心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて (50-1:心不全に必要な腎臓の知識、腎臓と糸球体ろ過量)

心不全に関係するバイオマーカーとして、腎機能は非常に重要です。

 
心不全を見るうえで重要な腎機能に関してみていきたいと思います。
 
心不全という視点で見た時に、腎臓の働きに関しては、2つの重要な働きがあります。
一つは、尿をつくる。もう一つは、ホルモンの分泌を行う。ということです。
 
 
まず、尿を作るという機能からみていきたいと思います。
腎臓には、有効循環血流量の20%が還流するといわれています。
 
まず、大動脈から左右の腎動脈に血流が流入し、左右の腎動脈は分岐を繰り返して、最終的に輸入細動脈という動脈になります。
この輸入細動脈は、いったん長い毛細血管になります。
毛細血管は、内皮という薄皮一枚の血管です。
 
その毛細血管には、水分や老廃物を血管外に濾しだせるように、通常の毛細血管よりも大きな穴(正確には内皮細胞同士の間隙)が開いていたいます。そして、毛細血管は、そのまま静脈にならずに、輸出細動脈という動脈として再集合します。
(ここでは酸素交換しないので、静脈血にはなりません)
 
輸出細動脈として、再集合した後に、腎臓の各部位を潅流して、そこで腎臓そのものの酸素交換を行ったり、必要な物質交換を行います。そして、最終的に腎静脈となり、下大静脈に合流します。
 
 
輸入細動脈と輸出細動脈の間にある長い毛細血管は、ぐちゃぐちゃとまとめられていおり、このまとめられた状態のものを糸球体といいます。長い毛糸がまとめられて、毛玉になっているような感じです。
 
この毛細血管からもれでるものは、水分や電解質、クレアチニンなどの分子などであり、この漏れ出てきたものはまとめて、原尿と呼ばれます。原尿は、毛細血管のかたまりである糸球体を大きく包んでいるボーマン嚢といわれる袋状のもの中に貯まり、順次ボーマン嚢の出口から出ていきます。この出口に続く原尿の通り道が尿細管です。
尿細管は徐々に集合して、腎臓中の腎盂という部分となり、腎盂の出口から尿管という尿の通り道が、膀胱までつながっています。
 
 
糸球体を形成している毛細血管の開いている孔は、アルブミンは通れるが、赤血球は通れない大きさです。
ですから、普通に考えると、毛細血管からボーマン嚢へは、赤血球は通れないが、アルブミンは通るはずです。つまり、おしっこの中に、赤血球はないが、アルブミンはあってもいいはずです。しかし、尿の中に一定量以上のアルブミンが含まれている場合には、アルブミン尿といって異常所見となります。
 
これは、なぜかというと、糸球体の毛細血管には、周囲に基底膜、さらにタコ足細胞などの周囲に数種類の非常に重要な細胞があり、それらの糖でできている鎖の糖鎖が電気的に陰性に荷電しており、アルブミンも陰性に荷電していることから、穴の大きさ的には通れるが、電気的に反発を受けて通れない状態になっています。そのため、原尿の中にはアルブミンはないという結果になります。
ただし、内皮細胞には、カベオラといわれるアルブミンの輸送装置があるため、多少は含まれているので、ごく少量のアルブミンが正常でも尿には含まれています。
 
ここで、糸球体でどれだけの原尿が作られるのかというのが、腎機能をあらわす最も重要な指標となります。
 
原尿を作るときに、毛細血管の内側(血管内)から内皮を通って、外側(ボーマン嚢内)へ出ていく原理のことを、化学の用語でろ過になります。
 
ろ過というのは、例えばコーヒーを作るときに、液体とコーヒー豆の粉末を混ぜて(粉末の上に湯をゆっくりとかけること)、濾紙を通して、重力を使って、大きな粉末以外を分離しておいしいコーヒーを作るように、何かのフィルターを用いて、混合液のうちの大きな成分を分離することを言います。
 
また、個体の混ざった液体の間に、半透膜を置いて、一方に圧力をかけると半透膜をすり抜けることができる程度に小さいものは、圧がかかっていないほうへ移動していきます。このように圧力を使って、ろ過をすることを加圧ろ過といいます。
腎臓では、この加圧ろ過のような構造になっていて、毛細血管の中には血管内圧があり、それによりボーマン嚢のほうへ水、電解質、低分子を濾しだします。
そして、それが原尿となります。
 
この原尿をどれだけ作ることができるのかというのが、糸球体ろ過量です。
正確に言うと、どれだけの量の血漿(血液の中の血球を除いた液体成分)をろ過できるのかということですが、濾し出された血漿が原尿ですので、同じことです。
 
英語で、glomerular filtration rate、略してGFRといいます。英語はよくわかりませんが、rateというと率のことで、日本語に直訳すると糸球体ろ過率となりますが、率というと何かに対しての割合ということになりますので、意味が通じません。そのため、直訳ではなく、日本語では量というのが適当です。
 
さて、この糸球体ろ過量が非常に重要なバイオマーカーの一つとなります。