心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(28:運動耐容能:あらゆる心不全に共通する重症度評価)

心不全の症状は、うっ血による症状と低潅流による症状に分けられますが、初めから低潅流の症状が単独で出ることはなく、低潅流症状はそれなりに進行した重症の心不全でみられます。

 
当初、心不全の症状として出現するのはうっ血の症状が中心です。また、うっ血の症状は、安静時に出なくても、階段を上るなどの運動をすることで、同年代の人より早く息が上がって、ゆっくりとしか運動ができないなどの訴えにより心不全によるうっ血の症状が疑われます。
 
また、重症の心不全患者さんでうっ血の症状がコントロールされている方に関しては、運動中に手足が冷たくなって、低潅流を疑う所見が出る方がいますが、そのような人には、そのレベルの運動を続けるのは困難な可能性があります。
実は、このような症状というものが心不全の最も良い指標の一つとなります。
 
 
心不全の重症度を最も反映する、最も重要といっていい指標が運動耐容能です。
運動耐容能は、簡単に言うとどれだけ運動ができるかということ、つまり、どれだけの運動に耐えれるかということです。
これにはいくつかの指標がありますが、もっとも簡単な指標が①NYHA(New York Heart Association) class分類で、次に簡単なのが②Metsという単位を用いた最大運動量の単位化、他には③6分間歩行といって、6分間に何メートル歩けるか、そして、現在最も客観的な運動耐容能の指標とされているのが、④CPX(cardiopulmonary exercise test, 心肺運動負荷試験)で測定されるpeakVO2という最大酸素摂取量の値です。
 
心不全には、左室の駆出率がほぼ保たれているが拡張機能の障害によって心不全症状がでているもの(HFpEF)や、収縮機能が著しく障害され、心臓が拡大し、拡大の程度と拡張機能の障害の程度によって心不全症状がでてしまうもの(HFrEF)。また、原因などによっていろいろと分類されますが、心不全で共通しているのが、この運動耐容能なのです。
 
エコーでどのように見えても、運動耐容能が良い心不全は、その時点での重症度は低いと判断しても差し支えありません。
心エコーの結果よりも、血液検査の結果よりも、心臓の拡張・収縮機能と全身の組織の酸素需給ギャップの有無を評価できる運動耐容能が最も良い心不全の指標なのです。