心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて (49-2:BNP, BNPは心不全に対して保護的に作用がある)

何かの病気の時に変化する血液検査のバイオマーカーというのは、そのものが何か悪さをしていたり、逆に、病気をよくするために上がっていたりと様々です。
 
心不全の場合には、大きく二つに分かれて、一つは、交感神経刺激やレニン・アンギオテンシン系のように、悪くなった循環動態に対して結果的にさらに悪くしてしまうもの、もう一つ
は、BNPのように循環動態を改善させる方向に傾けようとするものです。
 
交感神経刺激やレニン・アンギオテンシンは、循環血流量の不足に対して、体液利用を維持・増加させることで循環血流量を維持しようとします。これは、出血性ショックなどに対しては非常に有効な生理的反応となります。おそらく、外傷が多かったであろう昔の人類には非常に有効な手段だったのだろうと思います。
しかし、心臓が不全を起こしているために、循環血流量を減少している心不全では、必要以上の循環血液量は逆にうっ血を増悪させることとなりますので、うっ血の増悪を検知して交感神経やレニン・アンギオテンシンを押さえるような仕組みはないため、うっ血の増悪がおきていても、失活することなく、さらに悪い状態へとスパイラルのように反応が進んでしまいます。これを、vicious cycle (負の連鎖)といいます。
これに対して、BNPは心臓の負荷に反応して分泌され、心臓の負担を軽減するために、心臓Firstで働きます。そのため、心不全の血行動態の特にうっ血の解除に対して、有効に働きます。
 
生理活性は、さまざまま臓器にみられ、腎臓では利尿を促し、動脈や静脈を拡張させることで、後負荷と前負荷を軽減させます。また、中長期的には、心臓の線維化を押さえたり、脂肪細胞から遊離脂肪酸の遊離を増やしたりします。別に薬理学的な面もふまえて述べたいと思います。
また、ANPも同様の作用があります。
そのために、ANPやBNPは治療薬としても上市されており、日本ではANP製剤であるカルペリチドが使用できます。
 
カルペリチドに関しては、のちに述べますが、この薬剤は基本的には心不全の治療で使用するには、かなり限定的な範囲でしか有用性はないものと考えています。
また、重症になればなるほど、血圧の低下作用が前面に出るため、重症心不全の治療中にカルペリチドが原因であろうと思われる血圧の低下とそれによる不安定化を散見します。重症であればあるほど、カルペリチドの使用は慎重に、基本的には使わないほうが安全に行えると思います。利尿が不十分な時には、今はトルバプタンもありますし、ゆっくりと機械的に除水を行う方が安全で、有効です。