心不全とは(原因・検査・症状・診断まで)
うっ血の治療についてお話しする前に、私自身が自分の受け持ちの心不全の入院患者さんに、毎日診察していた所見についてお話します。もちろん、看護師さんがつけてくれる熱型表や記事内容、心電図モニターを確認したうえで、ベッドサイドにいって食欲はどう…
心臓超音波検査は、心不全の診療の中で非常に重要な位置を占めると同時に様々な心疾患にかかわる検査です。 心不全の基礎となる疾患の推定や、弁膜症の有無、心拍出量の推定などなど、さらに、初診時、急性期、慢性期のすべての状況、あらゆる時期において有…
尿酸(UA, uric acid)は、心不全のバイオマーカーとなります。 あらゆるバイオマーカーにいえることですが、ある疾患であるバイオマーカーが異常値を示すときに、おおむね3つに分けられます。 ① BNPのように、ある疾患(心不全)に対して、生体を保護しようとし…
今回は、クレアチンキナーゼのお話です。 クレアチンキナーゼは、Creatine kinase (CK)といわれることがいいですが、 creatine phosphokinase (CPK) 、 phosphocreatine kinaseといわれることもあります。 心不全と、CKは直接的な関係はありません。どちらか…
心臓特有のバイオマーカーとしては、トロポニンが有用です。 ANPやBNPは心臓にかかる負担によって変化し、トロポニンは心筋細胞に障害が起きた時に増加します。 トロポニンは、以前心臓の弛緩・収縮機構でも述べましたが、心臓の動き・ポンプ機能の制御に重…
心不全と肝臓は、腎臓も実はそうなんですが、どちらかが悪くなるともう一方の臓器も血行動態を介して、または、今のところ明確にはわからない非血行動態的な理由により慢性的な臓器不全をきたすことがあります。 このような関係を、2つの臓器が相互に関係し…
心不全にとって、腎機能は非常に重要な指標であることをお話ししました。 慢性期の腎機能は、糸球体ろ過量の高低やアルブミン尿の有無で予後が変わりますし、急性期にも糸球体ろ過量が悪化するかどうかや一過性でもアルブミン尿がでるかどうかで、予後が変わ…
低灌流の時には、一番初めの変化するのは、おそらく本人の自覚症状だと思います。 例えば、食欲や吐き気、倦怠感など。ただ、これが低灌流であるという裏付けがないとなかなか低灌流の治療には進みにくいものです。裏付けがないと、本当はただの消化器症状か…
尿細管の最終の部分は、集合管になります。 皮質部分の集合管には、ナトリウムの再吸収を行う最後のナトリウムチャンネルである上皮性ナトリウムチャンネルがあります。 そして、その先の集合管には、バソプレシンによって活性化し、水と尿素の再吸収を行う…
利尿薬の作用点という視点で見ていくと、尿細管には後2つの部位があります。 遠位尿細管と集合管です。 遠位尿細管には、ナトリウムとクロールイオンを吸収するNaCl共輸送体があります。これが、かの有名なサイアザイド系利尿薬の作用点です。 遠位尿細管の…
腎臓の尿細管のうち、近位尿細管では、SGLT2(±SGLT1)を阻害することで糖とナトリウムの再吸収を抑制し、結果的に浸透圧利尿が得られます。 また、特に心不全の状態ではアンギオテンシンIIが近位尿細管でナトリウムの再吸収を亢進させているために、これをARB…
尿細管のナトリウムとクロール、カリウムの再吸収に関してのお話を始めていきます。必然的に利尿薬についてもお話しすることになります。 ナトリウムとクロールは水の再吸収に非常に強く関係していますし、特に遠位尿細管を通過するクロールの濃度は、レニン…
糸球体からろ過をされた原尿は、まずは尿細管の中でも近い部分の近位尿細管という部分でほぼすべての糖や尿酸の一部など重要な分子をさまざまな機構をつかって、尿細管から尿細管上皮細胞内に引き込みます。そして、尿細管上皮の逆側にある血管内にそれらを…
原尿が最終尿(普通に排出される尿)になるまでの間に、全身の状態に応じてさまざまに加工されます。 特に心不全で必要な尿細管にかかわる知識は、水、電解質(Na,Cl,K)、尿酸(UA)、尿素窒素(UN)です。 特に水と電解質に関しては、心不全の治療の薬剤である利尿…
心不全における腎臓の血液検査で重要な項目がBUN (Blood urea nitrogen, 血中尿素窒素. sUNで血清尿素窒素ということもある)です。 これは、Cr以上に心不全の予後の推定には有効であるという報告もあります。 BUNをみていくには、腎臓の糸球体以降の尿細管機…
心不全でみられる腎機能障害で利尿薬によっておこるものにも注意が必要かもしれません。 利尿薬によって、糸球体ろ過量の低下がみられることがあります。 一般的には、利尿薬により循環血流量が低下し、そのため腎血流が低下することによって、糸球体ろ過量…
糸球体ろ過量の低下だけではなく、アルブミン尿やたんぱく尿といった所見も心不全患者において、重要な指標になります。 たんぱく尿とは、アルブミンとそれよりも大きなグロブリンが尿中に出ていることになります。たんぱく尿となっているということは、毛細…
急性心不全時の糸球体ろ過量の低下は、うっ血か低潅流により起こります。今回は、急性心不全時に治療に対するクレアチニンの変化が、心不全自体の重症度を示唆するということをお話しします。 慢性心不全で安定している状態(代償期)から、何らかのきっかけや…
心不全の時には、糸球体ろ過量は、変わらないか、うっ血や腎血流の低下に伴い低下します。 血清クレアチニン濃度をみているとその変化をみることができます。 ここで、心不全が慢性的に安定している状態のときと、血行動態的に不安定化する急性増悪という状…
腎機能の最も重要な機能の一つである糸球体ろ過を規定しているものは以下のものです。 1) 腎血流量 2) 糸球体内圧 3) 糸球体ろ過にかかわる糸球体を構成する毛細血管やその周囲の細胞機能 (これが正味の腎機能であると思われる) 心不全になった時に、腎臓へ…
腎機能の最も重要な機能の一つである糸球体ろ過を規定しているものを整理したいと思います。 1) 腎血流量 2) 糸球体内圧 3) 糸球体ろ過にかかわる糸球体を構成する毛細血管やその周囲の細胞機能 (これが正味の腎機能であると思われる) 糸球体ろ過の量は、腎…
糸球体ろ過量をある程度正確に求めるとすると、イヌリンという物質を持続静注することにより求められます。しかし、標準的な方法では、検査前に500mlの飲水が必要など心不全の人には実施が困難ですし、簡単に多くの人に対して行う検査としては不適です。 そ…
腎臓の機能において、糸球体濾過量は非常に重要な指標であり、また、これは心不全においても重要です。 糸球体濾過量は、腎臓の長い毛細血管の毛玉である糸球体において、圧力濾過される血液の血漿の量です。 これを測定する方法についてのお話です。 まず、…
心不全に関係するバイオマーカーとして、腎機能は非常に重要です。 心不全を見るうえで重要な腎機能に関してみていきたいと思います。 心不全という視点で見た時に、腎臓の働きに関しては、2つの重要な働きがあります。 一つは、尿をつくる。もう一つは、ホ…
BNPは、心臓、主に心室に負担がかかった時に、心室の心筋細胞が伸展されることを刺激として、生成、分泌されます。 そのため、心室に負荷がかからない僧帽弁狭窄症などではあまり上がりません。 BNPの生成は、proBNPという紐のついた輪っかのような前駆体が…
ANPやBNPの作用は、細胞の表面についている受容体という突起物にくっつくことで発現されます。 ANPやBNPがくっつく受容体をNPR-A(A型ナトリウム利尿ペプチド受容体, natriuretic peptide type-A receptor)といいます(GC-Aということもあります)。また、NPR-B…
何かの病気の時に変化する血液検査のバイオマーカーというのは、そのものが何か悪さをしていたり、逆に、病気をよくするために上がっていたりと様々です。 心不全の場合には、大きく二つに分かれて、一つは、交感神経刺激やレニン・アンギオテンシン系のよう…
最近発表された2017年改訂版 急性・慢性心不全診療ガイドライン(日本循環器学会 /日本心不全学会合同)にも、BNP(及びNT-proBNP)は、心不全の診療において別格であると記載されているように、診断から治療経過、予後予測などのあらゆるステージにおいて有用…
心疾患に関連する血液検査項目は多岐にわたりますが、臨床で利用できる中で、心臓に何らかの異常があるときにのみ異常値を示すのは、実質的には2種類で、BNP(or NT-proBNP)とトロポニンT(or トロポニンI)です。 最近の報告では、sST2(Soluble suppression of…
ー症例1(実際の症例を基にモデル化しています)ー私が若いころに、呼吸困難で運ばれた若い女性をみたことがあります。 救急隊からのふれこみで、気管支喘息で治療中とのことでしたので、きっと気管支喘息の発作だなと思いました。救急搬送され、病院に到着し…