心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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私が考えるサムスカ副作用が起こる最大の危険因子は、軽度の認知症

サムスカは、血行動態的に一番安全な利尿薬だと思います。
ラシックスなども効かなければ尿が出ないだけなので、血管拡張薬に比べれば、全然危険ということはないのですが、サムスカは血行動態的に乱れることが最も少ないと思います。

 

ただ、サムスカ特有の合併症があるのは確かで、それが肝障害と高ナトリウム血症です。


肝障害に関しては、重症な肝障害の注意喚起がなされているので、導入当初は電解質や腎機能を見るのに合わせて、定期的な血液検査でのチェックは必要です。
ただ、個人的にはサムスカによる肝障害を経験したことがないので(100以上は使用したと思います)、特別に多いということはないのではないかと思っていて、パナルジンよりは少なくて、一般的な利尿薬よりは多いということかと思います。


サムスカ投与後は、翌日とか3日後くらいの間隔では採血すると思います。この時に、肝障害もチェックすると思いますが、心不全の急性期に、ばっとAST,ALTが上がっていると循環不全かと焦ると思います。この辺りは、血液検査で腎障害とともに悪化していたり、尿量や尿生化学検査、身体所見から、判断していくしかないかと思います。

 

肝障害は、注意して注意して注意できるものではありませんが、高Na血症は注意次第で極力起こさないようにすることは可能です。
私が、高ナトリウム血症を起こしやすい最も大きな危険因子は認知症だと思っています。私が、高ナトリウム血症にしてしまった、お二人は普通に話している分には気づかない程度の認知症でした。
もちろん、もともとナトリウムが高値の人には投与しません。個人的な基準としては、137mEq/L以下なら積極的に投与を考えて、142mEq/L以下なら投与してもいいかなと思い、143mEq/L以上なら投与しないようにしていました。

治療前のナトリウムが低いから必ずサムスカでもないとも思います。

 

私は、基本的に急性心不全の治療の時にはラシックス10 or 20mgを投与していましたので、それで利尿があればいいですし、低ナトリウム血症でも、少量のラシックスで反応する程度であれば、大抵そのあとナトリウムはいい感じに上昇してくることが多いです。ある程度治療しても低ナトリウム血症であれば、ループ利尿薬を減らしたりして、血清ナトリウム値を上げるという世界的な基準に従って、サムスカ導入して、内服を調整したらいいかなと思います。

 

高ナトリウム血症を起こさないためには、投与量の調整も、特に慣れていない間は重要です。
投与初日には、利尿の状態や血清ナトリウム値などに応じて、そもそも投与するかどうか、投与量はどの程度にするのかを決めていると思います。そこは、3.75mgとか7.5mgとか、いろいろな状況から判断すると思います。

私は2日目が特に注意が必要だと思っています。2日目の朝に自動的に内服させるように処方しておくと、それまでの尿量にかかわらず自動的に内服することになると思います。私は、これを避けるために、特に急性期はサムスカのみ10時内服にして、内服は医師の指示待ちとしていました。つまり、朝の尿量のチェック、バイタルの確認、一通りの診察を行って、血液検査を行っている日には血清ナトリウムをはじめとする検査を確認して、そのうえで、サムスカ継続必要なら服用してもらって、不要なら中止できるようにしていました。
サムスカは、一部の除いて、入院中の急性期のみに服用する薬剤ですので、不要になるまでこのような形で、過剰に利尿があるのにさらに服用するということを避けるようにしていました。

 

また、水分制限はどうしていたかというと、基本的には1200ml程度で一律制限してました。ただ、口渇の訴えがあるときには、尿量を上限に飲水してもらうことは、特例として許可することで、過剰な尿量による高ナトリウム血症を予防していました。


これが、実は問題で、認知症があると口渇にどうも鈍感になるようで、かなり尿量があってもぜんぜん飲水してくれなくて、高Na血症になったことがあります。
認知症とわかっていたら、サムスカは投与しないか、するとしてもかなり少量(1mg程度)から投与するのですが、一人暮らししているし、話していてもぜんぜん認知症という感じがなかったので、3.75mgを投与すると、翌日高Na血症となっていて、改めて検査すると認知症で、口渇を感じないか、口渇を感じても飲水をするという行動に移れないということがわかりました。


こちらが十分に注意し、飲水を制限しながら、場合によっては制限を緩和させるような基準も合わせておくことで、高ナトリウム血症を基本的に防げますが、認知症、特に普通に話している感じでは全く分からなかいくらいの認知症がもっとも危険だなと感じました。