心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

最近タイトルでときめいた論文

Baroreflex Activation Therapy in Patients With Heart Failure With Reduced Ejection Fraction
Michael R. Zile, JoAnn Lindenfeld, Fred A. Weaver, Faiez Zannad, Elizabeth Galle, Tyson Rogers and William T. Abraham. Journal of the American College of Cardiology
Volume 76, Issue 1, July 2020

 

Cardiac Energetics in Patients With Aortic Stenosis and Preserved Versus Reduced Ejection Fraction
Mark A. Peterzan, William T. Clarke, Craig A. Lygate, Hannah A. Lake, Justin Y.C. Lau, Jack J. Miller, Errin Johnson, Jennifer J. Rayner, Moritz J. Hundertmark, Rana Sayeed, Mario Petrou, George Krasopoulos, Vivek Srivastava, Stefan Neubauer, Christopher T. Rodgers, Oliver J. Rider. Circulation. 2020;141:1971–1985

 


JACCとCirculationに掲載された2つの論文です。
この2つでドキドキできたら、基本的にこちら側の世界の人間だと思います。

 

心不全を、不全心の制御の不全ととらえたときに行き着くのが自律神経だと思います。そして、おそらく交感神経の求心路を抑えることと、副交感神経が適切に働いてもらうことが重要なのだと思っています。
正直自律神経に関して、私はよくわかりません。
交感神経は、心不全の急性増悪にかかわるだけでなく、もちろん慢性心不全の進行などにもかかわる重要な因子で、交感神経遮断薬に関しても、交感神経に直接は作用しない心拍数を落とすだけのイバブラジンでも有効で、アテノロールでもある程度有効だけれども、カルベジロールやメトプロロールはさらに有効性が増す、しかし一転心房細動ではその有効性は、消失ないし著減する。
迷走神経を刺激することは、よさそうだけれども機序がやはりわかりません。洞調律で迷走神経とくると少量のジギタリスということで、少量であれば、少なくとも心不全の増悪による再入院は減ります(DIGI study)が、これも心房細動ではおそらく用量にかかわらず予後を悪化させるので使ってはいけないということになります。
もちろん、型通りに、RVLMやアストロサイト、中枢RAS系などの知識もありますが、やはりよくわかりません。

 


Energeticsという単語もドキドキします。こちらの方がどちらかというとドキドキします。
心臓の細胞レベルでの機能をみるのに、CK,ATPなどが測定されます。心筋では大量のATPが産生されますが、ミトコンドリアの周辺にいっぱいあっても仕方ないので、ミトコンドリアの周辺から素早くATPを運ぶためにクレアチンとくっついてホスホクレアチンシャトルという仕組みを使って輸送する機能があります。これの機能が保持されているかどうかで心筋の細胞レベルでの機能評価ができるとされています。
これを測定するのに、ホスホクレアチニン/ATPの比をとって、どれだけリン酸化されているかを調べたり、触媒であるCKの活性や量を測定したり、MRspetroscopyでホスホクレアチニンシャトルの輸送能力をスペクトラムで評価したりします。
この論文は、ASのmoderate,severeを、reduce EF、preserved EFで比較していますが、よくある細かく測定すると心機能低下の兆候はかなり初期からありますよという結論なのですが、この測定項目にドキドキします。