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心不全の増悪因子としての貧血

貧血は、慢性心不全にしばしば合併します。心不全では、十二指腸から分泌される鉄の吸収に関わるホルモンの低下や、心不全によく合併する腎機能障害に伴いエリスロポエチンも低下することから、さらに貧血の合併が増えるとされています。これらは心腎連関、さらに貧血を加えた心腎貧血連関などいわれます。 
急な貧血に関しては大抵出血で体循環血液の量が絶対的に減少するため、心房圧が低下し、急性増悪の原因にはなりません。心不全の定義は、心内圧が上昇するということが最も重要ですので、心機能の悪い人が出血して血圧が下がっても、これは心機能の悪い人におこった出血性ショックであり、心源性ショックではありません。
ただ、出血の急性期になんやかやと治療をして、出血自体は落ち着いても、例えば輸液をしすぎたり、心機能がいい人であれば許容範囲のちょっとした貧血(Hb 8.0g/dl程度)でも、持続すると心不全の急性増悪の原因となることはあります。貧血の持続は、徐々にうっ血を引き起こして心不全の急性増悪の原因となることはあります。
 
具体的な患者さんのイメージとして、高齢の女性で、内科的な疾患での通院はなく、整形外科には通院しているというような状況は結構よくある状況かと思います。
腰痛やひざの痛みがあり、鎮痛薬を処方されていて、ずっと飲んではいるものの、何かのきっかけで、胃粘膜の血流障害が起こって、胃潰瘍ではないもののびらん程度の微小な病変で、少しずつ徐々に貧血がゆっくりと進んで、ヘモグロビンで10程度から8程度まで進行していたりすることがあります。それが持続すると、少しずつ知らない間にむくんできます。意外に、足の浮腫や顔の浮腫は、少しずつ起きるといつも見ている家族などは気付かないが多いようです。1か月とか2か月に一度しか見ない人のほうが顔のむくみなどに気付いて、えらく顔が大きくなっていることに驚かれて受診を勧めるということがあります。
ゆっくりむくむと症状自体はあまりないので、受診の動機にならず、胸水などがそれなりにたまって呼吸不全の症状が出るまで受診されないことも少なくはないです。
概して、心不全の受診の動機はほとんどが呼吸不全だと思います。
心不全の急性増悪の原因が、鎮痛剤というのも結構あります。NSAIDSは、そのものが心不全の増悪の原因にもなりますし、腎機能障害を悪化させることもありますし、出血させることもあるので、結構心不全の増悪の原因になります。
 
貧血は心拍出量の増加を求めます。心臓は心拍出量の増加させようとします。そうすると心内圧が上昇します。
心機能、特に拡張機能に問題がなければ、前負荷を増やすために左室容積が増えても、圧はほとんど上がりませんが、高齢女性では拡張機能が潜在的に障害をきたしていることが多く、左室拡張末期圧がそれなりに上昇します。これが心不全の急性増悪の根本的な原因になります。
一般的に1回拍出量が増加している方向の心不全は、いわゆる右心不全の症状がメインになります。機序としては、左室の拡張末期圧が少し上がったら、右室にとっての後負荷の上昇になります。すると右室の収縮末期容積が増加します。この時に、1回拍出量が多いほうが、少ない時に比べてより右室拡張末期容積は大きくなります。つまり、1回心拍出量が多い時の心不全のほうが、左室拡張末期圧のわりに右室の拡張末期圧、右房圧が高くなりますので、左心不全症状よりも右心不全症状のほうがでやすくなります。
 
このような時の心不全は、少し輸血して、利尿薬を使うか、まぁ、鉄剤と利尿薬だけでも治療は可能なことが多いです。
HFpEFのようなときには、結構エコーが正常にみえても、small heartといって心臓が小さくて、心拍出量が低下していることもありますので、一時的にピモベンダンを少し使うとかいうのも結構有効です。