心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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Frank-Starling Law と Starling curveの違い

Frankの法則について、お話ししたいと思います。​
フランク先生は、スターリング先生の一つ年上で、ドイツで同じ大学の前任者であったようです。​
さて、フランク先生は、閉鎖系で左室の圧を測定する実験系を用いたようです。​
(ドイツ語の論文と40ドルいる英語翻訳しかなので、いろんな生理学の本に載っているもののまとめになります)​
詳しいことはわかりませんが、左室を完全に閉鎖系にします。その閉鎖系のまま気体か液体を入れたかで左室を拡張させ、内圧を測定する実験をされました。拡張させる程度を変化させて、それぞれの時に内圧がどのように変化するかを測定されました。閉鎖されていて、容積が変わらない状態の収縮を等容性収縮(isovolemic constraction)といいます。生理的には、拡張期が終わり、収縮期になるまでの、僧帽弁が閉じて大動脈弁が開くまでの間になりますが、実験系では、弁は開かないようになっているため、膨らませて、そのあとに収縮で圧が発生し、収縮期血圧のようになりますが、容積は変わらないので、そのまま圧が低下していくだけになります。その圧の変化を測定したということになります。
結果としては、少しだけ膨らませた時には、圧はあまり上がりませんが、左室の容積を大きく膨らませれば膨らませるほど、発生する圧は大きくなりました。​
つまり、同じ心筋でも大きく引き伸ばせば引き延ばすほど、発生する圧は大きくなる、収縮が強くなると考えられる結果でした。​
これがFrankの法則といわれることがあります。​
時代的には、Frank先生が、容積と発生する内圧の関係を確認し、Starling先生が容積と流量の関係を確認したということになります。
さて、Frank-Starling law(フランク・スターリングの法則)がどのように説明されているかを調べてみると、The law states that the stroke volume of the heart increases in response to an increase in the volume of blood in the ventricles, before contraction (the end diastolic volume), when all other factors remain constant. (Widmaier, E. P.(2016).Vander's Human Physiology: The Mechanisms of Body Function(14th ed.))と記述があります。
つまり、後負荷や体温などの他の因子を一定にすると、拡張末期容積の増加に反応して、心拍出量が増えることとされています。これは、このStarling先生の実験の一部になると思います。これに関しては、「スターリング曲線」の説明であるといった方がいいかもしれません。​
フランク・スターリングの法則に関しては、Vasco Sequeira. Biophys Rev (2015) Historical perspective on heart function: the Frank/Starling Lawの中の記述が経過を表すのには適当かと思います。​
フランクが、まず初期の長さ(拡張期容積)によって、心筋の収縮による圧の発生が増加することを見出し、その後、スターリングが心拍出量で定義された心臓の能力が心臓の拡張末期径が増えれば増加するということを見出しました。このフランクとスターリング(と共同研究者のパターソン)が明らかにした一連の流れから見出された法則をフランク・スターリングの法則といいます。​
フランク・スターリングの法則がよく説明されているのが、次の説明になると思います。​
心筋や横紋筋は伸展させればされるほどに収縮機能がそれに伴って増加する。心臓では、前負荷(inflow)が増えるとそれよって、心室が伸展し、心室は伸展すればするほど(基本的には)収縮機能が増加する。この現象をフランク・スターリングの法則という。​
この記述のほうがしっくりくるかもしれません。