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急性心不全の治療(13):普段の心不全入院患者さんの診察について

うっ血の治療についてお話しする前に、私自身が自分の受け持ちの心不全の入院患者さんに、毎日診察していた所見についてお話します。
もちろん、看護師さんがつけてくれる熱型表や記事内容、心電図モニターを確認したうえで、ベッドサイドにいって食欲はどうか、眠れたか、息苦しくはなかったか、今日の体調は昨日と比べてどうかなどを聞きながら、4つの項目を診察していました。
1)頚静脈
2)胸部聴診
3)手足の浮腫
4)爪の毛細血管再充満時間

少し説明します。

頚静脈の怒張は、右房圧が反映されます。特に、同じ人を経時的にみれば細かい変化も評価することができます。
頚静脈怒張は、段階的な評価が可能です。
徐々に心不全の治療が進んでくると右房圧が低下していきますので、当初みられていた頚静脈の怒張はみられなくなってきます。なくなってくると治療はいい方向に向かっているなと思えます。

では、具体的にどのようにして頚静脈をみていくかです。
一番右房圧が低下している状態、つまり、心不全の状態が落ち着いた状態から説明していきます。心不全のうっ血がほぼない状態の頚静脈の診察の仕方です。
この状態では、頚静脈の怒張というよりは、肝頚静脈逆流という所見をみます。なぜかというと、頚静脈は怒張していないからです。
どのようにするかというと、手をパーにして、心窩部から肝臓の下あたりの広いの範囲のお腹を圧迫します。
要は、下大静脈を圧迫して、右房への血液の還流量を一時的に用手的に増やして、わざと右房圧を上げます。それで頚静脈がぷくっと張るのがみえると、肝頚静脈逆流所見ありとなります。頚静脈を観察するために、患者さんは顔だけ自分とは逆側を向いてもらって、頚静脈を見やすいようにしましょう。
一番右房圧が低下しているときには、ベットを完全にフラットにして、さらにこの状態で、お腹を広く圧迫しても頚静脈は拡張せず、特に浮き上がってきません。これがもっとも右房圧が低下してい時です。心不全が疑われる時に、この所見がなければ心不全ではない可能性が高いです。

適正な右房圧か脱水で右房圧が低いかという可能性が考えられます。


身体所見上2番目に右房圧が低い状態が、ベットにフラットに寝ている状態で、普通に寝ている状態では頚静脈はみられないが、お腹を押すと頚静脈が張る状態です。つまり、フラットな状態での肝頚静脈逆流が陽性という状態です。


3番目の状態は、寝ているときには頚静脈は張っているが、ベッドを徐々に角度をつけていくと、その角度に応じて、つまり心臓と頚静脈の高さの違いに応じて、頚静脈が虚脱するという状態です。これも、フラットにしていると張っている頚静脈を観察して、徐々にベッドの頭を上げていって、頚静脈が虚脱する角度でみることができます。

虚脱した角度で、お腹を押すと基本的には頚静脈は怒張します。つまり、肝頚静脈逆流陽性です。


4番目の状態は、半坐位でも頚静脈が怒張している状態で、お腹を押すとさらにその張りが強くなるような状態です。


5番目の状態は、完全に90度の座位でも(実質起立している状態)頚静脈が怒張している状態です。


さらに、右房圧が高く、特に三尖弁閉鎖不全が強くなるとc-V waveという所見がみられるようになります。

 

実際の治療の際には、この逆で進んでいきます。


具体的には、心不全の患者さんであれば、ベッドを60度程度に傾けている状態でも頚静脈は怒張していると思います。この状態を基準にしていきます。
少しずつうっ血の治療が進んで、右房圧が低下していくと、初めは60度で怒張していた頚静脈が、みえなくなり、軽く圧迫すると怒張する程度になります。さらに進むと、少し強く圧迫しないと怒張しないようになります。さらにさらに治療がいい方向に進むと、ベットで真横になってもらってやっと怒張する程度となり、さらに、ベッドで横になってお腹を圧迫させても、頚静脈が怒張しなくなります。
この状態がうっ血が解除された状態のひとつのサインとなります。

 

もちろん、頚静脈だけでなく、四肢の浮腫やレントゲンでのうっ血・胸水、体重といった身体の所見や検査値も同様に改善していっていると思います。
レントゲンは、ずっと毎日とるわけにはいきませんが、尿量を軸に、体重、四肢の浮腫、頚静脈怒張は毎日チェックしましょう。