心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

生体内での心拍出量と右房圧が決まる経緯

スターリング曲線は、肺循環を含めた全体の心臓としての前負荷を反映する右房圧と心拍出量を2次元で分かりやすく表現した概念であると思います。

 

ここで、心拍出量と右房圧が、生体でどのように決定されるかを見ていきたいと思います。

心拍出量は、血液の組成と体の酸素需要によって、血流量としても心拍出量が決定することが、生理学的にわかっていて、Fickの法則といいます。
心拍出量を求めるときに、このFickの法則を用いて計算されます。これは、呼気ガス分析から測定された酸素消費量と、動脈血と、混合静脈血である肺動脈の酸素飽和度の差と、ヘモグロビンの濃度から心拍出量を求める計算式になります。
つまり、血液の組成であるヘモグロビンと体の酸素消費量(=酸素需要)が心拍出量を規定しているといえます。心拍出量の計算に、心臓の機能も血管の圧も一切関係はなく、
心臓以外の要素で決まった心拍出量を流し続けるために心臓は存在します。
循環にとって、心臓は従属的だといえます。

心拍出量が決まれば、心臓はできるだけ効率的に心拍出を続けるように最適化され、それが左室駆出率60%、心拍数 60bpmで、胸郭などの大きさからに対しても、最適な大きさとなっているようです。(安静時の効率は少しだけ悪くなっていて、軽い程度の運動をするときに最適化するようです)

 

全身の要求する酸素需要と血液の状態から心拍出量がきまり、心臓の最適な心拍数から1回心拍出量が決まります。

 

心臓は常に収縮弛緩を繰り返していますが、どこかでスタートを決めるとすると私は収縮末期だと思っています。
心室の収縮末期の容積は、心臓の収縮性と血管の後負荷によって決まります。ここに必要な1回拍出量を足すと拡張末期容積になります。
心房機能も合わせた心臓の拡張機能により、それぞれの心臓の拡張末期容積に対して拡張末期圧が決まります。心室の拡張末期圧は、平均心房圧とほぼ同じになります。
また、右室機能と左室機能のどちらかが極端に悪くない限り、右室の心拍出量に合わせて左室も同じ血液を駆出できますので、右室の心拍出量が決まれば、左室の心拍出量が同じ値で決まります。これは、逆の考えでもよくて、左室の心拍出量が決まれば、同じ値に右室の心拍出量が決まるとも言えます。

(右か左のどちらかが悪い時には、悪いほうの上限の心拍出量がその人の心拍出量になります)

 

さて、ここで左室の収縮性と全身の後負荷から左室収縮末期容積が決まり、1回拍出量を加えることで、拡張末期容積、末期圧、平均左房圧が決まります。平均左房圧と肺血管系の抵抗が右室の後負荷になりますので、右室収縮機能とこの後負荷から右室の収縮末期径がきまり、1回拍出量を足すと右室拡張末期容積、末期圧、平均右房圧と順次決まっていきます。
つまり、心拍出量が決まれば、あとはそれぞれの後負荷と収縮・拡張機能によって平均右房圧まで決まることになります。
この最初と最後を見たのが、スターリング曲線ということになります。