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不整脈による心不全の急性増悪(心房細動や心房粗動の時)

心房細動や心房粗動によっても心不全は急性増悪します。
心房粗動に関しては、心房が200bpmを超える頻拍となることやそれにより心房心室の連関がうまくいかないことで、心房機能が弱まります。また、ほとんどの場合には、心房と心室の伝導比が2:1となり、心室の心拍数が120-150bpm程度の頻拍になることも多くそれにより心不全が急性増悪化します。
同じように心房細動になると、心房が機能停止します。心室の機能にすべてが託されることになります。

心房機能については、以前にお話ししましたが、昔言われていた心拍出量の3割を担うとかいうのはもちろん間違いです。そのようなことはありません。不全心は少しおいておいて、心機能に問題がなければ、心房細動になったところで、心拍出量は減りません。健常な心臓であれば、血行動態的には何も変わらないこともありますが、心房細動になり、心房機能が失われることで、拡張末期圧があがると考えています。心房機能は、拡張末期圧を低下させる、または上昇させないためにあると考えられます。


拡張末期圧は、心室のみの機能によって決まるときには、弛緩機能のみで決まりますが、そこに心房の収縮があれば、同じ拡張末期容積でも圧を低く抑えることができます。右室カテーテル検査で、拡張期にみられるA波の前後で圧がほとんど変わっていないことを経験しますが、拡張期のA波の前は、心エコーの流入波形でもわかるように、血流のやり取りがないために圧は変わりませんが、心房収縮の時には、血流がぐっとはいるため左室への血液の移動に伴って圧が上がります。しかし、その後に下がって、圧はA波の前よりすこし高い程度のレベルまで低下します。これは同じ血液量を左室の弛緩に対して一定の圧で押し込む(静脈圧で押し込む)よりも低い圧で抑えられていると考えられます。
このように心房は、心房収縮で心室の拡張末期圧をできるだけ上げないようにしています。

これが破綻する、つまり心房細動になると心房収縮がなくなりますので、拡張末期圧が上昇します。多くの方が心房細動の時に、頻脈になるために動機を訴えますが、心拍数はあまり変わらない心房細動の時には、動悸というよりも息苦しさを訴える方がいますが、これは拡張機能が低下していて、心房機能の消失によって拡張末期圧が上昇することによる症状であろうと考えられます。


心房細動になって、心拍出量が減って、その代償が起こっているといえなくはありませんが、やはり、心房機能は心拍出量の何割というよりは拡張末期圧を上昇させない機能というほうがいいように思います。

 

心房細動や心房粗動の時には、頻拍になること、脈が不整になることで心筋の効率性が下がること、心房機能が低下ないし消失することで拡張末期圧が上がってしまうことにより、基本的には左室拡張末期圧の上昇が有意な左心不全を中心とした急性心不全になります。
ただ、それほど頻拍にならないときや、心房細動や心房粗動が比較的慢性におこった時には、肺うっ血などの症状よりも体うっ血の症状が前面に出てくることがあります。


ちなみに、心房細動などの時に限らず、下肢の浮腫があるというのはある程度長く血行動態的に心不全を起こす異常をきたしていたことが示唆されます。

また、このようなときには、左室の拡張末期圧の上昇による肺うっ血の症状は耐えれるが、その間に右室拡張末期圧が高い状態が長く続いて体うっ血による浮腫が生じているということになります。体うっ血の症状が強い心不全の方は、拡張機能という点で、左心より右心が悪いということもいえます。

ただ、肺うっ血が何度を繰り返している人に関しては、肺胞やリンパの構造が肺の拡張末期圧上昇による肺うっ血や肺水腫に対して耐性のようなものを獲得していることもありますので、このような時は例外になります。