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心不全について私が知るすべてを話すブログ

心房のサイズが拡張機能の指標となる理由

心エコーで、拡張機能の評価や心不全の治療反応評価で測定される指標として、左房容積、E/A、E/e'といわれる項目があります。特に、左房容積は、拡張機能が悪い心不全の指標の一つとして重要視されています。
 
心房は、基本的に組織的な構造は心室と同じです。
ただ、イオンチャンネルの種類や分布が異なっていたりすることで、いわゆる分極の2相が平坦ではなく、全体として三角形ぽくみえたり、カリウムチェンネルでアセチルコリン誘発のカリウムチャンネルがあったりします。また、ミオシンの構造も少し違います(胎児性ミオシン)。
さらに、心耳という、心房にくっついた耳のような空間があります。心房細動になると、この心耳に血栓ができるために、デバイスでこの心耳を埋め立ててやると血栓症が減ります。なぜ心耳があるのかと思うこともありますが、なぜ心耳があるのかというよりは、発生学的にまず心耳があって、その後に心房ができていはます。ANPも主に心耳から出ます。
 
心房が拡大することは、心室の拡張機能の低下の重要な指標となります。
心房が拡大すり理由としてはいくつかあります。
心室と同じように拡大する理由の一つは、収縮機能の低下です。心房細動になると、実質的に心房は収縮しなくなりますので、心房は拡大していきます。
もう一つは、慢性的な圧負荷によっても拡大します。左心室であれば、慢性的な圧負荷は左室の求心性肥大という状況で、小さくてよく動いているけど、実際には、拍出量は小さくて、拡張期圧も非常に高いという状況になります(典型的なHFpEF)。ただ、心房にはこのような現象は基本的には認められておらず、慢性的な圧負荷によって、どんどん拡張していきます。圧に負けて拡張を始めたら、物理学的に拡張するしかありません。どんどんと拡張していきます。拡張すると破裂するのではと思いますが、確かに心房破裂による死亡の報告は、あるにはあります(ROBERT M. Circulation. 1954;10:221–231. Atrial Rupture of the Heart: Report of Case following Atrial Infarction and Summary of 79 Cases Collected from the Literature)。心房破裂の原因の多くは、外傷や腫瘍、心筋梗塞に伴うものですが、弁膜症に伴うものもあるようです。急性かどうかが記載がないものもありますが、一つの原因として僧帽弁狭窄が挙げられており、僧帽弁狭窄は急性におこることはない(腫瘍による狭窄の可能性あるが、それであれば腫瘍に分類されている)ので、慢性経過で心房が大きくなって裂けることはあるにはあると思われます。ちなみに、僧帽弁狭窄は、若い技師さんや医師は結構見逃します。大動脈弁の開放制限は注意していても、僧帽弁の開放制限や、E波やA波が異常に高いことを見逃すことが多いです。これも僧帽弁狭窄症自体がほぼなくなっているという現状があるからだと思います。移民が増えれば、また、状況は変わるのかもしれません。さて、この論文自体はかなり古いのですが、自然発症的なものには大きな変化はないと思います、ただ最近ではデバイス関連の心房破裂ないし、心房からの血液の漏れによる心タンポナーデなどが多いように思います。(主にペースメーカ抜去)
個人的にみたことがある最大の左房は、拡張型心筋症に機能性僧帽弁閉鎖不全が合併していて、エコーでBiplaneディスク法をつかって測定した容積が350mlという大きさでした。測定値にはかなり誤差があると思いますが、相当大きいです。普通の人の心臓そのものよりも大きいように思いました。
 
左房は、容量負荷によっても拡大します。多いのは、心房中隔欠損症や僧帽弁閉鎖不全症になります。
 
心房の場合には、求心性肥大がないため、収縮機能低下、後負荷(=左室拡張期圧±僧帽弁狭窄症)、容量負荷によって、心房が拡大します。
容量負荷は、弁膜症や短絡疾患がないかどうかをみればわかります。
収縮機能に関しては、現時点で評価する指標はありません。
ということで、心房が大きいということは、他に原因がないのであれば、後負荷の増大が原因ということになりやすくなります(収縮機能障害を評価できないため)。
心房も心室もある程度は一時的に大きくなったり元に戻ったりしますので、心不全でも基本的には代償されていて、容量と圧が適正化された状態で測定された値が、評価するための測定値ということになります。この慢性安定状態での左房に後負荷として影響を与えるのが、心房収縮の抵抗となるA波に対する圧であり、おおよそ拡張末期圧といえます。つまり、拡張末期圧の時間的な積み重ねの圧(時間での積分)が心房のサイズとして反映されていると考えますので、慢性的に拡張末期圧が高いと大きくなりやすいといえます。
 
あるエコーの先生が、心房の大きさをみて、正常であれば心エコーの検査はそこで終わっていいといえるくらい、大事ですといっていました。
私も、その通りだと思います。まず、ぱっとエコーを当てて、左房の大きさをみて、少しでも大きいと感じたら何かはあると思いますし、小さければ、正常な可能性が高いのかなと思います。
 
3DエコーやMRI、またはMappingなどであれば3次元的に心房の大きさを測定することは可能ですが、まだ、一般的な方法とは言えません。そのため、実際に心房の大きさを測定するのは、普通の心エコーということになると思います。
 
一番行われているのは、左室長軸断面で、左房後壁側の接線に対する垂線となるように測定するか、Mモードで大動脈の軸と直行するように心房の径を測定する方法だと思います。ただ、これで測定される心房径に関しては、簡便で再現性があるものの一方向の径のみであり、心房の拡張を正確に反映しません。そのため、容積を測定するのが一般的となってきており、基本的には、この測定方法での左房径は参考程度とするのがいいと思います。
 
容積の測定には、Area-Lenght法とBiplaneディスク法があります。両方とも測定方法自体には大きな違いはなく、心尖部からの2腔像と4腔像で心房がしっかりと見えるように調整して(僧帽弁輪から心房が最大にみえるように)、測定します。
Area-Length法は、心房が楕円球であると仮定します。測定の方法としては、4腔像と2腔像のそれぞれで、僧帽弁の弁輪の中心から心房の底までの距離を測定し、その距離の差は5mm以内でなければ、断面がずれていると考えられるので、5mm以内になるように調整します。そのうえで、それぞれ断面で左心耳と肺静脈を除いた面積を測定すると、心房の容積が測定されます。
Biplaneディスク法は、軸に対して、断面が円形である形を想定します(球、回転楕円、瓢箪型など)。測定には、4腔、2腔でそれぞれで、心房の内面を面積を測定するのと同じように縁取っていきます。次に、中心線を設定するように要求されますので、僧帽弁の中心から心房の底を結ぶ直線を設定します。すると、その直線を軸にして、設定した面積の縁取りの線までを直径する20分割した円がディスクとして設定されます。これを4腔と2腔のそれぞれで行うと、それぞれのディスクの面積と軸の距離からある程度自由度の高い形に対応した容積を測定することができます(瓢箪のような形でも断面が円であれば測定可能です)。これは、壁運動に異常をきたした左室の容積の測定でも有用です。
 
Area-Length法、またはBiplaneディスク法で測定された心房容積は体表面積で補正され、35ml/m2以上を左房拡大とするとされています。
ちなみに、心房の測定の際には、個人的には2腔像から先に描出したほうが、正確に測定できるように思います。
 
このように左房容積を測定することで、左室の拡張末期圧の時間積分値を測定できると考え、拡張機能の指標と考えられています。

右心機能評価(2)

エコーに関しては、アメリカの超音波学会のガイドラインを参考にします。
the American Society of Echocardiography
Recommendations for Cardiac Chamber Quantification by Echocardiography in Adults: An Update from the American Society of Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging​
www.asecho.org/guidelines

 
右心機能は、複数のモダリティで評価されます。
その中で簡便で繰り返しできることもあり、一般的なのは、心エコーでの評価だと思います。
心臓カテーテル検査の右室圧や右房圧と左房圧の比較で右心機能を推定することも重要です。
現時点で、右室では、アミロイドーシスなどは別にして、左室でみられるHFpEFのような小さくて動いているけど、拡張期圧が高いというような病態は確認されていませんので、エコーなどで小さくてよく動いている右室に関してはいい右心と思っていいのではないでしょうか。
 
心エコーでの評価では、まずみるのは大きさです。機能評価は、左室と同じで、正常は小さくて、コンパクトに元気に動いていることが重要ですので、そうではないことを確認していくということになります。
心エコーでの大きさの測定に関して、複数の測定方法が示されていますが、一番簡便なのは、4腔像を描出して、右室がきれいに見えるように調整して、拡張末期の三尖弁輪レベルでの右室径(RVD1)と、右室の心尖部と三尖弁レベル(RVD1)のちょうど真ん中の径(RVD2)を測定するということになります。
他にも、大動脈弁の短軸でみえる流出路を測定したりすることもありますが、個人的には、4腔像の右室中心像による測定をお勧めします。
さらに4腔像で右室の面積を測定することもありますが、これをするときには、拡張末期と収縮末期をそれぞれ測定して、FAC(fractional area change)を測定するといいと思います。
一般的に右室に焦点を当てた心尖部四腔像(RV-focused apical four chamber view)で、基部(RVD1)が 41mm 以上、中部(RVD2)が 35mm以上あると右室拡大が示唆されるとなっています。
 
右室腔サイズの正常値   指標 平均±標準偏差 (2SDとしたときの正常範囲)
正常範囲右室基部径(mm)   33±4 (25-41)  (RVD1) 
右室中部径(mm)                 27±4 (19-35)  (RVD2)

右室長軸径(mm)                 71±6 (59-83) 
傍胸骨長軸像右室流出路径(mm) 25±2.5 (20-30) 
右室流出路近位部径(mm)   28±3.5 (21-35) 
右室流出路遠位部径(mm)   22±2.5 (17-27) 
右室壁厚(mm)                     3±1 (1-5) 

右室流出路拡張末期面積(cm2)                                      男性 17±3.5 (10-24)       女性 14±3 (8-20) 
右室拡張末期面積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 8.8±1.9 (5-12.6)     女性 8.0±1.75 (4.5-11.5) 
右室収縮末期面積(cm2)                                                男性 9±3 (3-15)              女性 7±2  (3-11) 
右室収縮末期面積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 4.7±1.35 (2.0-7.4)  女性 4.0±1.2 (1.6-6.4) 
右室拡張末期容積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 61±13 (35-87)        女性 53±10.5 (32-74) 
右室収縮末期容積係数(体表面積で標準化)(cm2/m2)    男性 27±8.5 (10-44)       女性 22±7  (8-36) 

 

 
大きさをみて、測定した後は、三尖弁輪の筋肉の動きをMモードとTissue doppler modeで評価します。時に、いわゆるTEI indexや拡張機能の評価として三尖弁の通過速度を計測することもあります(私はやったことないですが)。
 
さらに、FAC(fractional area change)を評価します。これらは主に右室の収縮機能異常をみるとされていますが、右室の拡張機能障害があるのかどうかはわかりませんので、ざっくりと右室機能でいいとも思います。
 
まず、TAPSEです。三尖弁輪収縮期移動距離(Tricuspid annular plane systolic excursion, TAPSE)といいます。
右室の大きさを測定したのと同じ心尖部4腔像を右室中心に少し調整して、三尖弁輪の側壁の弁輪にくっついている部分で、よく動いている筋肉の部分を含むようにMモードのガイドビーコンを出します。すると、その部分が波打つように描出されます。まるで、左室長軸のMモードの左室の後壁のような動きを見せます。その一番谷の深いところと山の高いところの差を測定します。コツではないですが、一番大きな差となるように弁輪の筋肉が動いている軸とガイドビーコンの軸を合わせる必要はあります。
TAPSE 平均±標準偏差 (2SDとしたときの正常範囲) 
24±3.5 <17 (mm)
となっていて、17mm未満なら右室機能障害の可能性が示唆されます。ただ、20を超えることは少ないように思いますが、私の経験が少ないのかもしれません。個人的には、10を十分に上回っていれば、悪くはないのではないかな、15を上回っていれば、まぁ大丈夫だろうという感覚です。
 
つぎに、TAPSEに続いて、同じ4腔像で、組織ドプラーに変更して、三尖弁の付け根の筋肉の部分にカーソルをすこし範囲を広くして、あてます。
すると、収縮期の波であるs'を測定することができます。
S' >= 9.5 (cm/sec)
であり、9.5未満は機能低下の可能性が示唆されます。
私の肌感覚では、おおむね10以上であれば、正常で、7-10はグレーゾーンでおそらく問題ない時もあるし、ある時もある。7以下はきっと悪くて、5以下は絶対に悪いという感じです。
 
最後に、FACです。FAC(fractional area change)といいます。
これも基本的な描出断面は、4腔像の右室中心となります。
この像で、拡張末期と収縮末期の面積をそれぞれ測定して、比を出すだけです。
左室であれば、径を計るだけで容積の概算と左室駆出率がでますが、これは左室が回転楕円(ラグビーボール)を切ったものという前提がありますので成立しますが、右室は三日月のような形をしているので、このようなことはできません。そのため、ある断面を決めてその断面の拡張期と収縮期の比率を2次元で出して、比較するしかないのでそうしているという指標になります。
RV fractional area change (%) 49±7 <35
ということで、35%以下なら機能低下がしさせれるということになります。
正直、あまりFACを計測したことがないので、肌感覚はありません。だいたいは、RVD2とTAPSE、s’を測定して、右室機能を評価していました。ただ、一番重視していたのは、結局見た目で、他の指標は裏付けというような感じで測定していました。
 
他の指標も併記しておきます。
RIMP (RV index of myocardial performance)という指標があります。日本ではTEI indexというほうが一般かと思います
測定の方法は、拡張期と拡張期の間(つまり等容弛緩✛収縮期+等容収縮の3期間)のうち、2つの等容期の占める割合の指標です。
一般的にはパルスドップラーで測定しますが、組織ドプラーで測定することもあります。
値としては、パルスドプラーで 0.43以上、組織ドプラーで0.54以上であると右室機能障害が示唆されるということになっています。
私自身、ほとんど測定したことがないので、肌感覚的なものや測定のコツなどはありません。
 
 
2Dで形そのものが重症度によって変化する右室の大きさを評価するのは困難ですが、3Dではもちろん評価可能です。
心臓MRIやCT、3D心エコーで一括評価が可能です。
現時点では、機器自体の問題でMRIやCTが現実的だと思います。検査自体に一定の時間や手間がかかるのと、解析も慣れていないとできないと思いますので、現実的にやれるとことやれないところに分かれてしまうかもしれません。
 
心臓カテーテルの右室圧からも右心機能を推測することは可能です。
右心機能が本当にいいなと思った右心カテーテル検査がありました。疾患的には、肺動脈弁化狭窄で、肺動脈弁の下に繊維輪ができていて、そこで高度の狭窄があるという状態です。基本的には先天性疾患で、生まれた時からずっとあるということです。
この患者さんの右心カテーテルの特徴は、まず、右室の拡張期圧が正常で、拡張期の間の上昇もほどんとなく、A波の前後でも圧の上昇はほとんどないという状況であるにもかかわらず、収縮期には高度狭窄があるため、一気に収縮期120mmHg程度まで上昇します。
この方の右心は、エコーでみても左室かと思うようなしっかりした壁厚のある筋肉が収縮しているという状況でした。
生まれつき狭窄があるので、途中でできる肺高血圧とは違い、右室が完全に狭窄に対応して左室のようになりつつ、かつ、圧データをみても、まったく不全心ではなく、両方とも左室という感じでした。
肺高血圧では、基本的には何らかの理由で生まれた後や大人になった後になりますので、もともと薄い低圧系に対応した右室が、途中から圧に対応した右室になるので、途中は低い右室圧で肺高血圧に対応できますが、エコーでは右室が大きくなったり異常をきたしていることが多いです。
 
つまり、平均右房圧(右室拡張末期圧)が高かったり、拡張期にどんどん圧があがっていったり、A波の圧が高かったり、等容収縮期に差し掛かっていて、ほぼ無力化していたり、本来A波である心房収縮は、拡張期圧を不必要に上げずに拡張末期容積を増やす効果があるにもかかわらず、A波の前後で圧が不要に上昇していたり(等容収縮にあることが多い)と、後負荷や前負荷も含めた右室に何らかの異常があると考えられます。
 
 
本来、右心機能が悪いという以上は、右心機能を評価するゴールドスタンダードがあって、それをターゲットにして何を評価し、どのような値に設定すればいいのかを考えていきますが、右心機能が悪いことのゴールドスタンダードがわかりません。
心機能であれば、心不全になるとか運動耐容能が低下しているなどを基準にしていくとかありますが、心不全の人の右心機能をターゲットにしても、結構悪くない、特に安定期には異常がない人が多いかもしれません。少なくとも大きさに関しては、正常範囲の人が一定数います。
拡張機能に関しても、右心の拡張機能の評価は相当難しいと思います。考えれば考えるほど、どんどんどつぼにはまり、答えは出ません。

右心機能評価(1)

以前に総合病院にいた時に、知り合いの別の科の先生から、外来患者さんがえらい息苦しいってゆうてんねんけど、ちょっとみてくれへんと連絡がありました。
 
ポータブルエコーを片手に外来に行き、エコーを当てて、すぐに肺血栓塞栓症かなと言って、やはり肺血栓症だった時に、偉く感心されました。
 
循環器内科ならすぐにわかるけど、他の先生にはわからない。
他の科の先生でも心エコーはみれる先生もいて、特に重症管理をしていると心エコーを自分で当てるという先生は少なからずいます。その先生も、ある程度心エコーに対しての経験はあったものの、やはり、循環器内科とは違いました。少し視野の広さが違って、視野の差にあったのが右心機能でした。
 
息苦しいということで、心機能が悪いのではないかと思うと、内科の先生は左心の動きをみて、大丈夫かどうかを判断しますが、心エコーを当てた時に、左心よりも、右心が大きめで動きが少し悪くなっていると判断しました。
普段見ているからわかるだけですが、これが右心機能評価の基本だと思います。現状では、いくつかの指標がありますが、決定的な指標は存在しません。重要なのは、大きいかどうかや動きがいいかどうかは、正常・異常含めて普段から意識してみていないと評価できないという点です。
つまり、右心機能評価は指標はあるものの、左心より主観的な評価になります。
 
ちなみに、肺血栓の急性期は、右室にとっての後負荷が急激に上がりますので、右室の収縮末期径が増加し、それに伴って右室の拡張末期径も増大します。
左室以上に右室は後負荷に対して、収縮性を増して頑張ることができませんので、そのままRVEFの低下となります。
つまり、ぱっとみると大きくて動いていないということになります。さらに、右室の後負荷が上がっているので、肺高血圧状態となり、右室の収縮期圧も上がります。すると、もともと左室は拡張期から収縮期にかけてずっと断面では円形をとどめますが、収縮期に右室のほうが圧が高くなると、短軸で三日月のような形の右室が円形に近づくため、中隔の曲率が変化し、左室が圧排されて見えます。
これらの所見がパッと目に入ったので、息苦しさの原因は急な肺高血圧、つまり、肺血栓塞栓症だなと思った次第です。
疑ったら診断は比較的簡単で、造影CTで肺血栓(正確には塞栓物)の確認と下肢を中心とした主要な静脈の血栓の残存を調べていきます。また、肺血栓や肺高血圧については、専門ではありませんが、心不全と関係しますので、別で述べていきたいと思っています。
 

感染性心内膜炎(3)

感染性心膜炎(IE)の診断が付けば治療と、必要な追加検査、手術の必要性の検討となっていきます。
 
診断については、最近は次世代シークエンサーでRNAなどを特定することができ、血液培養よりも、菌の残骸といいますが、断片といいますか、そのような感じのfragmentしたRNAを検出して診断ができるようになってきているようです。
ただ、これでどの種類の菌に感染しているということはわかるとはおもいますが、薬剤耐性はわからないように思います。同じMSSAというくくりでも、地域や病院間で、微妙に耐性を持っている抗生剤に違いがあったりしますので、やはりきれいに血液培養をとって、グラム染色ならびに細菌培養を行うのは重要だと思います。
 
さて、日本循環器学会(日循)のガイドラインは、睡眠時無呼吸症候群のような結構いまいちなガイドラインもありますが、IEのガイドラインは、かなり秀逸で分かりやすいので、抗生剤についてはダイジェスト版でいいので、日循のガイドラインを参考にしてください。
 
ちなみに、他の学会とかは、ガイドラインなどを無料で見られないところが多いように思います。日循に関しては、論文化できるものは日循のCirculation journalで公開したうえで、すべてのガイドラインを日本語でホームページで無料公開しています。その分の経費の原資となる学会費を払ったりしているのは、我々循環器や心臓外科・小児科ではあるのですが、他の診療科の先生方がフリーでアクセスできるガイドラインをあのような種類無料公開しているのなら、その価値はあるのかなと思います。たぶん、ガイドラインの編集の先生方は、ほぼボランティアか、名前が載りますので、名誉的な部分でされていることと思います。
 
グラム染色で菌が検出できれば、ある程度絞った抗生剤の投与ができますが、まったく検出されない場合には、ある程度広域にいかざるを得ません。
また、元々の自分の弁の時と、手術後の弁では対応に違いがありますので、注意してください。
 
抗生剤の投与の開始と同時に、原因を調べることも重要ですし、IEによる合併症を評価することも必要です。
ガイドラインでは、原因が多分野に及ぶことから、IEチームがどうこうと書かれていますが、そんなチームはないのがデフォルトですし、作ったとしても継続した案件がなければ、自然消滅すると思いますので、IEが常に数人は入院しているというかなり特殊な施設でもなければ、そんなチームは維持できないと思います。そのため、チームがないのはいいのですが、その分、IEの時に行う検査や他科紹介などに関しては、電子カルテ内に文書化して統一しておくなどして、ルール化しておくことは重要かと思います。
 
IEが起こりやすい糖尿病のチェックや維持透析かどうか、ステロイドを使っているかどうかなどは普通にしていればわかりますが、全身のCTによる血管現象、特に感染性動脈瘤のチェックや、脳MRI、そして、歯科受診は必ず行わなければなりません。CTはできれば、造影CTが望まれます。多少薄くても構いませんので、腎機能などと相談しながら造影CTを試みてください。
 
また、これらのどれかが実施できない場合や経食道エコーが十分に評価できない施設では、IEの診療は困難かもしれませんので、高次医療機関にお願いするほうがいいかもしれません。もちろん、社会背景を考慮してですが。
 
脳MRIや血栓塞栓症の評価は手術のタイミングに関わります。
元々疣贅が大きかったり(10mm以上)、可動性が高かったり、僧帽弁の前尖についていたり、原因菌がブドウ球菌や真菌であれば塞栓の可能性は高いといわれていますので、これらの所見はエコーなどで十分慎重に評価する必要があります。
また、必ず内科的治療で行けそうなときでも心臓血管外科の先生には知らせる必要があります。結局、内科医はエコー画像しか見ていないことが多いですが、外科の先生は、手術で直接疣贅をみているので、この違いは大きいです。手術中に見る経食道エコーと実際の疣贅を比較している側からの意見は非常に貴重です。
 
ガイドラインで、疣贅や血栓塞栓症の状態から、準緊急で手術をするかどうかの決め手になるとされています。
・1 回以上の塞栓症が生じ,残存(>10 mm)または増大する疣腫​
・10 mm を超える可動性の疣腫および高度弁機能不全がある自己弁IE
・30 mm を超える非常に大きい孤発性の疣腫 ​
・10 mm を超える可動性の疣腫
以上のような状態であれば、準緊急で手術を考慮する必要があります。
 
また、全身の検査して、脳に血栓塞栓症を起こしている場合には、脳梗塞で、出血がないか微小な出血程度の場合には、再度の塞栓のリスクがありますので、疣贅がよほど安定して、小さくなってきていない限りは、準緊急で手術が必要です。
心不全が悪化したり、多少感染が不安定になったとしても十分にリカバリーは可能ですが、塞栓症だけは、致命傷になります。絶対に、血栓塞栓症を起こさないように対応することが最も重要だと思います。
ただし、脳出血の場合には、ヘパリンなどの問題で心臓の手術自体が困難になりますので、一般的には4週間程度は間をあける必要があるとされていますが、この辺りは様々な状態をみて決める必要があると思います。
 
また、手術を考慮すべき条件がガイドラインで述べられています。
その中で、唯一緊急手術の対象となるのが、急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック​の時となっています。IEで、高度な弁機能不全になるのは、あまりありませんが、腱索が切れたり、大動脈弁の感染による大動脈弁右室シャントなどになると一気に血行動態が崩れるときがあります。
逆に、IEの時の弁破壊は、小さい孔で慎重にみないと見逃してしまうような逆流などの時もあります。逆流の吸い込み血流も小さく、逆流の量としてはサボ度多くないため、カラードプラーも限られた角度でしかみえないということがありますので、慎重にエコーのプロープを動かしながらゆっくりと観察する必要があります。私は、以前4チャンバーから2チャンバーにプロープを動かす途中の2チャンバー寄りのviewでしか確認できない弁破壊によるMRを見逃したことがあります。後尖のmedialの真ん中あたりに穴が開いていて、吸い込みがほぼなく、さっと狭いカラードプラーが吹いていたのを見逃していました。左室長軸などでは部分的にしか見えなかったのかもしれません。なぜ、見逃しに気付いたかというと、翌日か、翌々日に経食道エコーをした先生から連絡があり、その時ははっきりとMRがあり、見返すと私がとっていた動画で一瞬そのカラーが見えたということでした。さらにいうと、静止画でも1枚そのカラーがわかるものがあったとのことでした。油断したつもりはありませんが、IEの時には、どこに孔があるかわからず、孔が小さくカラーが小さいことは十分にあり得ますので、普段のエコーとは違う覚悟を持ってやらなければならぬと思いなおした経験でした。
 
ガイドラインで述べられているIEに対する早期手術についての推奨をまとめました。
心不全​
 緊急:
  急性高度弁機能不全または瘻孔形成による難治性肺水腫・心原性ショック​
 準緊急:
  高度弁機能不全,急速に進行する人工弁周囲逆流による心不全​
難治性感染症​
 準緊急:弁輪部膿瘍,仮性動脈瘤形成,瘻孔形成,増大する疣腫や房室伝導障害の出現​
     適切な抗菌薬開始後も持続する感染(投与開始 2~3 日後の血液培養が陽性,3~ 5 日間以上下熱傾向を​認めない)があり,ほかに感染巣がない​
 状況により準緊急か待機的かが変わるような場合:​
  真菌や高度耐性菌による感染 ​
  抗菌薬抵抗性のブドウ球菌,非 HACEK グラム陰性菌による人工弁IE​
  人工弁IEの再燃 ​
塞栓症予防​
準緊急:
 適切な抗菌薬開始後も​1 回以上の塞栓症が生じ,残存(>10 mm)または増大する疣腫​
 10 mm を超える可動性の疣腫および高度弁機能不全がある自己弁IE
 30 mm を超える非常に大きい孤発性の疣腫 ​
 10 mm を超える可動性の疣腫
脳血管障害の時の手術時期​
 脳塞合併時にも,適応があれば IE 手術を延期すべきではない​
  注)昏睡やヘルニア,脳出血合併例,大きな中枢性病変を除く​
 新規の頭蓋内出血を認めた場合,4 週間は開心術を待機することを提案する​
  注)微小出血を除く

感染性心内膜炎(2)

感染性心内膜炎(IE)の診断は、疑うことから始まります。
人工弁やペースメーカなどの方に呼吸器や消化器感染症状のない発熱などの感染症状があれば、初めから選択肢に入る可能性は高いと思います。しかし、特に弁膜症の指摘のない人が発熱しただけでは、なかなか診断のFirst lineに乗ることは少ないと思います。
First lineには乗らないものの、血液検査やCTなどを一通り行っても感染源がはっきりとしない、ただ、細菌感染ではありそう。さらに、プロカルシトニンなどからは菌血症状態でありそうであれば、鑑別の列に上がってくると思います。
 
IEの診断には、私が医師になる以前からあるDUKE基準が用いられていて、循環器内科医はDUKEに合致するかどうかにより診断を進めていくことになります。
DUKE基準は、最終的な確定診断を、心内膜炎が起きている場所の疣贅や疣腫(末梢に飛んだものでも可)から病原微生物が検出されるか、組織学的に活動性の心内膜炎があることが証明されることとしています。ただし、これはかなり限られた状況での確定診断ですので、実際の臨床に合わせていくつかの基準を組み合わせることで診断とすることにしています。
そのいくつかの基準を、IEに対する特異性から、大基準と小基準に分けたうえで、IEを疑う患者に対して、2つの大基準とそれを補足するような形で小基準を複数組み合わせて診断するような形になっています。
 
大基準はIEの原因となることが多い菌が血液内にいる(菌血症)状態であることが一つで、もう一つが心臓の構造物に感染が起こっていることをエコーを中心とした方法で証明するということになります。
菌血症で、弁に疣贅がついていたりするとIEでしょうという感じです。
 
ガイドラインでは、IEになりやすい菌、血液培養の取り方のような感じで記載がされています。
IEになりやすい菌としては、連鎖球菌や、連鎖球菌から独立した腸球菌、ブドウ球菌があげられます。連鎖球菌に比べてブドウ球菌は弁などの破壊の力が強いため、ブドウ球菌によるIEではほぼ外科手術は不可避であると考え、連鎖球菌の時よりも一層備える必要があります。
また、どのような形で血液培養をとればいいのかも指定されています。持続感染の必要があるとされていて、12時間以上あけて2回陽性か、もしくは3回中3回か、4回中3回陽性で、血液の採取は時間的に最初と最後を1時間あけるように言われています。
抗生剤が投与されているとその抗生剤が効く菌は血液培養では陰性になるので、12時間以上あけて2回陽性の基準に従おうと思うと抗生剤の投与が遅れます。これは、心エコーなどで何かIEを疑う疣贅のようなものがあるけど、IEかな、どうかなというときくらいしかできないと思います。
普通は少しでも早く抗生剤を投与したいと思いますので、できれば、好気と嫌気の2種類セットをまず2か所からとり、さらに1時間程度あけて2か所とって4回とするのが最も現実的かと思います。1時間くらいあれば、初回検体のグラム染色ができている可能性もあるので、投与する抗生剤をグラム染色を参考に調整することができます。
また、カテーテルからの逆血による培養はしてはいけません。カテーテルを入れるときに一緒に取るのはいいと思います。ちなみに、カテーテル感染を疑うときには、カテーテルの逆血も培養検体として評価したほうがいいと思います。
 
心内膜に疣贅があるかどうかは、経胸壁心エコー(TTE)で明らかにあるものに関しても他の弁や部位に疣贅がないとは言えないので、経食道エコー(TEE)をしたほうがいいと思います。もちろん、経胸壁で分からないときには、全例TEEを行わないと除外はできないと考えます。大動脈弁や僧帽弁などだけではなく、TEEでは右心系のペースメーカリードも基本的には心腔内すべて評価可能です。ただ、結構技術というか、慣れのようなものは必要です。私、結構TEE得意でしたけど、ペースメーカリードの診断はやったことがある人しかできないかもしれません。
エコーでは疣贅だけではなく、弁の破壊所見も有意な所見となります。疣贅がはっきりしていなくても、例えば僧帽弁の前尖のど真ん中に穴が開いて逆流が吹いているなどの所見は通常ではありえませんので、今かどうかまではわかりませんが、少なくともIEによりできた異常であることがつよく疑われます。
 
最近IEの感染の有無に関して、PETでの評価の有用性が固まりつつあります。18F-FDG-PETは、心サルコイドーシスの活動性の診断に有効で、比較的循環器になじみのある検査だと思います。心筋は、他の組織よりもブドウ糖の取り込みが多いとはいえ、2前後ですので、感染の時の取り込みとは桁が違うとまではいかないこともあるかもしれませんが、まぁ、不全心筋ではさらに少し高くなるものの鑑別は可能だと思います。唯一活動性のあるサルコイドーシスであれば、感染かサルコイドーシスか難しいかもしれませんが、この状態の合併は相当レアなケースだと思います。
 
 
小基準に関しては、素因、発熱、血管現象、免疫学的現象、微生物学的所見の5項目に分かれています。小項目は、IEでみられる可能性がある症状ではあるが、IE以外でみられることが多い症状・所見ということになります。
素因に関しては、弁膜症や短絡疾患などの何らかの心疾患があったり、菌血症を起こしやすいような静注薬物を常用しているようなものを想定されています。個人的な見解ですが、糖尿病やアトピー性皮膚炎、歯周病治療後は、素因に入れてもいいのではないかと思っています。
血管現象という項目に関しては、疣贅が心臓以外に飛散して血栓塞栓症状を起こしたり、動脈壁に付着して感染性大動脈瘤を起こしたりすることによる所見や症状ということになります。これらは、もちろんIEだけが原因ではないので、小項目の一つということになります。
免疫学的な所見は、あまり見たことはありません。
陰性桿菌などはIEの原因となることは、すくないもの、特に糖尿病では起こりえますので、小項目ということになります。
 
これら大項目と小項目を組み合わせて診断をしていくということになります。
病理学的な診断は、末梢に疣贅が飛んでそれを検査することができたとか、心臓の手術をして、培養・疣贅・心内膿瘍の病理所見を確認すれば最終的な確定診断になりますが、実際に、内科的な治療をするための診断は臨床基準に従うと思います。
臨床基準は、(1) 大基準2つ,または (2) 大基準1つおよび小基準3つ,または (3) 小基準5つ で、確定診断ができます。
また、確定診断まではいかないものの、可能性が高いとする状態としては、 (1) 大基準1つおよび小基準1つ,または (2) 小基準3つ を満たすということになります。
また、否定的な状態としても項目が追加されていて、別の診断がついたとか、4日程度の治療で改善したとか、4日以内の抗生剤投与後に手術したら何もなかったなどの時には、IEは否定的だとしてもよいとされています。つまり、4日程度の抗生剤投与で治るものはIEじゃないといいたいようです。
 
 
 
ガイドラインからの抜粋です。
「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」
 
 
[大基準]
 ● IEを裏づける血液培養陽性 
 ◇2回の血液培養でIEに典型的な以下の病原微生物のいずれかが認められた場合 
 • Streptococcus viridans,Streptococcus bovis(Streptococcus gallolyticus),HACEKグループ,​ Staphylococcus aureus,または他に感染巣がない状況での市中感染型Enterococcus 
 ◇血液培養がIEに矛盾しない病原微生物で持続的に陽性
   • 12時間以上間隔をあけて採取した血液検体の培養が2回以上陽性,または
   • 3回の血液培養のすべて,または4回以上施行した血液培養の大半が陽性(最初と最後の採血間 隔が1時間以上あいていること)
 ◇1回の血液培養でもCoxiella burnetiiが検出された場合,または抗I相菌IgG抗体価800倍以上 
 
● 心内膜障害所見 IEの心エコー図所見(人工弁置換術後,IE可能性例,弁輪部膿瘍合併例ではTEEが推奨される. その他の例ではまずTTEを行う.)
   • 弁あるいはその支持組織の上,または逆流ジェット通路,または人工物の上にみられる解剖学的 に説明のできない振動性の心臓内腫瘤,または 
   • 膿瘍,または
   • 人工弁の新たな部分的裂開 新規の弁逆流(既存の雑音の悪化または変化のみでは十分でない)
 
 [小基準]
● 素因:素因となる心疾患または静注薬物常用 
● 発熱:38.0 ˚C以上 
● 血管現象:主要血管塞栓,敗血症性梗塞,感染性動脈瘤,頭蓋内出血,眼球結膜出血,Janeway発疹 
● 免疫学的現象:糸球体腎炎,Osler結節,Roth斑,リウマチ因子 
● 微生物学的所見:血液培養陽性であるが上記の大基準を満たさない場合 (コアグラーゼ陰性ブドウ球菌やIEの原因菌とならない病原微生物が1回のみ検出された場合は除く),またはIEとして矛盾のな い活動性炎症の血清学的証拠
 (Li JS, et al. 2000 6)より)
 
IEの診断基準(修正Duke診断基準) 
【確診】    病理学的基準 (1) 培養,または疣腫,塞栓を起こした疣腫,心内膿瘍の組織検査により病原微生物が検出され ること,または (2) 疣腫や心内膿瘍において組織学的に活動性心内膜炎が証明されること    
臨床的基準 a) (1) 大基準2つ,または (2) 大基準1つおよび小基準3つ,または (3) 小基準5つ 
 
【可能性】 (1) 大基準1つおよび小基準1つ,または (2) 小基準3つ 
 
【否定的】 (1) IE症状を説明する別の確実な診断,または (2) IE症状が4日以内の抗菌薬投与により消退,または (3) 4日以内の抗菌薬投与後の手術時または剖検時にIEの病理学的所見を認めない,または (4) 上記「可能性」基準にあてはまらない

感染性心内膜炎(1)

 
感染性心内膜炎は、心臓の心内膜や弁など構造物、ペースメーカーや人工弁などに細菌感染が起こる病気です。
診断が付けば、まずは、グラム染色などを参考にempiricに治療を行い、感染菌の同定後には、descalationを行って、しっかりと抗生剤で治療しつつ、合併症を評価しながら、必要なタイミングで必要なあれば外科手術などを行っていくことになります。
診断と外科手術のタイミングという2点が大きな問題となると思います。
 
日本循環器学会のガイドラインである「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」が非常に参考になりますので、こちらに私の経験と私見を加えながらお話ししていきたいと思います。
 
感染性心内膜炎は、疑うという点が最も難しいと思います。人工弁手術後などで循環器がみていれば、疑いやすいかと思いますが、特に弁膜症があるかどうかわからない状態の患者さんが、普通の内科に発熱で入院していて、実は感染性心内膜炎という可能性はあるにはありますが、なかなか感染性心内膜炎を疑うこと自体が難しいと思います。
以前、褥婦さんの左室壁に疣贅がベターとくっついていて、もともとの弁膜症どころか、弁の破壊すらない人の紹介を受けましたが、よく診断できたなぁと心の底から素晴らしいと思ったことがあります。
 
心エコーでの所見が重要なことは、ガイドラインなどに記載されていますが、特に初回の診断で、心内膜炎を除外するかどうかというときには、かならず経食道エコーで評価することが重要です。
大動脈弁など経胸壁心エコーでは見えない粥腫があるということはまれではありません。感染性心内膜炎ではないというときには、経食道エコーでの評価が必要です。
 
 
また、全身に血栓塞栓が飛んでいるかどうかを調べることも重要で、手足などの四肢末端は症状が出るのでいいですが、頭部MRI(出血もみれるT2star含む)と腹部臓器などの造影胸腹部CTを行うことが必要だと思います。
 
リスクとしては、菌が血流に入ることが感染の根本ですの。感染性心内膜炎の原疾患として多いのは、歯科治療、アトピーなどの皮膚炎、糖尿病だと思います。
人工弁の置換術後に、感染のリスクを極力減少させるために、特に予定手術では、糖尿病のコントロールだけでなく、歯科でしっかりと歯周病をみてもらい、後はアトピーなどの皮膚疾患に関してもいろいろと治療や考え方が変わってきているようですので、診療をお願いすることが重要です。

心臓リハビリテーション(14)

施設認定についてお話ししようと思います。
 
心リハ1と、心リハ2に分けられます。
大きな違いは、保険点数の差と、心リハ1が基本的に循環器ないし心臓血管外科の常勤医師が1人必要で、心リハ2では特に必要ではないこと、担当する理学療法士または看護師が心リハ1は2名、心リハ2は1名必要いうことになります。
保険点数は、心リハ1では、20分あたり205点の加算になるのに対して、用件が緩い心リハ2では20分当たり125点の加算になります。
専用の
 
心臓リハビリテーションの施設認定を受けるための条件を、医師、施設、人、建物でみていきます
 
医師に関してです。
心リハ1では、常勤の心リハの経験を有する循環器内科または心臓血管外科の医師が1名以上いて、その診療科を標榜し、その人が専任として心リハに携われることが必要です。また、心リハを行っている時間に、それ以外の医師でもいいので、とにかく、循環器内科または心臓血管外科の医師が心リハをやっている時間に勤務していることが求められます。つまり、常勤の循環器内科または心臓血管外科の医師が一人いれば、専門診療科を標榜していると思いますので、その人を専任にして、心リハの施設認定を受けることは可能です。もちろん、その医師に心リハの経験は必要ですので、心リハ実施施設で心リハをしていたとか、ある一定期間の研修を受けたとかということが、実質的には必要となります。申請では必要ありませんが。
(私が、10年以上前に申請したときには、心リハの認定はないが、心臓リハビリテーションはガイドラインや循環器病センターの実施内容を参考にして行っていたということで、心リハの経験は十分にありますと言って申請を行いました)
また、常勤がいなくても、週に24時間以上勤務している非常勤医師が2名以上いれば、併せて常勤相当ということで、心リハ1での申請が可能です。もちろん、2名の非常勤医師は心リハの経験が必要で、リハ実施時にはどちらかが勤務していることが条件になります。
また、少なくとも1名以上の循環器内科または心臓血管外科の医師が急変対応が可能ということになります。10年以上前のことですが、ある地方の厚生局に聞いたときには、外来はすぐに動けるからOKだけど、カテーテルとか手術はすぐに抜けれないからダメといわれました。もちろん、2人でもいい手術(特にカテーテル)に、3人・4人目でエクストラ状態で入っているとかはいいかと思います。要は、実施しているときの心リハ担当医が、CCU当番やカテや手術の当番でなければいいということです。心リハしている現場に医師がいる必要はありません。リハ当番を決めておいて、連絡があれば、すぐに駆けつけられればOKです。
 
心リハ2の医師要件に関しては結構緩くて、心リハを実施する時間に心リハの経験がある医師が勤務していればいいということになっています。循環器内科または心臓血管外科の医師でなくても、心リハの経験がある医師であればいいとなっていますので、かなり緩めです。急変時の対応に関しても、心リハ1のようにその医師が動ける必要があるなどの記載はありません。
 
 
次に、理学療法士及び看護師に関する要件です。
心リハ1では、常勤理学療法士と常勤看護師が、併せて2名以上必要です。理学療法士2名でも、看護師2名でも、1名ずつでもOKです。
ただし、そのうち一人は専従といって、他の脳血管などのリハビリに関して、実施するための登録などはできません。
多いのは、理学療法士か看護師の合わせて1か2名を専従登録して、この人をメインにして心リハを行っていき、原則心リハだけを行うようにします。そのほかの理学療法士や外来・循環器病棟を中心にした看護師を専任の登録にして、専従2名か、規模に応じて専任1名以上で心リハ行っていくことが多いと思います。特に看護職に関しては、もちろん心リハ以外の通常業務は心リハを行っていない時間はできますし、心リハを行っていない日・時間(ここの「・」が「または」か「かつ」かは各厚生局に聞いてください)であれば、他のリハを行うことも可能とされていますが、もちろん一人当たりのリハのできる単位数には上限があり、大抵は心リハだけで上限を迎えることが多いかと思います。
 
専任に関しては、ADL維持向上等体制加算、回復期リハビリテーション病棟入院料及び地域包括ケア病棟入院料を算定する病棟並びに地域包括ケア入院医療管理料を算定する病室を有する病棟の配置従事者との兼任はできませんので、通常の循環器病棟か内科病棟になると思います。ただ、心リハを実施しない時間帯で、他の脳リハなどの疾患別リハビリテーション、障害児(者)リハビリテーション及びがん患者リハビリテーションに従事することは可能となります。
また、医師と同じように、非常勤の理学療法士か看護師で、3日以上で、併せて24時間以上勤務している2人を合算して1名とすることは可能ですが、この場合は、2名以上のうちの1名までしか認められませんので、やはり専従の常勤1名は絶対に必要になります。
 
心リハ2は、常勤の理学療法士や看護師が1名以上専従で勤務ということになります。つまり、医師の要件と合わせると、心リハの経験がある医師(専門はなんでもOK)と専従の理学療法士or看護師が1名いれば、心リハ2は行うことができます。
 
 
次に施設側のスペースに関してです。
これは、「専用の機能訓練室(少なくとも、病院については内法による測定で30平方メートル以上、診療所については内法による測定で20平方メートル以上)を有していること。専用の機能訓練室は、当該療法を実施する時間帯以外の時間帯において、他の用途に使用することは差し支えない。」とされています。このあたりは、施設の図面が必要ですので、病院や診療所の図面で、心リハ用にこの30m2のスペースを取り出すことが必要になります。ちなみに、分割していてもいいようです。(2階で15m2と3階で15m2で合わせて30m2のような感じ)
また、心リハをしていない時間は他のリハに使用してもいいですが、他のリハと同じ時間にする場合には(多くの病院は多少なりとも同時にすると思います)、それぞれのリハに対して申請の面積が必要になります。複数人で同時にいろんなリハビリをするような病院は、別々にとっておいた方がいいと思います。
 
専用の機能訓練室には、緊急時に備えての設備も必要になります。
(ア) : 酸素供給装置​
(イ) : 除細動器​
(ウ) : 心電図モニター装置​
(エ) : トレッドミル又はエルゴメータ​
(オ) : 血圧計​
(カ) : 救急カート​
酸素供給に関しては、酸素ボンベでもOKで、除細動器はAEDでもOKです。
エルゴ―メータは、市販の安いやつでも全然OKで、大事なのは、負荷を選択できて、心電図と血圧を測定しながら安全に行えるかどうかということになります。
また、救急カートに関しては、具体的に規定はありませんが、心肺停止が起こった時に十分に対応できる薬剤と気管挿管などの機材が必要だと思います。
また、施設内に運動負荷試験の装置があることも条件となりますが、施設内の検査室にあればOKということになります。
 
その他の基準としては、
△リハビリテーションに関する記録(医師の指示、運動処方、実施時間、訓練内容、担当者等)は患者ごとに一元的に保管され、常に医療従事者により閲覧が可能であること。
 →電子カルテに一元管理されているといいと思いますし、通常のカルテであれば、心リハ用のカルテを作ったほうが、入院から外来リハへの移行がスムースに行くと思います。
△定期的に担当の多職種が参加するカンファレンスが開催されていること。​
 →私は、常に週に1回のカンファを行っていました。医師と専従の理学療法士ないし看護師は絶対に参加し、できるだけ、栄養士さんや薬剤師さんにも参加してもらうようにお願いしていました。
△届出保険医療機関又は連携する別の保険医療機関(循環器科又は心臓血管外科を標榜するものに限る。以下この項において同じ。)において、緊急手術や、緊急の血管造影検査を行うことができる体制が確保されていること。​
△届出保険医療機関又は連携する別の保険医療機関において、救命救急入院料又は特定集中治療室管理料の届出がされており、当該治療室が心大血管疾患リハビリテーションの実施上生じた患者の緊急事態に使用できること。
 →カテなどができる施設であればいいですが、できない施設であれば、リハをする旨を近隣のカテなどができる高次機能病院に伝えて、施設間で急変時の対応を依頼する必要があると考えますが、この対応をしたことはないので、具体的な手続きに関してはわかりません。すいません。
 
おおよそ以上が心リハの認定になります。
 
常勤の循環器内科または心臓血管外科の医師が1名以上いれば、後は理学療法士や看護師しだいで心リハ1の取得は可能だと思います。また、病院だけでなく診療所でも可能です。
心リハは、最も日常生活に必要な労作(運動)を中心に介入することになりますので、積極的に認定をとって行っていくことが望まれます。
 
また、現時点では、医師も理学療法士も看護師も、リハ学会の認定の指導士などである必要はありません。しかし、学会からは認定指導士であることが望まれるというような発言があります。
 
個人的には、このような動きには反対です。学会は、あくまで学術集会を行ったり、ガイドラインを作ったりする学問的な集まりであり、保険診療に必要な資格認定をおこうのは、既得権益を作るだけで、好ましいことではないと思います。
学会での研修や試験など確認程度のものでしかありません。そのようなものを資格とするのであれば、学会は責任をもって、立ち上げをしようとしている施設に無償で人を派遣し、安全で有効な心リハが行えるような状態になるように導くべきではないでしょうか。