心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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AR(6):AR jet width と vena contracta

Jet width of LVOT (左室流出路の断面におけるARジェットの占める面積率)​
 Mild AR <25% of LVOT​
 Moderate AR 25%–64% of LVOT​
 Severe AR ≥65% of LVOT; ​ ​
 
Jet width of LVOTとは、LVOT(左室流出路)の断面像で、ARの逆流ジェットの断面がどれだけの面積を占めているかという指標です。
計測する位置は、大動脈弁の短軸で、まず、弁のどこから逆流が吹いているのかを確認して、そのまま平行にずらしていきます。
大動脈弁逆流のjetが弁の少し先(2-3mm程度)で最もくびれる場所があり、そこがvena contractの計測位置になります。その先でAR jetが太くなり、その安定した場所で専有面積を測定します。
その位置で、左室流出路の面積と、逆流ジェットの面積を測定して、その比率を出し、重症度評価を行います。
これで最も注意がいるのは、左室流出路と大動脈弁逆流のジェットが平行に吹いていることが大前提です。
(ここでいう平行とは、それぞれを円としたときに中心を通る直線が平行になっているということです)
そのために、弁自体に異常はないものの、大動脈弁輪拡大などのために、真ん中からまっすぐに吹いている逆流の時にしか正確に測定できません。
斜めに吹いていると、どうしても、断面をとると、本来の逆流の軸に沿った断面よりも大きな値になってしまうからです。
ただ、この検査は過小評価する可能性は低いため、斜めの逆流を測定して、たとえば15%程度であれば、mildといえますし、40%程度であれば、severeではないということは言えます。
また、この短軸をずっと左室まで追っていくときれいに逆流ジェットの円形をとられえていけて、到達度のようなものがわかることがあります。参考程度の所見ですが、役に立つこともあります。
 
 
Vena contracta ​
 Mild AR <0.3 cm​
 Moderate AR 0.3–0.6cm​
 Severe AR >0.6 cm 

vena contractaの原理は、流体が狭窄を通過した後に、通過した狭窄の面積を反映した細さになるという原理を利用しています。他にも影響する因子はありますが、気になる方は、[venturi effect formula]と検索してみてください。
大動脈を逆流して、閉鎖不全の大動脈弁という狭窄部を通過した後に、その閉鎖不全の孔の大きさを反映した流線の狭窄がみれ、その部分を測定することで、閉鎖不全の孔の大きさを評価しようというのが、vena contractaです。そのために、測定する位置は、大動脈弁から2-3mm程度左室流出路側に入ったARjetのカラードプラーの最も狭窄している部分を測定します。
vena contractaは、閉鎖不全の孔の形が円ということが前提となっています。そのために、形が感染性心内膜炎などが原因で、弁の閉鎖不全の形がいびつな時には測定する断面によってカラードプラーの幅が変わってきますので、vena contractaは評価できません。
真ん中か、弁の間でもいいのですが、円に近い孔から逆流している場合にだけに測定可能な評価項目となります。
 
個人的な見解ですが、vena contractaは結構有用かなと思っています。
まず、測定が絶対的に楽であるということと、ARはMR(特に一次性)よりも弁の中央からまっすぐに吹いていて、vena contractaの測定が有用なことが多いことが理由です。
また、jet widthに関しては、測定がやや煩雑なことと、vena contractaも測定部位は違いますが、断面が円形の流体の直径を計っているという原則がありますので、結局は同じような測定をしていることになります。
jet widthがダメな時には、vena contractaもダメということがほとんどであるということもありますので、個人的には、測定できる(vena contractaを評価してはいけない状況ではない)ときには、vena contractaを測定して、jet widthを測定しないことが多いです。