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重症の心不全患者への栄養投与について

重症の心不全患者への栄養投与法に関してのお話になります。
 
 重症心不全の患者が何らかの理由で気管挿管などになった場合。例えば、広範の急性心筋梗塞を起こし、気管挿管による人工呼吸管理とIABPによる治療を受けている患者や、移植が必要なほど心機能が悪い状態の患者が何らかの理由で急性増悪をしてしまった場合などへの栄養投与をイメージしていただければいいかと思います
 
 ざっくりといいますと、私の個人的な意見ですが、点滴で十分な栄養を投与して、胃腸に関しては基本的には経鼻胃管から整腸薬を十分に投与して、栄養は投与しないか少量投与する程度にするという方針でやっていました。
 
 救命センターなどの重症疾患治療の領域では、経鼻胃管などから胃や腸へ栄養剤をしっかり投与して、胃腸を積極的に使っていこうというこうとになっていますが、心不全では、これは私の個人的な意見ですが、行わないほうがいいと思います。栄養を吸収して代謝して使える形にするのに、結構なエネルギーを使うので、心機能が低下していたり、不安定な状態でどんどん胃腸を使ってしまうと不安定になったり、逆に腸管に過度な負荷がかかってしまい下痢などになってしまうことがあります。
 それに、点滴で栄養を入れるほうが、栄養量の把握がしやすいですし、呼吸状態が安定します。
 
 投与方法ですが、重症の心不全であれば中心静脈に何らかのカテーテルが入っていると思いますので、もちろん中心静脈栄養ということになります。徐々に状態が改善してきて、中心静脈カテーテルがない場合は、PICCを留置して投与するのがいいと思います。
 投与するのは、できるだけ栄養の濃い点滴をゆっくりと滴下するのがいいです。心不全で栄養の薄い点滴(何とか1号など)を投与する理由はありません、無駄な水を入れないのは、心不全治療の鉄則になります。無駄に入れなければ、利尿で抜かなければらならい水の絶対量を減らせます。50%ブドウ糖液に電解質やアミノ酸を加えて濃い点滴を作ってもいいですし、何とか3号とか、透析患者さん用のもの(ハイカリック)を使ったりしてもいいです。とにかく濃い点滴をゆっくり投与して1日に必要なエネルギーと電解質、アミノ酸を投与します。脂質製剤に関しては、正直どちらでもいいかなと思っています。
 
 また、栄養剤を入れるときにインスリンをどのくらい入れるかということも重要です。インスリンの量に関しては、耐糖能障害の有無を見極める必要があります。糖尿病ががっつりとある人と、若い20歳くらいの重症心不全の患者さんでは、耐糖能が全く違いますので、同じように漫然と投与してはいけません。若年の心不全患者では、インスリンを投与しなくても、自分の力で1日2000kcal程度でも血糖は正常範囲で経過することもあります。このような場合には、インスリンを1000kcalあたり、投与しないか、投与しても2-4単位程度で十分かと思います。若年者に10単位とか入れると簡単に低血糖になったりしますので、注意が必要です。
 全般的に言えるのは、多少の高血糖(300mg/dlとか)になっても大した問題は起きませんので、少なめから始めるのが重要ですし、特に本体とインスリンをはじめから混ぜてしまうと調整が効かないので、初めは本体とは別にインスリン(ヒューマリンR 20単位/20ml)の溶液を作って、適時調整できるようにして、安定したら本体とインスリンの混合溶液にする方がいいと思います。投与のはじめは、頻回(2時間おき)に血糖を測定して、インスリンの投与量を調整していきます。繰り返しますが、高めで調整するほう(150-300mg/dl)が安全です。
 
 次に、経鼻胃管からの投与するものですが、これは、栄養剤の中でも、消化体栄養といって、一番吸収しやすいものを投与するか、栄養的なものは何も投与しないでもいいかと思います。ただし、整腸薬(ミヤBM 6g/日やBF 6g/日とか)は必須です。栄養剤を投与していないのであれば、メサドリンなどの腸粘膜保護剤も投与したほうがいいと思います。栄養を入れるというよりは、腸管の保護を常に意識する必要があります。腸管によさそうなことは積極的に行ってください。
 状態によりますが、呼吸や循環が不安定な状態では、薬剤の投与を中心にして、栄養は敢えて入れる必要はないと思います。もちろん、状態が安定し、抜管などが見えてくる状態になれば、すこしずつ投与するのでいいと思いますが、心不全の重症急性期に積極的に投与する必要はありません。
 また、このような状況でも最低限のリハビリというか、関節などを他動的に動かして拘縮を防ぐことは必要です。特に、理学療法士ができるだけ早く患者に接触することは重要だと考えています。
 
 この急性期からの栄養・腸管保護・関節拘縮予防は、亜急性期にかなり効いてきます。心筋梗塞と違って、重症心不全の時にはIABPや気管挿管の管理が思った以上に長期化することがあります。長期化してからの介入では遅いので、常に前のめりな栄養・腸管・関節のケアーは行っていく必要があります。
 
 
 意識のある方でも、心不全が重症であればあるほど栄養を経口でとれないことは多々あります。食事量が心不全の症状の一つのように状態の安定性をみる検査値のような役割を果たすくらいです。このような重症の方は点滴で最低限の栄養を入れつつ、食事量が安定すれば、点滴を離脱して経口に栄養(要は普通の食事)だけにするようなことも必要です。食事がとれなくても、栄養は絶対に必要ですので、日々重症の心不全患者への栄養投与は気を配らなくてはなりません。
 
 栄養・リハビリは、常にどの疾患のどのステージにおいても重要な要素になります。