心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

AR(2):原因と、昔の思い出

 

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大動脈弁閉鎖不全症の原因で多いのは、加齢性変化、二尖弁、大動脈弁輪拡大、大動脈弁の逸脱症ではないでしょうか。
時折、大動脈炎などに合併したものもみますが、リウマチ性変化はかなり減っていると思います。
他には、感染性心内膜炎は時々みますし、施設によっては外傷性をみることもあるのかもしれません。

 

時折あって、知らないと、何がどうなっているのかわからないのが、心室中隔欠損症とそれに合併した大動脈弁閉鎖不全です。
これは、膜様部、つまり大動脈弁の直下に孔が開いてて、そこに大動脈弁が落ち込んではまり込んでいる状態です。

きっちりとはまり込んでいると、心室中隔欠損症の部分は大動脈弁で蓋をされている形になるので、逆流の血流は認めません。また、大動脈弁が落ち込んで、はまり込んでいても、落ち込み方が軽度であったり、弁自体が大きかったりしていると、弁が合わさって、しっかりと閉じて大動脈弁閉鎖不全はおこりません。このような時には、心エコーで、大動脈弁が短軸でみえるレベルで少し観察していると、三尖弁の近くの右室側のあたりで、大動脈弁に接してなにか半円形の囲いのようなものが見えます。これが、心室中隔にはまり込んだ大動脈弁です。はまり込んでいる(ある意味突き出している)のをHerniationといい、囲いはパウチといわれます。


このパウチで心室中隔欠損は閉じていて逆流の血流はないものの、大動脈弁が逸脱して、偏心性に大動脈弁逆流が起こっているのが、心室中隔欠損とそれに伴う大動脈弁逸脱症です。

 


以前、若い男性が急な呼吸困難を訴えて、救急受診したことがありました。
元々、心臓に孔は空いているといわれているが、症状なければそのままでいいといわれ、特に受診はしていない状態だとのことでした。
レントゲンを撮ると肺うっ血はあるが、肺水腫はない。呼吸困難も酸素を吸えば、落ち着いている状態でした。

もちろん心雑音はするが、たぶん心室中隔欠損でもあるのだろうと。
しかし、この音は心室中隔ではない??

エコーを当てて、すぐに理解できませんでした。
大動脈の基部から右室に逆流が抜けているのです。
何が起きたのだ?以前から、なにかあって、今のこの急な呼吸困難?

呼吸状態や全身の状態は落ち着いていてので、ゆっきりと詳しくみて。なるほどと。
おそらく、心室中隔欠損があって、そこに大動脈弁がはまり込んでいたんだろう。
だから、症状なければ経過をみていればいいといわれたのだろう。

多分特殊な施設にいてたので、そのような状態の方を見たことがありました。見たことがあったからわかったのだと思います。

 

で、詳細はよくわからないが、もともと、多少は穴が開いていたのか、いなかったのかはわからない。ただ、現時点では、大動脈弁の右冠尖に大きな穴があって、おそらく孔は急にあいたか、もともと開いていた少しの孔が急に広がったのか、少なくとも一気に大動脈から右室に逆流がおこったのだろうと。


急激な血行動態の変化でも、若くて(20代だったと思います)、心機能がいいものだから、肺血流の急激な増加も、右心負荷も受け止めて、こんな多少の酸素(2L)吸ってれば、症状ないですけどみたいな感じなのだろうか。
症状は、急に呼吸困難が出て以降は、ひとまず落ち着いていたのは幸いでした。
(血行動態悪くなっても、IABP入れれないですし、Impellaも意味ないですし)

ま、手術しなかない状況ですので、転院して、以前に働いていた大学病院の心臓血管外科で手術をしてもらいました。

手術所見は、心室中隔欠損と、Herniationしていた大動脈弁の摩耗かなにかによる穿孔だとのことでした。
弁の形成術と心室中隔の閉鎖術で終わったとのことで、感染などはからんでいなかったようです。

人工弁なども入らずによかったと思いました。

ということもありました。