心不全と肝臓は、腎臓も実はそうなんですが、どちらかが悪くなるともう一方の臓器も血行動態を介して、または、今のところ明確にはわからない非血行動態的な理由により慢性的な臓器不全をきたすことがあります。
このような関係を、2つの臓器が相互に関係して働いているということから、心腎連関、心肝連関、肝腎連関という風にいいます。
心不全でも、右心不全による右房圧の上昇が長きにわたると、肝静脈は常に右房からの高圧を受けるために、徐々に間質の線維が増生し、肝硬変となります。
ウイルス性肝炎からの肝硬変よりは、肝細胞自体の障害は線維化のわりには小さいためか、いわゆる肝機能は保たれることもありますが、最終的には高ビリルビンなどにより、致死的となってしまいます。
心不全の時の腎障害は、腎血流と糸球体内圧の問題で、機械的な補助を使えば、糸球体ろ過量は改善することがほとんどですが、肝臓が悪くなってしまったときには、機械的な補助を使ってもほとんど無効で、血行動態を立て直しても、結局は肝不全のため、亡くなることがほとんどです。
特に先天的な疾患は右房に過度な負担がかかる血行動態となることが多く、また、罹患期間も長いことから肝不全をきたすことが多いです。
肝不全の不可逆的な障害は、現在心移植の適応除外基準です。肝臓の組織の検査が、経静脈的にできるようになったこともあり、必要であれば、肝生検をためらわずに行い、肝硬変にならない段階で必要であれば心移植申請などを行う必要があります。
ちなみに、肝機能とは、タンパクを代謝したり、合成したりする機能であると考えます。
時折、AST、ALTの上昇を肝機能障害といわれることがありますが、間違っています。AST,ALTは肝障害をみているのであって、肝機能を見ているわけではありません。
肝機能を見るときには、凝固にかかわるタンパクの合成する能力を示唆するPTという値をみます。
ただし、PTは、ワーファリンを服用していると、薬効で異常値を示しますので、評価できません。
門脈圧亢進症といって、血栓であったり、原因不明な時もありますが、門脈自体に通過障害が起こり、肝臓は正常なのに門脈の圧が上がるような疾患や、肝硬変となって、門脈が肝臓の問題で通過障害となり、門脈の圧が上がるような疾患があります。
この門脈圧亢進症に合併する疾患として有名なのが、肺高血圧です。ここでは、ぐっとこらえて肺高血圧の細かい話は行いませんが、この門脈圧亢進症になぜ肺高血圧が合併するのかは今のところ明確にはなっていません。
ただ、門脈圧が更新すると、腸間膜静脈が肝臓を通過せずに、本来であれば、門脈に合流してくる左胃静脈などへ逆流して、本来であれば、肝臓で処理されなければならない物質がそのまま体循環を潅流することが原因ではないかといわれています。
本来であれば、腸管から肝臓へすべての血流が流れれば、ある物質はすべて代謝され本来であれば、肺・体循環を流れないとしても、一部シャントして、そのまま肺・体循環に入ってしまうと、その物質の2-3割程度しか、再度腸肝循環には向かわないため、しばらくその物質は肺・体循環をぐるぐると回ることになります。その際に、おそらく肺循環が最も影響を受ける可能性があり、そのため、肺循環に対して血管抵抗を上げるような物質がそのまま肝臓で代謝されずに、肺循環に行ってしまうというのは十分に考えられることです。
また、心腎連関でみられるように、何らかの循環の異常を検知し、それを代償するようなセンサーとサイトカインを調整するような機能を肝臓が持っていたとしたら、腸肝循環の異常をセンスして、何らかのサイトカインで心臓に対して働きかけて、その反応の一部が肺血管抵抗を上がる結果となってしまう可能性もあります。