心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心臓リハビリテーション(3)

心リハを実際にしていて最も実感するのは、運動耐容能の改善です。
運動耐容能の改善というのは、より強度の高い運動ができるようになるとか、同じ運動でも楽にできるようになるということになります。楽にできているかどうかは、本人の自覚症状もそうですが、心拍数からも判断することができます。


そもそもの心リハに期待された効果としては、その人の心機能、冠動脈の状態から考えられる運動強度の上限を知ってもらうことと、適切な強さと時間での運動療法を続けてもらうことだと思います。

また、実際に心リハを行っていた実感としては、心疾患のためにどれだけ運動していいのかわからない、運動するのが怖いので運動はほとんどしない、またはしなくなったということで、どんどん日常生活から運動というものが遠ざかっている患者さんが多いように思います。
そのような方に、どの程度の運動は安全にできるのかというのを、医療施設でモニタリングしながら実際に運動をして知っていただくというのは重要だと思います。特に、完全に運動不足で、本来ならもっと運動できる人に運動療法を行うと1か月くらいの間でものすごく運動耐容能がよくなるのを経験します。


心不全、冠動脈疾患などさまざま循環器疾患で積極的に心リハを行うことが重要だと思います。


また、心不全は幅の広い疾患でもあります。高齢になると、ある意味誰もが心不全です。加齢に伴う運動時の呼吸困難は、自然経過の拡張機能障害が強く関係していると思っています。
そのため、すべての人に運動療法を行いたいところですが、もちろん保険診療の問題がありますので、循環器疾患の方に限らざるを得ません。


では、具体的に保険医療で心不全として認められている心リハの対象患者さんについて、みていきます。
厚生労働省の保険適応の基準を心不全にフォーカスして、少し要約すると
「慢性心不全により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来している患者が対象で、その患者とは、慢性心不全であって、左室駆出率40%以下、最高酸素摂取量が基準値(peak VO2) 80%以下 脳性Na利尿ペプチド(BNP)が80pg/mL以上の状態のもの又は脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)が400pg/mL以上の状態のもの 」
というように定義されています。

 


10年以上前に心リハについて申請したときに、ある地方の厚生局は、左室駆出率 40%以下は必須で、そのうえで、peakVO2 80%以下か、BNP 80pg/ml以上のどちらかが必要とのことでしたが、その当時は、まだHFpEFという概念はありましたが、言葉が定まっていないよな時代でしたので、EF 50%以上の心不全なんてあるの?というのが、役人の見解だったかもしれませんが、これだけHFpEFが市民権を得た今では、上記3つの項目は並列で、どれか1つを満たせばいいということになっているようです。
(お金に関わることですので、不明な場合には、各地域の厚生局に尋ねてください。少なくとも心リハ学会のお偉い人は並列と言っていて、現実にBNP高値だけで心リハして査定をはねられたことはありませんが)


というわけで、多くの場合には、BNP 80pg/ml (or NT-proBNP 400pg/ml)以上ということで、心不全の心リハとなることが多いかと思います。