健康リブ ー健康に生きるために病気を知るー

心不全について私が知るすべてを話すブログ

貧血と頻脈による心不全の経験

貧血や動静脈シャントは、hyperdynamic stateの心不全といわれます。貧血では、赤血球中のヘモグロビンが減少しているので、それだけ酸素運搬能が低下しています。濃度として低下しているので、それを補うには、血流量を増やす必要があります。つまり、心拍出量を増やすように全身は心臓に働きかけます。
そうすると心臓は普段よりも心拍出量が多い状態を維持しなければならず、これが慢性的な負荷となり、心機能障害が生じて、心不全そのものの原因となります。
このような負荷が長期間続けばどのような心臓でも心機能障害が起こるのか、それとももともと心機能障害が起きやすい何らかの遺伝子的な因子があるから起こっているのかはわかりません。おそらく、Hbの濃度や持続する期間によって、感受性の高い(機能不全を起こしやすい)心臓から機能障害が起きて、ある一定の閾値よりも低い値(Hb 4g/dl、2か月とか)になれば、ほぼすべての心臓が機能障害をきたすのかはわかりません。(血液疾患のある宗教の方で、Hb 4.0g/dl程度が少なくとも数か月続いているのに、労作時の息切れなどはありますが、エコーで見る範囲で異常のない人もいますので、大丈夫な人は大丈夫なんだと思います)
 
貧血だけではなく、頻脈も合わさって心機能障害が起こった心不全の方のお箸をしたいと思います。
 
具体的なイメージとしては、労作時の呼吸苦で、来られた人がいるとします。来院された時は、レントゲンでは肺うっ血も胸水もなし。血液検査では貧血で、BUNも上がっていて、胃カメラで、治り始めた胃潰瘍(stage H2)があり、少し前におこった治癒過程の消化管出血と診断されます。Hb 7.6g/dl。女性であれば、Hb 8.0g/dl程度でなら、すぐに輸血ことすることはまぁないと思います。胃薬と鉄材を投与しながら、翌日も一応血液検査を見て、同じ程度であればそのまま様子を見るくらいだと思います。
ただ、他の患者さんと少し違ったのが、少し頻脈で、110-120bpm程度の頻脈であったのを消化器内科の先生は把握していましたが、洞調律だったこともあり、そのうち改善するだろうと様子をみます。しかし、全然頻脈は改善せずに、気が付いたら、安静時の呼吸困難を訴えだしたというような感じです。貧血はよくなってきていたというのに。
 
呼吸困難を訴えた時の検査で、レントゲンでは、入院時にはなかった肺うっ血に、少し肺水腫気味。心エコーを当てると、左室の収縮機能は著明に低下していて、循環器内科にコンサルトとなります。
これは、もともと心機能障害があったが症状がなく普通に生活されていた方に、消化管出血による貧血が合併したのか、何らかの心機能障害が起こりやすい気質(おそらく遺伝子的な何か)があって、そのうえで、潰瘍の状態からすると2-3週間程度は続いていた貧血、それに洞調律ながら頻拍が加わり心機能低下が起こったか、どちらかはわかりません。
 
治療は、まず全身の水分のバランスを把握します。体うっ血などの浮腫があれば、もちろん利尿薬を使用します。洞調律でも、ジギタリスはある程度有効ですので、単発か、短期間使用して、心拍数を調整します。
後は、通常の心不全と同様に、循環不全を評価しながら、呼吸状態を安定させます。
ある程度心拍数をジギタリスで調整して、循環不全がないことと、エコーで評価する心拍出量は保たれている(Hb10くらい)状態で、利尿もコントロールできてました。数日で、レントゲンでは、肺水腫は少なくともないが、肺うっ血はある状態となりましたので、心拍数に対して本格的にβブロッカーで調整を開始しました。(これはオノアクトのない時代のお話です)
 
心機能障害もあり、いわゆるHFrEFの状態でしたので、慢性期にも使用することを念頭にアーチストを導入開始しました。
まず、1.25mgを朝に1回投与します。その後、昼から夕方にかけて、特に尿量に変化がないことと、患者さん自身に循環不全や呼吸状態の不安定化がないことを確認して、翌日1.25mg 2回投与に増量。この段階で、心拍数は90-100bpm程度でしたので、2-3日程度みて、このころには酸素投与も必要なくなっていたので、5mgに増量し、数日経過を見て悪化がないことを確認した段階で、退院となっています。
 
退院時は、心エコーのLVEFはすこぶる良くなって20%→55%程度。その後、外来で、すこしずつアーチストを増量していって、最終は20mg。3か月程度でLVEF 60%程度に改善していました。
残念ながら、もともと心機能が悪くても無症状であった人は、初回のβブロッカーに反応して心機能が結構よくなる人もいるので、この方がどのような原因で、心機能障害となったのかはわかりません。後日の検査入院でもあきらかな心機能障害の原因は同定できていません。
ただ、脈が安定してからエコーでみる心機能の改善が結構早かったので、頻脈がかなり関係していた可能性はあるのではないかと思っています。洞性頻脈でというのはめずらしいかもしれませんが。