利尿薬の作用点という視点で見ていくと、尿細管には後2つの部位があります。
遠位尿細管と集合管です。
遠位尿細管には、ナトリウムとクロールイオンを吸収するNaCl共輸送体があります。これが、かの有名なサイアザイド系利尿薬の作用点です。
遠位尿細管の役割は、低張となった尿を等張に戻すことにあります。
尿の浸透圧はナトリウムだけでは決まらないこともあり、低張が等張になる過程でも、この部分ではナトリウムの再吸収が水の再吸収よりも盛んに行われます。そのため、この部分をブロックすると、ナトリウムの排出が有意になり、低ナトリウム血症となることがあります。ちなみに、ループは水もよく排出するため、あまり基本的に低ナトリウム血症にはなりにくいとされています。
サイアザイド系利尿薬には、良好な降圧作用があり、降圧薬としては、特殊な状態でなければ、まず投与する薬剤としては、もっとも優れているといえます。
心不全そのものの治療をするには、若干利尿作用としては弱いことがあり、基本的にはループ系利尿薬やトルバプタンとの併用ということが多いかと思います。サイアザイド系利尿薬の使用時のコツは、最小容量しか使用しないことと、低ナトリウム時にはすぐに中止するということくらいです。
次にあるのが、皮質集合管にある上皮性ナトリウムチャンネル(ENac)です。これは、ナトリウムを中心に再吸収しますが、このレベルにまでナトリウムがある程度の濃度でくると、このチャンネルが働き、ナトリウムを再吸収する代わりにカリウムや水素イオンを放出します。そのため、このレベルまでの利尿薬では低カリウム血症となりやすいといえます。
さら言えば、低カリウム血症にならないSGLT2阻害薬は、このレベルでのナトリウム濃度は高くない、やはりナトリウム利尿ではないといえます。
このチャンネルを直接阻害するのが、アミロライド系利尿薬です。が、私は使ったことはありません。
もう一つは、このチャンネルを活性化させる重要なホルモンであるアルドステロンの拮抗薬である、抗ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(抗MR薬)です。
アルドステロンは、MRと結合することで、集合間を形成している移行上皮細胞の遺伝子レベルでイオンチャンネルを増やします。この作用をスピロノラクトンやエプレレノンといった抗MR薬が阻害し、ナトリウム利尿効果を発揮します。ちなみにアルドステロンは血管側から移行上皮細胞内へのカリウムの移動も更新させます。このアルドステロンが効いている状態では、ENaCも増えいていて、ナトリウムが再吸収され、さらに細胞内のカリウムが高い状態にあるので、一層尿中にカリウムが出ていきやすい状態となります。つまり、低カリウム血症になりやすい環境を作ります。
また、スピロノラクトンでも時折低ナトリウム血症を認めます。ENaCは腸管でのナトリウムの吸収にも関与しているため、塩分摂取が完全に管理されている状態(入院中など)では、意外に低ナトリウム血症になる人がいますので、注意しましょう。
利尿作用は人によりますが、意外に少しのうっ血を伴う心不全であれば、利尿薬はスピロノラクトンだけでもいけることもあります。
心不全の治療の大きな柱の一つは、電解質を維持することです。その中でも、重要なのが、低ナトリウム、カリウム血症にしないことです。
そのため、これらの薬を投与することは、大規模試験の結果からも併せて必須といえます。
ちなみに、目標は、ナトリウムは絶対に135mEq/L以上、できれば、138mEq/L以上に。カリウムは絶対に4.3mEq/L以上、できるだけ4.5mEq/L以上に。
高カリウムが怖いあまり、低カリウムを許容してはいけません。血清カリウム 5.5mEq/L程度ではなにも起きません。それより、低カリウムに傾く方が、心不全ではよほど不整脈リスクを高めます。