心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心不全の治療(21):ひとまずのラシックス静注後の利尿薬の選択をどうするか。そして、ラシックスはクロールとともに持続静注を。

慢性心不全の急性増悪の時に私が行っていた利尿薬の投与法は、まず、ラシックスを10 or 20mg静注して、その反応を60分程度でみて、次にどうするかを考えていました。

次に打つ手として多いのが、トルバプタン(サムスカ)の追加内服か、ラシックスの追加静注で、呼吸状態がコントロールできていないときには、もちろん陽圧換気や気管挿管をしますが、機械的に除水をするECUMということも治療手段としてはもっていないといけないのかなと思います。
また、高張食塩やKCLに混ぜて持続投与する方法も、初日にすることはあまりありませんでしたが、尿量がいまいちな時にはしばしば行っていました。

 

まず、ファーストタッチでラシックスを10mg or 20mg静注します。

その後、反応が良ければ、尿道留置カテーテルの中に、薄い尿がみられるようになります。尿がたくさん出ますと、電解質以外の生化学検査項目が薄くなりますので、色的にも薄い尿になります。
この薄い尿をラシックス尿と私の周りは言うてますが、これがでれば、利尿薬に反応しているということになりますので、尿量自体はその時は少なくても、いずれ、たくさん出てくる可能性があります。
ちなみに、ラシックスで出た尿は、ラシックス前の尿と比較して、尿生化学では、Na,Clが高く、Kが少ない変化となり、UN,Cr,UAは尿量の逆数と一次関数の関係で変化します。
ラシックス尿が出ていれば、ひとまず様子を見てもいいかと思います。

 

追加治療は、このラシックス尿がみられないか、うっ血による症状が強く、ラシックス尿がみられてはいるものの、もっと尿量が欲しい時に考慮することになります。
また、もともと内服で押していく考えがあるときには、この段階で内服を行うことになると思います。
(オーダーして、薬が準備されるまでに、心筋梗塞の時の抗血小板薬などのように、よほど急ぎでなければ、1時間程度はかかると思いますので)

この時の追加内服としては、トルバプタンか、ルプラックか、ダイアート、ラシックスあたりになるかと思います。
尿量が欲しい急性期治療であれば、トルバプタン一択でいいかと思います。
とくに、血清ナトリウムが137mEq/Lを下回っているようなときには、積極的な適応になると思います。142mEq/L程度までは投与してもいいかと思いますが、血清ナトリウム値が142mEq/Lを超えているときには、ひとまずは、投与しないほうがいいように思います。
ラシックスで利尿が付くだけでも、ある程度は血清ナトリウムは上がりますので、142mEq/Lを超えいていて、ラシックスで利尿が多少でもあって、それで血清ナトリウムが上がっていたとして、そこにさらにトルバプタンで血清ナトリウムが上昇すると危険かなと思います。

以前の患者さんですが、85歳くらいの小柄な女性で、利尿薬を飲んでいない初回心不全増悪で、123mEq/L程度ので結構な低ナトリウム血症の方でした。
うっ血が強くて、ラシックス20mgを静注して、(小柄で初回の高齢女性だったので、10mgでよかったと思います)、いまいち反応が悪いなと思い、サムスカ 3.75mgを内服していただきました。
その後、じゃんじゃんと利尿があり、入院後24時間で、4000mlの尿量がありました。血清ナトリウムも140mEq/L程度まで上昇がありました。
尿量は想定の範囲でしたが、おもったよりもナトリウムが上昇していました。
橋の浸透圧変化による脱髄の症状はみられませんでしたが、すこし、ひやっとしました。

 

さて、ナトリウムが高い時には、ループ利尿薬を追加投与になると思います。
ラシックスを10mg or 20mg静注を追加するか、それなりに尿量があるが維持したい時には、1日20-60mg程度の用量で、持続静注するかになると思います。


それほどではない心不全の場合の追加治療は、内服のループ利尿薬の追加投与になるかと思います。
ループ利尿薬の選択は、大まかには、慢性期を見越して投与するのであれば、カリウム値をみて、4.2mEq/Lを超えていれば、ダイアート、以下であればルプラックということでいいと思います。また、急性期だけの使用で、最終的には中止する予定であれば、ラシックスでもいいともいます。
慢性期のラシックスはお勧めしません。ラシックスは腸管からの吸収が不安定で、特にうっ血が起こった時の吸収が落ちるので、心不全の増悪に結構無力です。持続時間も腸管からの吸収も安定している、ダイアートとルプラックを血清カリウム濃度によって使い分けることをお勧めします。

 

また、初日に投与することはないですが、高張食塩ないし、KCLにラシックスを混ぜての持続静注もなかなか有効です。

体の水分のコントロールはクロールが制御しています。血清でも、尿生化でも、ナトリウムよりもクロールでみたほうが、より予後を正確に評価できると報告されていますので、クロールとともにラシックスを投与するというのが重要です。
高張食塩は、3%という報告もありますが、100mlの生理食塩(0.9%)に、20mlの10%NaCLを混ぜて、約2.4%のNaCl溶液120mlとして、そこにラシックスを20-60mgまぜて投与するのが、簡単かと思います。60mgのラシックスは6mlなので、ラシックスを混ぜてもそこまで薄くはならないと思います。
投与時間は、120mlを2時間から4時間程度で投与するのが安全かと思います。30分は少し早いかなと思います。右心機能不全などで慢性的に多量の利尿薬が投与されていても結構利尿が得られることがあるので、お勧めです。


また、心不全を治療していると結構低カリウムになります。この時に、カリウムの補正といって、塩化カリウム製剤20mEq、20mlを1-2時間程度で投与することがあると思います。この塩化カリウムにラシックス20-60mgを混ぜておくのも有用です。特に重症心不全では、不整脈予防のため、血清カリウム 4.5mEq/Lは死守すべきラインになりますので、カリウム補正とともにクロール+ラシックスを投与するイメージで行くのもいいと思います。