心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

AR(4):大動脈造影の注意点と評価基準

ゴールデンスタンダードといえるカテーテルによる大動脈弁閉鎖不全症の評価です。
大動脈造影といって、大動脈に造影剤を十分に投与して大動脈から弁逆流がどれだけ起こっているのかを観察する検査になります。
 
検査の方法としては、まず大動脈造影用のカテーテル(≒pigtailカテーテル)をどこからでもいいので大動脈弁まで進めます。いったん大動脈弁にこつんと当てて、3cm程引き上げます。(椎体1つ分引き上げるイメージです)
最大の注意が2つ。造影剤のスピード設定と、造影中に左室内にカテーテルが入ってしまわないようにすることです。
 
まずは造影剤の設定ですが、ケチらずに十分に造影剤を使いましょう。
もちろん造影剤を少しでも減らす努力は重要です。造影剤による腎障害の最大の予防は造影剤を少しでも減らすことです。
ただ、大動脈造影は、何らかの理由で(多くは大動脈弁逆流)、その一回の検査で手術かどうかが決まる、大動脈を置換するかどうかを決める検査です。冠動脈造影は、造影CTも含めて、複数回行うことも多いですが、大動脈造影はほぼ人生で一回です。手術するかどうかを決める一回の検査ですので、5とか10mlの削減は考えずに、大動脈造影ではしっかりと打ちましょう。
 
さて、量に関してですが、40-50ml程度がいいと思います。速度は、1秒当たり12-14ml程度でいいかと思います。
ただ、4Fr程度のカテーテルで14ml/秒程度で打つと、造影剤の粘性と勢いでpigtailカテーテルの先端が伸びて、冠動脈のほうへ向かって跳ねることもあるので、4Frのカテーテルでは12ml/秒程度に抑える必要があります。
そのために、カテーテルは5Frで造影したいところです。左室の大きさにもよりますが、少し大きい程度であれば、42ml、14ml/秒。かなり大きいようであれば、50ml、15ml/秒あたりでいいのではないかと思います。
 
また、カテーテルの位置は、逆流の波に乗って左室へ入ってしまわないように常にカテーテルをしっかりと持って検査をしましょう。左室へ入ってしまったら、悲惨です。逆流のみで左室を造影しないといけないのに、カテーテルが入ってしまうと、入ってからは左室造影になってしまいますので、これだけは避けないといけません。
しっかりと3cm位の高い位置をキープして、左室には絶対に入れないようにカテーテルを気持ち引っ張りながら造影してください。
 
さて、造影の結果は、Sellers分類によって評価されます。
I度(mild):逆流ジェットが認められるが、速やかに消失し、左室の全体は造影されない。
II度(moderate):逆流ジェットを認め、左室全体が淡く造影される。
III度(moderately severe):大動脈と同等に左室全体が造影される。
IV度(severe):大動脈よりも濃く左室全体が造影される。
 
カテーテルは、心エコーでmoderateかsevereかわからないときには積極的に行ってしっかりと診断をつけましょう。
もちろん、エコーでsevereであると確証できるときにはもちろん必要はありません。