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TR(5):三尖弁閉鎖不全症の重症度評価

三尖弁閉鎖不全の重症度自体はほかの弁膜症ほど客観的な評価が確立しているわけではありません。
AHAのガイドラインを参考にすると、次の4つを評価するようになっています。

♯AHAの基準を参考に、一部エコー専門のASE(American Society of Echocardiography、アメリカエコー学会)という学会の測定項目のを参考にします。

 

• Central jet area (まっすぐ吹いているTRのカラーの範囲。逆に原発性で偏心性に吹いているものでは評価してはいけないともいえる)
• Vena contracta width (vena contractaの幅)​​
• CW jet density and contour (TRジェットの連続波ドプラーの濃さと形)
• Hepatic vein flow (肝静脈のパルスドプラーの波形)
(• PISA radius (PISA法での、PISA半球の半径) #ASEでは採用も、AHAでは未記載)

上記の4つの指標を使って、no or trace (stage A), mild (stage B), moderate (stage B),severe (stage C and D)に分けています。さらに、心不全に関係する症状や右心の機能不全などを参考に、severeを安定したもの(stage C)と不安定なもの(stage D)に分けています。

 

1) Central jet area
Mild TR : <5.0 cm2​
Moderate TR​ : 5–10 cm2​
severe TR:>10.0 cm2​

まず、central jet areaですが、心尖部4腔像で三尖弁輪がもっとも広くみえて、心房が大きくみえる断面で測定します。
もし、他の断面のほうが大きくみえるのならそれで測定することになります。
カラードプラーが最大の面積の時に、その面積を測定して評価することになります。
もちろん、カラーエリアですのでカラーのゲイン次第でどうとでもなりますが、今のエコーの機械であれば、初期設定のままで測定するでいいと思います。また、時間的な問題もあり、一瞬だけ強く吹くのに関しては、この評価は向いていないと考えますが、安定して強く吹くものよりは、同じような面積でも一段重症度を下げていいと考えます。

ただ、これは測定まではしなくても、一番大きくみえる断面で、肉眼的に評価をして、重症度を見めていると思うので、三尖弁閉鎖不全の一番基本的で重要な評価指標だと思います。

 

2) Vena contracta width
Mild TR : Vena contracta width not defined​
Moderate TR​ : Vena contracta width not defined but <0.70 cm​
severe TR: Vena contracta width >0.7 cm​

vena contractaは、血流が狭窄を通ると、狭窄の少し先で流束が収束してもっとも細くなるというVenturi効果を利用した重症度の指標です。
三尖弁閉鎖不全の場合には、三尖弁より少し心房側で逆流ジェットのくびれのような部分を測定します。
この逆流ジェットの幅を測定するのは、断面が円かそれに近い形であるということを前提していて、その断面を測定しているということになりますので、逆流ジェットの断面が円に近い形でない場合には、Vena contractaは評価できません。3尖なので、2尖の僧帽弁のように極端に平坦な形になることは少ないとは思いますが。

 

3) CW jet density and contour
Mild TR : soft and parabolic​ (なめらかで放物線)
Moderate TR​: dense, variable contour​ (濃くて、放物線から変化して三角形に近い形)
severe TR: dense, triangular with early peak ​ (濃くて、頂点が前のめりな三角形)

TRのジェットの連続派ドプラーの形で重症度を判断するというものです。

中等症はかなりあいまいですが、形がなめらかできれいな放物線になっていれば、軽症ということで、逆に濃いめで形が左側が急峻な三角形になっていると、つまり、逆流の連続ドプラーの立ち上がりが急峻で、直線になっていて、最高速度が速く出る、そして、最高速度の頂点から、直線で減速していくような波形になっているときには、重症であるという指標です。
とにかく、なだらかな放物線であれば、軽症で、前屈みで急峻な尖った三角形であれば重症ということになります。

 

4) PISA法
PISA radius(PISA玉の半径)
Mild TR :​<0.5cm
Moderate TR:0.6-0.9cm
severe TR:>0.9cm

PISA法の詳細に関しては、以下を参考にしていただいて、いわゆるPISA玉が観測出来たら、そのPISA玉の半径を測定して重症度評価としようということです。
現時点では、未だ少数の報告例とのことですので、暫定的な評価ではありますが、エコーの人は比較的PISAが好きなようですので、今後報告が増えてくれば、より一般化するかもしれません。

 

5) Hepatic vein flow
Mild TR:systolic dominance
Moderate TR​:systolic blunting
severe TR:systolic reversal

肝静脈と右心房の間は、距離も近くて、弁もありませんので、肝静脈は右房の血行動態の影響を強く受けます。
普通の肝静脈であれば、右房の収縮期にのみ右房からの逆流を少し受けますが、右房の充満期である心室の収縮期と、右房から心室へ血液が流れていく心室の拡張期には、パルスドプラーでそれぞれ肝静脈から右房への放物線状の順行性の血流を認めます。
これが、軽度の三尖弁逆流になると心室の収縮期に右室から右房への逆流があるため、少し、収縮期の肝静脈から右房への血流が低下しますが、あまりわかりません。つまり、わからないということが軽度であるということになります(2つの放物線状の血流が軽度の証拠になります)。
高度になると、右室の収縮による一気に右房へ血液が逆流するため、この時に右房から肝静脈への逆流波形を認めるようになります。つまり、心室の収縮期に肝静脈へ逆流を認め、心室の拡張期のみに肝静脈から右房への血流がある状態になります。この状態が高度の状態と判断されます。