心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて (47-3:胸部レントゲン、肺水腫)

肺水腫は、本来ある肺血管の陰影以外の間質や気管支・肺胞レベルに水が漏れている状態ですので、よほどレントゲンの撮影条件が悪くない限り、しっかりと診断できると思います。
 
また、肺水腫があると、うっ血と違って、ほぼ間違いなく呼吸困難や喘鳴があったり、動脈血酸素濃度が低下していたりしますので、あまり見逃すことはないかと思います。
 
ただ、特に初診の時には、本当に心臓からくる肺水腫か、全身性の疾患からくるレントゲンの肺水腫(敗血症など)か、または、広範な肺炎かなど、同様のレントゲン所見をとる疾患の鑑別に関しては、症状やほかの検査を合わせて評価しなければなりません。
 
ちなみに、喘鳴が出る原因は、気管支の末梢(肺胞に近いレベル)を潅流している領域の血流は左房に戻るためです。気管支動脈から肺静脈に合流して、左房に入るので、左房圧が上昇すると、気管支の末梢の静脈圧が上昇して、肺間質と同様に浮腫が起こります。
そのため、気管支喘息の重症のような喘鳴が起こりますし、レントゲンでは、気管支の周囲の浮腫による陰影がみられます。
気管支が浮腫を起こして、気管支が閉塞してなければ、気管支の中の空気とコントラストがみられ、気管支透亮像という所見がレントゲンでみられます。
 
また、気道の感染を伴っている場合には、本来であれば肺水腫にならない程度の左房圧でも、血管の透過性が上昇していることが多く、他の部位の感染に比較して、肺水腫を起こしやすいとされています。
 
また、肺水腫には、陽圧換気をして、利尿薬を使えばすぐに、症状やレントゲンでの肺水腫像もすぐに改善するような静脈圧だけによる肺水腫と、治療をして、どう考えても左房圧は十分に下がって改善しているはずであるのに、なかなか肺水腫像が消失せず、少しの酸素が必要な程度の呼吸不全がしばらく続く状態の2つの病態があります。
心不全による肺水腫の時には、サイトカインといって、血管の透過性をあげる作用のあるホルモンがあがるとの報告があり、おそらく、肺水腫がしばらく続く場合には、サイトカインの作用により血管の透過性が亢進し、左房圧が低下しても肺水腫がしばらく続くのであろうと考えられます。
心不全治療により左房圧が下がり、その後しばらくして、心不全によるサイトカインの上昇が改善されるにしたがって、徐々に血管の透過性が改善し、それとともに肺水腫像が改善するような病態であろうと推察されます。
 
肺水腫の所見として、いわゆるカーリーラインなどいろいろありますが、今まで意識したことはありません。
実際の臨床では、あまりこだわる必要はないかと思います。
 
 
ちなみに、画像の勉強をするのに一番いいと思うのは、例えば肺水腫であれば、Googleで肺水腫で、画像検索して、出てきた画像を徹底的にみるということがいいのではないでしょうか。
心不全が頻繁に来るような施設であればいいですが、肺水腫は2次救急をやっていないとなかなかこないので、救急をあまり積極的にやっていな施設や、逆に3次救急しかやっていないと心不全による肺水腫はあまりみないので、Googleがいいかと思います。