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(再編集)血行動態に基づく血圧の理解

(2024年8月20日更新)

血圧:
 血行動態に基づく血圧の理解 

 

★静的な血圧の理解

 平均血圧は1回拍出量と総末梢血管抵抗で決まるとされる
 ●心拍出量
 心拍出量は、全身が必要とする酸素需要に応じて、血液循環量が逆算的に制御され、血液循環量を心拍数で除することで、1回心拍出量が決定する。
 1回心拍出量は、正常ではおよそ60ml-100ml/beatとされる。
 ●総末梢血管抵抗
 末梢血管抵抗は、動脈が毛細血管へと移行する少し前にある細動脈の収縮の程度によって規定される。ちなみに、細動脈に抵抗がないと動脈の圧が直接毛細血管にかかり、毛細血管の圧が動脈のように上昇し、そのために毛細血管内から組織への水分の移動が起こることで、組織・臓器に浮腫が引き起こされる。細動脈の血管抵抗が組織を浮腫から保護しているともいえる。
 ●平均血圧
 平均血圧は、動脈血圧波形の積分値から求められるのが正確な平均値ではあるが、1回拍出量×総末梢血管抵抗で概算できるとされている。

 

★動的に血圧を理解する
 ●収縮期血圧(一般的には収縮期にみられる血圧の最高値をさす)、拡張期血圧(一般的には拡張期にみられる血圧の最低値をさす)
 

 ●動的な血圧の理解:

 収縮期が始まると血液が心臓から大動脈に出ていきます。この時に、心臓から出た血液の抵抗となるのは、大動脈内にある血液です。心臓から出た血液は、大動脈に既にある血液を押し出すようにして動脈内へと移動します。その際に、血液そのものは、血流方向に進むだけではなく、血管を押し広げる方向にも移動し、血管を押し広げます。この血液の移動で血管内の血液が増加し、それにより起こる血管内圧の上昇が収縮期血圧になります。心臓から出た血液は、前方の血液を押しだし、一部は血管方向に進んで、一部は血管を押し広げる方向に進み、さらに前方に進んだ血液が順々に血液を前方に押し込み、一部が血管を押し広げるという動きが連続的に生じ、血管内を圧が伝播していきます。注意するのは、心臓から出た血液が何の抵抗もなく血管の中を進むのではなく、すでにある血液に作用しながら、全体として血液が移動し、それが連続的に生じることで波として動脈圧が伝播していくということです。
 収縮期に血液が最も多く血管内に貯留し、血管が押し広げられた時の血管内にかかっている圧が最高血圧となります。
 収縮期において、血液が連続的に前方に押し出されて、その移動の伝播が細動脈に到達します。細動脈は抵抗が高く、そこで今まで以上に行き詰ります。この行き詰まりが心臓方向、つまり逆方向への力となり、血液の前方への移動を停止させる力となります。収縮期が終わっても、すぐに血流が止まるのではなく、収縮期に血管を押し広げて動脈に内に余分に貯まった血液は、血管の収縮性によって、血管がもとの大きさに戻ろうとする力を使って、前方へとゆっくりと移動します。これが拡張期にも血液が流れる原動力になります。この血管の収縮性によって押し出された血液の流れと、末梢血管の抵抗によって生じた血液の滞留の力が等しくなった時に血流は停止します。拡張期がある程度の時間があると動脈内の血流は停止し、この時の血圧が本来の拡張期の最低血圧となります。
 拡張期血圧には、2種類あって、脈が遅い場合には十分な拡張期が確保されるため、血流の停止現象が起こりますが、頻脈の場合には、拡張期の血流が止まる前に次の収縮期が来ることによって本来であればもっと低い圧になるが、そうなれない拡張期の最低血圧もあります。


  ●若年性高血圧と高齢者高血圧の違い
 :若年性では、拡張期が高く収縮期は正常高値。高齢者では収縮期が高く、拡張値は正常か、低い傾向になる。
 若年者では、血管弾性が保たれていて、血管が柔らかいので、大した圧の上昇もなく、収縮期に十分動脈内に血液を貯められるため、拡張期に流れる血流量が多いのが特徴です。動脈はやわらかく収縮期でもそれほど血圧は上がりません。ただ、細動脈の抵抗性が上昇していることにより高血圧となっているため、拡張期の血圧が上昇するのが特徴です。つまり、若年者は収縮期血圧は正常高値であるが、拡張期血圧が高いのが特徴です。さらに、動脈硬化という点ではあまり進行しておらず、レニンアンギオテンシンなどの作用で細動脈の抵抗が上がっている、つまり制御の問題で、可逆的な段階である可能性もあります。
 老人では、動脈の血管弾性が低下していて、動脈が固く収縮期に少しの血管内の体積の変化でも圧が過剰に上がってしまうため、収縮期血圧が上がりやすく、かつ、収縮期に血液を動脈内に貯めることができず、拡張期に流れる血流も少なくなるため、拡張期血圧は低くなる傾向になります。

 

 ●臥位でも血管弾性の問題で部位により血圧は異なる
ちなみに、素材は同じでも薄く径が大きいほど弾性は高くなるので、弾性動脈と筋性動脈の違いがなくても、動脈基部の方が収縮期血圧が低く、末梢に行くほど収縮期血圧は高くなります。同じ筋性動脈で同じ血管径であった場合には流れる血液の量によって血圧は変化するため、その動脈の先の臓器の酸素需要や血管の本数(密度)などにも影響を受けることになります。
 拡張期血圧は、この影響がないため、どの部位でもほぼ同じような値になります。


★参考:

 臨床での血圧
 ●マンシェットで測定する血圧
  一般的な血圧計で血圧を測定するときには、まず腕にカフ(腕帯)を巻き付け、カフ内の空気をポンプで圧縮して膨張させます。この圧力は上昇し、最終的には腕の動脈を完全に圧迫して血流を一時的に止める状態になります。次に、カフの圧力をゆっくり減少させていき、動脈内の圧力(血圧)がカフ内の圧力を超えると、血液が再び動脈を通過し始めます。血流が再開し始めたときの動脈を通る血液の流れによって生じる振動が「コロトコフ音」として聴取されます。この音が最初に聞こえる時点の圧力が収縮期血圧(最高血圧)となります。さらにカフの圧力を下げていくと、コロトコフ音は次第に弱まり、最終的には完全に消失します。音が消失する時点の圧力が拡張期血圧(最低血圧)です。