心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全とは(原因・検査・症状・診断まで)

心不全のすべて(47-4:胸部レントゲン、胸水)

胸水は、少量であれば、超音波のほうがみやすいですが、ある程度の量があるときには、レントゲンのほうが適しています。 何故胸水ができるのかは、以下を参考にしてください。 www.kenkohlive.com 胸水をレントゲンで評価するときには、胸郭と横隔膜のライン…

心不全のすべて (47-3:胸部レントゲン、肺水腫)

肺水腫は、本来ある肺血管の陰影以外の間質や気管支・肺胞レベルに水が漏れている状態ですので、よほどレントゲンの撮影条件が悪くない限り、しっかりと診断できると思います。 また、肺水腫があると、うっ血と違って、ほぼ間違いなく呼吸困難や喘鳴があった…

心不全のすべて(47-2:胸部レントゲン、肺うっ血・肺水腫の撮影の注意)

(2019/2/28 最終更新) 胸部レントゲンでは、肺うっ血と肺水腫、胸水を評価することになります。 安定している状態でとるレントゲンと、不安定な非代償状態でとるレントゲンで評価できる、しなければならない項目はかわります。 また、不安定な状態でとる場合…

心不全のすべて (47-1:胸部レントゲン、心陰影)

心不全の診断を行う際に最も重要なものの一つは、胸部レントゲンです。 症状の経過や身体所見から心不全を疑ったときは、レントゲンは非常に有用な検査となります。 心不全の時に、主に見るのは、心と肺です。 心臓は、まず心不全が疑わしいかどうかを心陰影…

心不全のすべて (46:検査)

心不全に関する検査を、いろいろと述べていこうと思いますが、心不全を診ていて、本当に重症になればなるほど、いろいろな検査よりも、患者さん本人の自覚症状が一番大事だと思いました。 病気を診るのではなく患者を診ろというようなことを言うつもりはあり…

心不全のすべて(45:不全心・不整脈の原因としての筋ジストロフィー)

筋ジストロフィーといって、筋肉自体の遺伝子疾患に伴う拡張型心筋症もしばしばみられます。 筋ジストロフィーは、遺伝子異常による疾患です。 横紋筋や心筋、平滑筋などの筋肉が、壊死をきたし、筋肉不足、筋力低下となり、さまざまな障害をきたす疾患です…

心不全のすべて (44:心房機能と心房性不整脈による心不全)

頻脈性不整脈は、慢性的な心不全の原因にもなりえますし、慢性心不全の急性増悪の原因にもなります。 心房細動や心房粗動、心房頻拍があると拡張型心筋症となることがあります。 機序はよくわかっていません。 頻拍誘発性心不全という概念もありますが、それ…

成長後に発症する拡張型心筋症の原因遺伝子として興味深い研究成果

多くの医師が、参考にしていると思われる情報サイトのひとつで、私もほぼ毎日チェックしているm3というサイトがあります。 <日本最大級>医師向け最新医学・医療情報サイト | m3.com このm3からの情報ですが、筑波大の研究チームが、PRMT1(アルギニンメチル化…

心不全のすべて (43:心不全での初期の診断が重要な理由)

心不全に対して、できるだけ早い時期に一通り原因を検索することは非常に重要なことだと考えています。 それは、心不全そのものに対する根治的な治療が存在しないためです。 そのため、可能な限り、治療可能か、少なくとも悪影響を及ぼしている因子を診断し…

心不全のすべて(42:特発性拡張型心筋症の実際の診断の流れ)

拡張型心筋症の診断は、実際どのように行われていて、どこまで行えばいいのかというのは悩ましいところであると思います。 拡張型心筋症の診断は、形態的に駆出率が低下し、心室が拡大するような変化をとる原因のはっきりとしている疾患を除外することです。…

心不全のすべて、明日より再開します。

体調不良のためしばらく休んでおりました。 ただの風邪ですが、全身の倦怠感と、激しい咳・発熱のため、ただただ安静にしておりました。 数日前に診察したオーストラリアの夫妻に症状が似ており、感染してしまったのかもしれません。 いつもはマスクをつけて…

心不全のすべて(41:特発性拡張型心筋症の概念)

拡張型心筋症は、心エコーなどの画像検査で、心臓が拡大していることと左室の駆出率が低下しいることが必須条件となります。 その中で、特に原因が心筋以外によらないものを、拡張型心筋症といいます。 たとえば、冠動脈疾患などで心機能が悪くなり、左室が…

心不全のすべて(40:収縮性心外膜炎)

心外膜炎は、様々な理由によって起こります。 心外膜が炎症を起こすと、心嚢液が貯留します。急性であれば、心膜の炎症により胸痛が生じたり、心不全による呼吸困難などを訴えます。 今回は、ウイルスや自己免疫性疾患などで慢性的に経過した心外膜炎につい…

心不全のすべて (39:薬による心不全)

別項目でお話ししたように癌自体と心不全が、何らかの関連を持っていて心不全患者自体に発癌率の上昇がみられるようです。 www.kenkohlive.com ただ、以前の心不全と癌というとほぼ抗癌剤による心筋への障害ないし機能低下ということがテーマだったように思…

心不全のすべて(38:ウイルス感染による慢性心筋炎)

今回は、ウイルス感染による慢性心筋炎を中心に述べていきたいと思います。 ウイルスによる慢性心筋炎は、疾患概念として存在するかどうかが確定していない概念です。 正確に言えば、ウイルスが心筋組織に持続的に感染し、それによって心筋に障害が起こり続…

心不全のすべて (37:HIV感染による心不全)

今回は、ウイルス性の心筋炎の中でもHIV (Human Immunodeficiency Virus, ヒト免疫不全ウイルス)による心筋炎をみていきたいと思います。 世界的には、日本と違って、アルコールや非合法麻薬の乱用による心筋症・心不全、また、中南米などではシャーガス病と…

心不全のすべて(36:自己免疫性疾患とホルモン異常)

自己免疫性疾患や内分泌異常に伴う心不全は、ファブリー病やサルコイドーシスなどと違って、心臓だけに起こるタイプはあまりないように思います。 そのため、他の全身の症状をしっかりと検査して、自己抗体といわれる、自分の組織に対する抗体があるかどうか…

心不全のすべて(35:ミトコンドリア病)

ごくまれにみられるミトコンドリア病も、心不全をきっかけに診断されることがあります。 現時点では根本的な治療方法は見つかっていませんが、補酵素のビタミンや、コエンザイムQ10の投与が行われることがあります。 ミトコンドリア病は、ミトコンドリアに異…

心不全のすべて(34:心ファブリー病)

Fabry(ファブリー)病は、稀ではありますが、肥大心の数%程度の割合でみられる可能性もあるといわれています。 以前は、非常にまれと考えられていましたが、現在は一定数みられ、また、酵素補充療法という治療があるため、必ず鑑別に入れなければいけません。…

心不全のすべて(33:心アミロイド―シス)

心不全となる原因として、アミロイドーシスは比較的有名です。 アミロイドーシスは、本来心臓にないアミロイドという線維性のたんぱくが心臓の間質に沈着することから始まります。アミロイド自体は31種類あるようです。 サルコイドーシスと違うところは、心…

心不全のすべて(32:サルコイドーシス)

心不全の原因で、治療可能なもののうち、心臓に限局して起こる可能性のある疾患や心臓の異常が初発で診断がつく疾患がいくつかあります。 今回は、その中からサルコイドーシスを取り上げます。 サルコイドーシスは、厚生労働省の難病に指定されいる比較的珍…

心不全のすべて(31:心不全の原因、治療可能なものと予防可能なもの)

慢性的に経過する心不全の原因を、根本的に治療可能かどうか、または予防可能かどうか、によって分けていきたいと思います。 こういう分類は、特に実際に患者さんを前にする実臨床では非常に重要です。 その患者さんの心不全の原因についてどこまで検査する…

心不全のすべて(30:心不全の原因)

(この項目は、少し悩ましく、修正する可能性がありますので注意ください) そもそもの心不全となる原因をみていきます。慢性心不全の原因です。 上気道感染や一時的な不整脈などの、慢性心不全が不安定になって急性増悪となるような「慢性心不全の非代償化の…

心不全のすべて(29:運動耐容能の指標-3-1, CPX, 心肺運動負荷試験)

④心肺運動負荷試験, CPX (CardioPulmonary eXercise test) この項目で伝えたいのは、とにかくCPXはまずpeak VO2だけでいいということです。 (他も重要ですが、いろいろ考えだすとややこしくてCPXを嫌になるかもしれませんので) まずは、簡単に用語の説明を行…

心不全のすべて(29:運動耐容能の指標-2, 6分間歩行距離)

運動耐容能の検査として、心不全が安定している時に行う客観性の高い検査が、6分間歩行距離やCPXといった検査になります。 ③6分間歩行距離 (6 minute walk distance、6MWD) 歩行という、日常的な動作を用いて、どれだけ心肺機能が運動に対して耐容性があるの…

心不全のすべて(29:運動耐容能の指標-1, NYHAとMets)

心不全の患者の重症度評価として、どれだけの運動をすることができるか(運動耐容能)というのは、非常に重要です。 運動耐容能の評価には、日常生活での話を聴くだけでいいものから、医師が付き添いで行う運動負荷検査までいくつかあります。 ①NYHA(New York …

心不全のすべて(28:運動耐容能:あらゆる心不全に共通する重症度評価)

心不全の症状は、うっ血による症状と低潅流による症状に分けられますが、初めから低潅流の症状が単独で出ることはなく、低潅流症状はそれなりに進行した重症の心不全でみられます。 当初、心不全の症状として出現するのはうっ血の症状が中心です。また、うっ…

心不全のすべて(27:低潅流所見の原因-2)

心不全で心拍出量が低下するのは、左室に異常がある時だけではありません。 右室が悪くなった時にも、もちろん心拍出量が低下します。 右室機能がもともと悪いような病気や、右室含む心筋炎(大概の心筋炎は両室に起こりますが)や心筋梗塞で右室を栄養する血…

心不全のすべて(27:低潅流所見の原因-1)

慢性心不全が進行し、低潅流による症状が出始めると、心不全としてはかなり重症となってきます。 うっ血は拡張機能の障害であると述べました。(もちろん収縮機能も関係はしますが) では低潅流所見をきたすことになる心拍出量の低下はどのような機序により出…

心不全のすべて(26:非代償性心不全と代償性心不全)

(最終更新 2019/2/14) (厚生労働省のワーキンググループ資料) 上の図は、心不全の患者さんがたどるであろう一般的な経過を示した図です。 上の図で、心不全の慢性的な経過を示しているなだらかな下降脚の曲線の中に、いくつか突然急激に下降している赤のラ…