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過労による心不全の増悪と、それに対する心臓リハビリテーションの役割

急性冠症候群や感染、貧血などは発症する率をさげるような対応は可能ですが、防ぐこと自体は結構困難です。冠動脈CTをしようが、運動負荷をしようが急性心筋梗塞は発症を予測し予防することはできないというのが事実で、脂質の治療などを通して発症する確率をできる限り下げるということが治療の中心になっています。
心不全の急性増悪の中でも、なんとか予防できる原因があります。それが、過労や過度な水分塩分摂取、怠薬、アルコールなどの摂取といった項目になります。

 

心不全の急性増悪の原因の一つとして、増大する酸素需要(=血流需要)の亢進に心臓は心拍出量を増やすために、前負荷を増やすことで対応します。前負荷は心室の拡張末期容積と同じですので、前負荷が増えるということは心室の拡張末期容積が増えるということになります。心室の拡張末期容積が増えると、心臓の拡張機能(弛緩機能が正しいか)によって、どれだけの圧が上がるかが決まります。正常であれば、ほとんど圧は上がりませんが、不全心ではその機能不全の程度によって圧がそれなりに上昇します。この心室の拡張末期圧の上昇というのが心不全の急性増悪の根本になりますが、心不全の増悪に関してもう一つ重要なことがあります。それが、不全心はすぐには元に戻れないということです。
正常な心臓であれば、何らかの理由で心拍出量の増加に伴い、必要なだけ心臓が頑張り、必要な酸素需要が低下すれば、元の安静の状態に速やかに戻ります。しかし、不全心では、元の状態に戻るのに時間がかかります。これは、心不全などの運動耐容能の検査で行われるCPX(心肺運動負荷試験)の運動終了後の酸素摂取量の安静状態への改善時間の遅延という形でみることができ、この時間が遅延すればするほど全身の正常状態への復帰の遅延とそれに伴う心臓の反応性の低下の度合いを評価することができます。
過労がなぜいけないかというと、少し動きすぎただけではもちろん心不全の急性増悪にはなりませんが、通常であれば、負荷をかけても体の制御により一定の時間で心臓を含めた体は安静の状態に戻りますが、心不全ではその状態に戻るまでの時間が長くなります。そのため、その人のもともとの全身を含めた機能と体調に合わせて一つ一つの労作を十分な休みをあけながら行わないと、体の状態が元の安静の状態に戻る前に、さらに負荷がかかることになります。つまり、安静の状態に戻っていない、つまり、ゼロではないところに負荷がかかるということになるので、同じ負荷であったとしても、十分に間隔をあけて休みながら行うのと異なり、負荷が積み重なり、さらに、その人の心不全の急性増悪を発症させる閾値を超え、心不全の急性増悪という結果になります。


軽症の心不全であれば、負荷がかかっても、元に戻る時間が短いのと、心不全の発症の閾値が高いことから、負荷が重なっても(=過労)心不全の増悪にはならい程度の負荷であったとしても、重症の人では、回復が遅いことと閾値が低いことから、急性増悪となってしまいます。

 

その人にとって、どの程度の労作がどのくらい負荷となって、どれくらい休まないといけないかなどは、安静時の検査を見てもわかりません。負荷がかかった状態をみないとわかりません。そのために、重要なのが心臓リハビリテーションです。
心臓リハビリテーションの考え方の大きな2つの柱は、運動をさせることと、その人にとっての過労を見極めるということになります。
心臓リハビリテーションは非常に重要な治療ですので、また、別にお話ししますが、心不全の人は、どこまで動いていいのかわからずどんどんと運動耐容能が低下していることが結構あります。そのために、適切な負荷レベルを見極めることを通して、その人の自覚症状をもとに日常生活での活動範囲を設定していくということを行う必要があり、これが心不全における心臓リハビリテーションの非常に重要な役割の一つとなります。