Matthew Griffin, Veena S. Rao, Juan Ivey-Miranda, James Fleming, Devin Mahoney, Christopher Maulion, Nisha Suda, Krishmita Siwakoti, Tariq Ahmad, Daniel Jacoby, Ralph Riello, Lavanya Bellumkonda, Zachary Cox, Sean Collins, Sangchoon Jeon, Jeffrey M. Turner, F. Perry Wilson, Javed Butler, Silvio E. Inzucchi, Jeffrey M. Testani.
Empagliflozin in Heart Failure Diuretic and Cardiorenal Effects
Circulation. 2020;142:1028–1039
要は、エンパグリフロジンを服用すると、体重が減少するので、それが心不全の急性増悪を減らしている要因だということだと思います。
そうなんだろうと思います。
上の図は、EMPA-REG OUTCOMEというStudyの中のサブ解析で、エンパグリフロジンを服用すると心不全の発生が低下するという最初の報告です。
この発表から、ケトンが上昇することで心筋代謝が良くなるので、などといろいろと仮説がでました。実証的にはそうなんだろうとは思いますし、理論的にも間違いではないんだろうと思います。
しかし、差が出始めるのが、早いんです。ほぼ服用後から差が出始めています。これは純粋に、利尿効果で説明するのがしっくりくると思っていました。
私は、以前心不全患者の尿生化学検査をつぶさに検討していました。ざっくりと
ナトリウム利尿薬を服用すると、尿中Na, Clは上昇
サムスカは、尿中Na,Clは不変
という状況で、
SGLT2は、尿中Na,Clは若干上昇する
という結果でした。
全部利尿薬なので、尿量が増えた分Na,Clの排泄量自体は増えるのですが、SGLT2は利尿作用とナトリウム排泄作用が若干あることが判明していました。
名古屋市立大学の元教授の木村玄次郎先生によれば、浸透圧利尿薬は、もともと腎臓の緻密班のCl受容体を通過する尿細管内Cl濃度を下げるため、Na,Cl吸収を阻害するとの結果を示されております。
結局、SGLT2阻害薬は、すこしの利尿作用が心不全の増悪の発生を抑制したのだろうと思います。
電解質を変えずに、利尿作用をもたらせば、短期的な心不全の発生は減らせるのだろうと思います。
中・長期的には、心筋代謝なども関わってくるのかもしれません。