心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

感染性心内膜炎(2)

感染性心内膜炎(IE)の診断は、疑うことから始まります。 人工弁やペースメーカなどの方に呼吸器や消化器感染症状のない発熱などの感染症状があれば、初めから選択肢に入る可能性は高いと思います。しかし、特に弁膜症の指摘のない人が発熱しただけでは、なか…

感染性心内膜炎(1)

感染性心内膜炎は、心臓の心内膜や弁など構造物、ペースメーカーや人工弁などに細菌感染が起こる病気です。 診断が付けば、まずは、グラム染色などを参考にempiricに治療を行い、感染菌の同定後には、descalationを行って、しっかりと抗生剤で治療しつつ、合…

心臓リハビリテーション(14)

施設認定についてお話ししようと思います。 心リハ1と、心リハ2に分けられます。 大きな違いは、保険点数の差と、心リハ1が基本的に循環器ないし心臓血管外科の常勤医師が1人必要で、心リハ2では特に必要ではないこと、担当する理学療法士または看護師が…

心臓リハビリテーション(13)

心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版,最終更新2015/1/14, 心リハガイドライン)によると、循環器疾患の方に主に運動療法を行うことで、以下の効果が認められるとされています。 エビデンスレベル A (400例以上の症例を対…

心臓リハビリテーション(12)

心肺運動負荷検査(CPX, Cardiopulmonary Exercise Test)の指標についての補足的なお話をしたいと思います。 説明なく、peakVO2という言葉を使いました。日本語では、最大酸素摂取量といいます。​ 繰り返しますが、peakVO2は、心機能や全身がどれだけの運動が…

心臓リハビリテーション(11)

心臓リハビリテーションで重要なAT(嫌気性代謝閾値)を求めるのには、心肺運動負荷検査(CPX, Cardiopulmonary Exercise Test)が必要になります。 CPXは、心不全の患者さんに非常に有用な検査で、HFrEFやHFpEFといった画像的には全く違うような心不全患者さん…

心臓リハビリテーション(10)

心不全の患者さんに対して、心臓リハビリテーションを行うのに、入院であれば、できるだけ早くに患者さんの状況を把握して、その段階でできることをやっていくことが重要で、また、自覚症状を中心にして、血圧、脈といったバイタルサインに注意しながらリハ…

心臓リハビリテーション(9)

運動療法などを行っているときに、どのような所見に注意して行っていけばいいのかも重要です。 ここでもアンダーソン・土肥改定基準が参考になります。(一部用語を変更) 途中で運動を中止する場合​ ・中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、胸部症状などの出現​ …

心臓リハビリテーション(8)

リハビリの運動療法をするときに、一番重要なのは運動療法をやってはいけない人や中止基準を知っておくことだと思います。 心臓リハビリテーション学会のガイドラインには、運動療法の適応と禁忌,リスクの層別化(AHA exercise standard より改変) として…

心臓MRIの4ch断面をみていて

心臓のMRIの解析をしている最中に、4chamber viewで動く心臓をみていた時に思ったことです。 心臓が4chの断面できれいに切られていて、心尖部から心房の頂部まで一つの断面になっていました。 ずっと動いている心臓をぼぉーとみていたのですが、心臓の大きさ…

心臓リハビリテーション(7)

前回の仮定の患者さんですが、もともと生活は完全に自立していて、家事全般自分で行っていた高血圧治療中の70歳女性。肺うっ血多少で、少し息苦しい。全身の浮腫が強いが、低潅流所見はない。BNP 160pg/ml、Cr 1.2。エコーはpreseved EF。入院当日の治療で呼…

心臓リハビリテーション(6)

急性心不全で入院された方に対する心リハのかかわり方の具体例をお話ししていきたいと思います。 例えば、もともと生活は完全に自立していて、家事全般自分で行っていた高血圧治療中の70歳女性。肺うっ血多少で、少し息苦しい。全身の浮腫が強いが、低潅流所…

心臓リハビリテーション(5)

心不全の心リハ適応となるような患者さんが入院すると、心リハにエントリーすることになります。 具体的な手順としては、心リハの担当者(医師 or 看護師 or 理学療法士)が、全体の新入院患者を個人情報が許す範囲で把握して、心リハの適応がありそうな人がい…

心臓リハビリテーション(4)

心不全のリハビリの対象の多くは、BNP 80pg/ml (or NT-proBNP 400pg/ml)以上であろうと思います。LVEFが40%以下で、BNP 80以下という状態の方は、安定している外来患者さんや、慢性心不全ではあるものの、心不全とは別の理由で入院してきた患者さんではあり…

心臓リハビリテーション(3)

心リハを実際にしていて最も実感するのは、運動耐容能の改善です。運動耐容能の改善というのは、より強度の高い運動ができるようになるとか、同じ運動でも楽にできるようになるということになります。楽にできているかどうかは、本人の自覚症状もそうですが…

心臓リハビリテーション(2)

どのような患者さんに心臓リハビリテーションを行えばいいかというと、循環器疾患を患っているすべての患者さんが対象となります。しかし、基本的には保険医療ですので、保険で償還される患者さんに行っていくということになります。ちなみに、運動療法には…

心臓リハビリテーション(1)

リハビリテーションほど重要な治療はないと思っています。βブロッカーよりも心臓リハビリテーションだと思っています。(もちろんあえてどちらかを選ぶ必要はないのですが) 個人的には、心臓リハビリテーションという言葉よりも、循環器疾患リハビリテーショ…

左室の駆出率の保たれた心不全について(5)

若年者の肥大心を認めた場合には、精査は必要です。どのレベルまでの検査を行うかに関しては悩ましい時が多々あると思います。 心不全症状があったり、急性心不全で入院した場合には、心エコーはもちろん、除外診断を行うための血液検査・尿検査、冠動脈疾患…

左室の駆出率の保たれた心不全について(4)

肥大型心筋症や、後負荷などが関係している心筋症以外で、心筋が肥大する可能性があって、臨床でも実際に出会うであろう(少なくとも私がみたことはある)疾患について、述べていきたいと思います。 ライソゾーム病:ファブリー病 ミトコンドリア病:MELAS病、…

左室の駆出率の保たれた心不全について(3)

HFrEFの最大の共通点は、心臓の収縮機能が低下し、代償性に心臓が大きくなるということで、それは拡張型心筋症でも、虚血性心疾患でも変わりません。代謝性疾患や弁膜症、高心拍出が必要な状態などがなければ、収縮性が低下もしていないのに、心機能が良いま…

左室の駆出率の保たれた心不全について(2)

HFpEFの急性心不全治療の注意点 急性心不全の治療と被る部分がありますが、HFpEFの非代償性心不全の治療の注意点は、循環不全と原因疾患です。 循環不全に関しては、すべての心不全に共通していますが、LVEFがそれなりにいいと、心拍出量は問題ないという先…

左室の駆出率の保たれた心不全について(1)

左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF, Heart Failure with presereved leftventricular Ejection Fraction)は、以前は拡張不全型心不全(diastlic dysfunciton)といわれていました。拡張機能に障害が出て不全を起こして心不全を起こしており、収縮機能は問題な…

PVループ(6)

最後に心臓の仕事量に関してです。 心臓は酸素やエネルギーを消費して、血液に対して仕事をして、血液にエネルギーを与えて循環させます。 平均血圧と心拍出量をかけた値が心臓が行った仕事として評価されることがありますが、これは外的仕事といって、心臓…

PVループ(5)

PVループでは、心筋の拡張性の違いによって同じ左室拡張末期容積でも、拡張末期圧が異なることもわかります。特に拡張機能がことさら悪い拘束型心筋症ではこれが顕著になります。 正常な拡張特性と高度に障害された拘束型心筋症の拡張機能曲線をイメージする…

PVループ(4)

PVループを使うと、左室に対して後負荷や収縮性が変化したときに、前負荷を含めた3つの関係がどのように変化するのかを観察することができます。 ドブタミンやミルリノンを使用すると、心臓と血管に作用して、心臓の収縮性を増強し、血管を拡張させて後負荷…

PVループ(3)

本来PVループは、コンダクタンスカテーテルという特殊なカテーテルを用いて、左室の容積と圧を測定し、図としたものです。安静時の心室の状態をコンダクタンスカテーテルを用いて測定し、PVループを描きます。そのうえで、強心薬で収縮特性を変化させたり、…

PVループ(2)

PVループに関して、どこから注目すればいいのかというと、私は拡張期圧曲線(下図 EDPVR)だと思います。 ほとんどの状況で、この拡張期圧曲線は変化しません。変化しないものから、考えると分かりますと思います。収縮特性(ESPVR)や他の値は、強心薬の投与や…

PVループ (1)

圧容積関係(Pressure Volume Loop)は、PVループといわれ、心不全を理解するにに非常に有効な概念です。 スターリング曲線では、心機能を前負荷の代用である右房圧と心拍出量の関係を曲線であらわしました。心臓の収縮性や後負荷などの影響因子に関しては、図…

starling下降脚についての考察

スターリング曲線では、右房圧を上げれば、右房圧が低い領域ではほぼ直線上に心拍出量は変化しますが、ある程度のところでは、右房圧当たりの心拍出量が変化は徐々に鈍くなっていき、右房圧を一定以上に上げすぎると心拍出量は下がってきます。これをスター…

拡張ガイトンモデルは、心拍出量と心房圧の関係で評価する右心機能、左心機能の相対的な評価の理論的な背景になる。

ガイトンモデルをさらに発展させた拡張ガイトンモデルという3次元の概念があります。 ガイトンモデルでは、心臓と肺循環をまとめて一つの装置として考え、同じ値になる静脈還流と心拍出量、それぞれに対する右房圧の関係を示し、2本の線からなる2次元の図と…