられます。
 
 
本来、右心機能が悪いという以上は、右心機能を評価するゴールドスタンダードがあって、それをターゲットにして何を評価し、どのような値に設定すればいいのかを考えていきますが、右心機能が悪いことのゴールドスタンダードがわかりません。
心機能であれば、心不全になるとか運動耐容能が低下しているなどを基準にしていくとかありますが、心不全の人の右心機能をターゲットにしても、結構悪くない、特に安定期には異常がない人が多いかもしれません。少なくとも大きさに関しては、正常範囲の人が一定数います。
拡張機能に関しても、右心の拡張機能の評価は相当難しいと思います。考えれば考えるほど、どんどんどつぼにはまり、答えは出ません。

右心機能評価(1)

以前に総合病院にいた時に、知り合いの別の科の先生から、外来患者さんがえらい息苦しいってゆうてんねんけど、ちょっとみてくれへんと連絡がありました。
 
ポータブルエコーを片手に外来に行き、エコーを当てて、すぐに肺血栓塞栓症かなと言って、やはり肺血栓症だった時に、偉く感心されました。
 
循環器内科ならすぐにわかるけど、他の先生にはわからない。
他の科の先生でも心エコーはみれる先生もいて、特に重症管理をしていると心エコーを自分で当てるという先生は少なからずいます。その先生も、ある程度心エコーに対しての経験はあったものの、やはり、循環器内科とは違いました。少し視野の広さが違って、視野の差にあったのが右心機能でした。
 
息苦しいということで、心機能が悪いのではないかと思うと、内科の先生は左心の動きをみて、大丈夫かどうかを判断しますが、心エコーを当てた時に、左心よりも、右心が大きめで動きが少し悪くなっていると判断しました。
普段見ているからわかるだけですが、これが右心機能評価の基本だと思います。現状では、いくつかの指標がありますが、決定的な指標は存在しません。重要なのは、大きいかどうかや動きがいいかどうかは、正常・異常含めて普段から意識してみていないと評価できないという点です。
つまり、右心機能評価は指標はあるものの、左心より主観的な評価になります。
 
ちなみに、肺血栓の急性期は、右室にとっての後負荷が急激に上がりますので、右室の収縮末期径が増加し、それに伴って右室の拡張末期径も増大します。
左室以上に右室は後負荷に対して、収縮性を増して頑張ることができませんので、そのままRVEFの低下となります。
つまり、ぱっとみると大きくて動いていないということになります。さらに、右室の後負荷が上がっているので、肺高血圧状態となり、右室の収縮期圧も上がります。すると、もともと左室は拡張期から収縮期にかけてずっと断面では円形をとどめますが、収縮期に右室のほうが圧が高くなると、短軸で三日月のような形の右室が円形に近づくため、中隔の曲率が変化し、左室が圧排されて見えます。
これらの所見がパッと目に入ったので、息苦しさの原因は急な肺高血圧、つまり、肺血栓塞栓症だなと思った次第です。
疑ったら診断は比較的簡単で、造影CTで肺血栓(正確には塞栓物)の確認と下肢を中心とした主要な静脈の血栓の残存を調べていきます。また、肺血栓や肺高血圧については、専門ではありませんが、心不全と関係しますので、別で述べていきたいと思っています。