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急性心不全の治療(22):心不全治療の時の1日尿量は2500±500mlくらいでいいと思います。

ファーストタッチの後に、具体的にどのように利尿薬を使用するかをお話ししました。
 
心不全の急性期の治療において、どれくらいの尿量があればよしとするかについての、私がなんとなくこれくらいかなと思っていることをお話ししたいと思います。
できるだけ具体的にお話ししたいですが、やっぱり結構ケースバイケースのところは否めませんので、私自身も確実にこれに沿っているわけではなく、いろんなデータを集めて評価したうえで、なんとなくの感覚(経験からきていると思います)で次の治療を決めている部分は多分にありますので、あくまで参考程度にきいていただければと思います。
 
まず、入院した直後のファーストタッチでは、ラシックスに反応して、時間60ml程度は出てほしいなと思います。時間100ml以上出ていれば、いけるなと思います。
尿道バルーンを入れるような状態では、バルーンを入れた直後は、濃い尿が少量出てくると思います。この尿の電解質をみると低循環か、利尿薬に反応しそうかわかりますが、今回は端折ります。ラシックスを投与して、30分くらいでカテーテル内に薄い尿が見え始めたら、そのあとに尿が出てくる可能性が高いと判断できます。いわゆるラシックス尿です。
バルーンを入れていないときでは、2-4時間程度の間隔での尿量を概算でいいので出して、やはり時間60mlを超える尿量があるかないかがキーになると思います。また、利尿薬投与前後の尿生化学をみると利尿薬の反応性から腎循環まで評価できますが、これも端折ります。
 
時間60mlでいうのは、一応このペースでいくと、24時間で1500ml程度になりますので、まぁ、最低限これだけ出てくれば、あとは利尿薬の再調整や点滴などを調整すれば何とかなるかなと思います。
時間40ml程度であれば、油断していると、点滴や飲水などで水を摂取するため、±0か、プラスバランスになっている可能性もあります。
最低限1500mlを目標に、もちろんうっ血の状態にもよりますが、2500ml±500ml程度(時間80-120ml程度)が心不全の治療の時の1日尿量として適当かなと思います。
 
これ以上の尿量では、多少のことで腎不全や低循環になることはないと思いますが(なるくらいならもともと利尿が悪いはずですし)、電解質の乱れは注意が必要です。特に、カリウムは要注意です。
また、サムスカ投与時には、ナトリウムも一定間隔で定期的に測定する必要はあります。どの程度の間隔かは、投与前の値と、初回投与の翌日はさすがに血液検査すると思うので、その間の尿量とナトリウムの変化を見て、決めていくことになります。慣れないうちは、毎日に近いくらい測定してもいいと思います。慣れていけば、なんとなく、尿量とか見ながら適当に間隔をあけれるようになります。
 
後、もちろん尿量は、飲水や点滴などのいわゆるInの総量とも強く関係します。2500ml程度というのは、まぁInが1000-1500ml程度を想定していて、マイナスで1000ml程度で、体重でマイナス1kg前後減っていくのが理想かなと思います。
 
このInとOutがおよその体重の変化に一致しますが、1000ml程度の尿量でも体重が減る人がいたり、毎日3000ml程度の利尿があっても体重が減らない人がいます。
少ない尿量でも、高齢女性などでは飲水量が少なかったりすると全身の水分の出入りがマイナスとなり体重は減ります。ほかには、他にも不感蒸泄(目に見えない全身からの汗みたいなもの)が想定より多かったり、腸管からの吸収が悪かったりすることがあるのかもしれません。
 
多い尿量でも体重が減らない時には、これは、よくわかりませんが、こちらが制限している以上に水分を飲んでいるのかもしれませんし、尿量を嵩増ししているのかもしれません。
飲んでいたり、尿量をごまかしていたら、こちらも本気でやれば、正すことはできます。ただし、このようなことをしているとしたら、相当精神的に追い込まれている可能性が高いので、しっかりと医療者、患者家族などのチームで取り組む必要があります。
 
 
ものすごくレアなケースですが、時折重症心不全で内科的な治療だけではこらえきれないものの、緊急手術というほどではないというときがあり、補助人工心臓の手術が1週間後とかという感じで決まる時があります。
以前、このようなケースで、左心機能不全だけでなく、かなり右心機能不全があり、全身のむくみや胸水が多量にあった方がいました。
私が直接の主治医になりました。
私は、術前にできるだけうっ血、少なくとも溢水はきれいになくすのが、内科の仕事と思っています。
そのため、前に述べた、あらゆる手段を使って循環を維持しながら利尿を積極的に行い、5日で30000ml程度の利尿を得ました。
もちろん、循環や電解質など身体所見や検査でわかるあらゆるデータと経験から手を打ちました。
最終的に、胸水を含め、完全に溢水を解除して、手術に送り出すことができ、もちろん、術前整えれば、私がいた施設の外科の先生方は間違いないので、術中・術後大きな合併症もなく、無事に終えていただきました。
少し話は関係ないですが、内科から送り出した患者さんに合併症が起きた時は、どのような合併症であっても、少なくとも半分は内科の責任だと思っています(9割以上内科の責任の時もあります)。どんな手術でも、その術前に合わせて、ベストな状態で患者さんを送り出すのも、内科の重要な仕事だと思っています。
 
また、これはImpellaが保険収載される1年ほど前でしたので、今であればもう少し安全にできるのかもしれません。