心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(48:血液検査)

心疾患に関連する血液検査項目は多岐にわたりますが、臨床で利用できる中で、心臓に何らかの異常があるときにのみ異常値を示すのは、実質的には2種類で、BNP(or NT-proBNP)とトロポニンT(or トロポニンI)です。
 
最近の報告では、sST2(Soluble suppression of tumorigenesis-2)という炎症と線維化に関連したバイオマーカーも、BNPやトロポニンと併用してリスク評価に有用であるとの報告があります。
新しいバイオマーカーとして認められるには、今ある検査よりも、同じものをより高い精度か、同じ精度でも安価・簡便でみれるか、違うものを評価できるか、併用してよりよい効果があるかだと思います。
具体的には、BNPを既存のバイオマーカーとすると
① 単独で心不全の状態をBNP以上によく評価できる(入院や死亡を予測できる)
② BNPと同程度に心不全の評価をでき、BNPより安定かつ安価に値を評価することができる。
③ BNPとは違う事象を評価することができ、異なる事象を予測することができる。
④ BNPと併用するとさらにより有効に予後を評価できる。
⑤ BNPとは関係なく、新たなバイオマーカーを標的にした治療があり、その治療によりバイオマーカーの値を改善させることで、何らかの予後指標がよくなる。
 
例えば、ANPとBNPは、いろいろと違いはありますが、大きくは心臓に負荷がかかった時に分泌されるという点で共通しており、安定性、診断能の面で、BNPのほうが優れているため、現在心不全ではBNPが中心に評価されています。
 
このsST2の場合には、BNP(心臓にかかる負荷の程度)、トロポニン(心筋細胞の障害の程度)とは異なる事象(炎症と線維化)をみていいるので、④の可能性があります。臨床研究の結果でも併用が有用なようです(Michele Emdin. sST2 Predicts Outcome in Chronic Heart Failure Beyond NT−proBNP and High-Sensitivity Troponin T.JACC Volume 72, Issue 19, November 2018 )。
 
さらにいいのは、何らかの薬剤で、sST2を改善させたときに、心不全の予後もよくなれば、このsST2は一層強い存在となります。
(今まで、炎症や線維化を抑制する薬剤もすべての心不全では無効でも、sST2が高度に異常の心不全に関しては有用な可能性もあります)
 
 
ただし、もし、新たなバイオマーカーと既存のマーカーが違う事象を見ていても、それを引き起こす原因が同じである場合には、二つのマーカーを併用する意味合いはなくなります。
 
血液検査としては、BNP,トロポニンをはじめ、クレアチニンや肝酵素などにも言及していこうと思います。