心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(50-7:心不全に必要な腎臓の知識、急性心不全にともなうクレアチニンの上昇)

 
急性心不全時の糸球体ろ過量の低下は、うっ血か低潅流により起こります。
今回は、急性心不全時に治療に対するクレアチニンの変化が、心不全自体の重症度を示唆するということをお話しします。

  

慢性心不全で安定している状態(代償期)から、何らかのきっかけや自然の経過の中で不安定な状態(非代償期)になってしまう急性増悪といれわれるものを含むさまざまな急性心不全の時にクレアチニンの上昇はよくみられます。
(急性増悪や急性心不全に関しては別項目で述べます)


この時のクレアチニンの上昇に、尿細管からの分泌量が関係ないとしたら、糸球体からのろ過が低下しているということになります。


急性心不全の本質は、心機能の何らかの低下を基礎にして、全身の酸素の需要に対して供給を調整する過程での、拡張末期圧の上昇と、心拍出量が保持できるかどうかということです。

特に右室拡張末期圧は必ず上昇しますので、体静脈圧は上昇し、腎静脈圧も増加します。


おそらくですが、動脈圧の変動に関しては、収縮期血圧は周知のようにある一定の変動の範囲(90-180mmHg)であれば、糸球体内圧は60mmHg程度にコントロールされます。
しかし、静脈圧の上昇に関しては、そのような調整系はないのかもしれません。
理屈的には、静脈圧が上がった時には、輸出細動脈が拡張すれば、糸球体内圧を保つことはできますが、そのような調整系があるかどうかはわかりません。
そのような調整系がなければ、静脈圧の上昇は、そのまま糸球体内圧の出口圧の上昇につながり、糸球体内圧は低下します。


心不全の時の、腎障害は、海外の腎臓関連の学会などが出している急性腎障害の定義を参考に、安定している状態から、クレアチニン 0.3mg/dlの上昇、または、50%以上の増加と定義されることが多いです。
(初回の心不全などは安定している状態がわからないことがほとんどですが)


また、心不全で入院してから48時間以内に、クレアチニンが上昇するかどうかによって、心不全の治療反応性を評価することがあります。

入院してから48時間の時点でクレアチニンが0.3mg/dl以上か50%以上増加することをWorsening renal function(WRF)といいます。日本語では、腎機能悪化となるのかもしれませんが、これはそのまま英語で言うことがほとんどだと思います。


入院してから、腎機能が悪化する例は予後などが悪いと報告されています。
これは、腎機能はクレアチニンで評価されていますが、この時の糸球体ろ過量の低下の原因がうっ血にあるか、低潅流所見にあるかの違いや、入院後の初期治療によるうっ血あ容易に解除されるかどうかが、入院後の48時間の変化に出るのだろうと思います。


通常のうっ血での糸球体ろ過量の低下の場合には、利尿薬などに反応して比較的容易に静脈圧が低下し、糸球体ろ過量の改善がみられ、クレアチニンが下がると想定されます。
しかし、低潅流によって糸球体ろ過量が低下している場合には、低潅流による治療が行われていても、すみやかには血行動態が改善することはなく、48時間でのクレアチニンの改善が見られないと思われます。

また、初期の治療だけではうっ血がとれず、静脈圧も低下しない場合にはクレアチニンは改善しないということになります。


つまり、心不全での入院後の48時間時点でクレアチニンが改善していないといいうことは、低潅流を伴っているか、簡単には下げれな静脈圧となっているかということになりますので、どちらにしても難治性の心不全ということになります。