心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心不全のすべて (49-3:BNP, BNPの作用)

ANPやBNPの作用は、細胞の表面についている受容体という突起物にくっつくことで発現されます。

ANPやBNPがくっつく受容体をNPR-A(A型ナトリウム利尿ペプチド受容体, natriuretic peptide type-A receptor)といいます(GC-Aということもあります)。また、NPR-Bは、このB型という意味で、CNPがくっつきます。
また、NPR-Cというのは、C型ではなく、クリアランスのC、つまり、くっつくことで代謝される受容体ということになります。(NPR-C, natriuretic peptide clearance receptor)
つまり、ANPとBNPは、NPR-Aという受容体に結合することで様々な臓器に作用を及ぼします。また、NPR-Cにくっつくことで、代謝されて消失します。
 
どのように作用を及ぼすかというと、NPR-Aを細胞表面に出している細胞にANPなり、BNPがくっつくと、受容体は細胞の中に貫通していますので、受容体にリガンド(くっつくものをリガンドといいます。ここではANPとかBNPのこと)がくっつくと、細胞内に刺激が伝わって、細胞内のcGMP(cyclic GMP)という酵素が増えます。この酵素が増えることが、細胞内のさまざまな蛋白のリン酸化といって、蛋白を変化させることで、細胞内の機能が変化します。
つまり、ANPやBNPは、細胞内のcGMPを増やすことでさまざまな作用を示すということです。
 
ちなみに、cAMPというものもあります。これも同じで、交感神経の刺激や、強心薬などは、cAMPを増やすことで細胞内にさまざまな変化をもたらして、心筋細胞の収縮・拡張性を増加させたり、脈を速くしたりします。
 
次に、ANPやBNPが作用する臓器ですが、もちろん、NPR-Aを発現してる臓器ということになります。主に、腎臓、副腎、血管、心臓ということになります。
 
腎臓では、輸入細動脈を弛緩させて、輸出細動脈を相対的に収縮させ、また、メサンギウム細胞を弛緩させることをとおして、糸球体内圧を上昇させます。これによって、糸球体ろ過率が上昇します。また、遠位尿細管に作用することで、遠位尿細管でのナトリウムの再吸収を防ぐことで、ナトリウム利尿を起こさせます。これに加えて心不全では近位尿細管でのナトリウムの再吸収も亢進していますが、これも抑制します。
これらによって、ANPやBNPの作用によって、ナトリウムと水の排泄が増加することで、心不全による過剰な水と塩の貯留を予防、改善することができます。
また、糸球体ろ過の増加と近位尿細管でのナトリウムの再吸収の抑制を通して、レニンの分泌を抑制して、結果的にレニンアルドステロン系を抑制します。
 
 
副腎の皮質にも作用して、ここからのアルドステロンの分泌を抑制します。
おおよそ、ANPやBNPは、レニン・アルドステロン・アルドステロン系と逆のことをする(拮抗する)と思っていいです。
 
 
血管では、血管の平滑筋のミオシン短鎖という部分のリン酸化するか脱リン酸化するかいうことで血管の収縮性をコントロールしているのですが、cGMPが増加すると、ミオシンが脱リン酸化されることで血管平滑筋が弛緩します。
これは、動脈でも静脈でも生じるため、心不全時収縮して前負荷を増やす腹腔内臓器の静脈を弛緩することで心臓への負担を減らし、また、動脈を弛緩することで、心臓の後負荷を軽減させます。
 
NPR-Aがない実験動物では、心臓は線維化と肥大を強く認めたと報告されています。このことから、ANP,BNPは逆に線維化を予防し、肥大を起こさないように働いていることが示唆されます。
 
このように、ANP,BNPは心不全に傾きそうになったときに分泌にされて、全身を心不全になりにくいような方向に作用し、心不全を予防する効果を持っています。