心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(50-8:心不全に必要な腎臓の知識、心不全に伴うアルブミン尿)

 
 
 
糸球体ろ過量の低下だけではなく、アルブミン尿やたんぱく尿といった所見も心不全患者において、重要な指標になります。


たんぱく尿とは、アルブミンとそれよりも大きなグロブリンが尿中に出ていることになります。たんぱく尿となっているということは、毛細血管すなわち内皮細胞だけの問題ではなく、周囲の細胞を含めた糸球体自体に障害が出ているということになります。
これは、心不全に伴うというよりも腎不全としてとらえたほうが良いかと思われます。

 


アルブミン尿は、アルブミンだけが尿中に漏れ出てていて、他のたんぱくは尿中にはでていないという状態です。(性格は尿細管での分泌があるので、正常レベル以上にはでていないという意味ですが)


 
もともと、アルブミンは、腎臓の毛細血管を構成する内皮細胞の間を抜けることができる大きさです。
しかし、アルブミン自体が電気的に陰性になっているのと、毛細血管に陰性に荷電している構造物があるため、アルブミンと内皮細胞が電気的に反発しあって、ろ過されないような構造になっています。


ただし、正常でも尿細管などにアルブミンを運搬する機構があるため、正常で多少は尿中にアルブミンを認めますが、これが一定の量より多いと、この内皮細胞の電気的なバリアが障害を受けていることが示唆されるということになります。

 

畜尿をして計測されたアルブミンの量を基準にしてはいますが、畜尿自体が困難なため、一回分の尿検査のアルブミン濃度を同じ尿中のクレアチニン濃度で割った値で評価します。

ちなみにクレアチニン濃度で割る理由はクレアチニンの尿中排泄量が1日あたり約1グラムであることによります。

 

 

心不全の原因の一つである、虚血性心疾患は主に心臓の冠動脈の動脈硬化を原因とする疾患です。動脈硬化は、かならず血管の内皮細胞の機能障害を伴います。
また、以前心不全は慢性炎症性疾患であり、それが癌と関係あるのではないかとお話しました。その炎症は内皮機能障害の重要な原因の一つとなります。


つまり、尿中アルブミンは、腎臓の障害というよりも全身の血管の動脈硬化や炎症の存在を表しているバイオマーカーということが言えます。
そのために糸球体ろ過量のように血行動態によって変動することはありませんが、心不全の急性期のような全身の炎症が強くなっているような状態においては、一過性のアルブミン尿がみられたることがありますし、慢性的にみられるようなアルブミン尿は、慢性的な動脈硬化や心不全による炎症の存在を示唆し、アルブミン尿がみられない心不全よりも、病勢が強いことが示唆されます。
今までの研究でも、心不全の患者さんでアルブミン尿がある人は、ない人に比べて、予後などに関して悪いことが報告されています。

 

アルブミン尿は、糸球体ろ過量の変化とはことなり、炎症などによる糸球体の内皮細胞の障害を示しているといえます。