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静脈還流と心拍出量は等しいので、右房圧と心拍出量が決まれば、末梢の静脈圧もある程度は決まる

フランクおよびスターリング先生の研究結果から、心筋を伸ばせば発生する圧が大きくなり、より多くの心拍出量を出せることがわかりました。
これは、心臓からでていく心拍出量に注目した研究といえます。

 

ガイトン(Arthur Clifton Guyton)先生は、心臓に返ってくる血液、静脈還流量に注目しました。
心房圧を変化させることで、戻ってくる静脈血液量を観察すると、-4mmHg以下では、一定で、それ以降は徐々に減少し、生体ではおよそ7mmHgあたりで静脈還流がなくなることを見出しました (Guyton AC:Venous return at various right atrial Pressure and normal venous return curve. Am J Physiol 1957;189: 609-15.)。また、輸液などを行うと全体的にこの曲線は上の方に移動し、血液量を減らすと下方向へ移動するということを見出されました。

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そして、この静脈還流の曲線とスターリング曲線の交わる点で心拍出量となるという概念を完成されました。

これにより心機能が悪くなれば、スターリング曲線は下に移動する代わりに、静脈還流曲線が上に移動して、右房圧を上げ、体の循環血液量を増やして、心拍出量を維持していることがわかります。

 

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ただ、二つの曲線があって、その交点が心拍出量になるというわけではありません。
体が決める心拍出量があって、心機能から決まるスターリング曲線があるので、その段階で心拍出量とその時の右房圧は決まっています。
臨床では、ガイトンの曲線が加わることで、静脈還流量全体を変化させたときに、要は輸液をした時に心機能が悪いと右房圧の上昇のわりに心拍出量の上昇が悪いことがわかったり、静脈還流量と心拍出量が同じだということに改めて気づかせてくれたりします。

 

さて、静脈還流の駆動力は何かというと、心臓と、下肢などの筋肉がある組織に関してはそれも駆動力になります。
心臓で作られた圧によって静脈も血液を循環させるということです。
動脈は最後の部分に抵抗血管があり、そこで圧を削って、末梢の組織の毛細血管内には、定常流が流れるように調整します。その定常流がそのまま静脈系に流れていって、その末梢組織の静脈圧と右心房の圧の圧較差を駆動力にして、右房へ血液は戻っていきます。


静脈にも抵抗はあります。血管があって、そこに粘性のある流体が流れますので、抵抗は生じます。この全身の末梢から右房までの静脈による抵抗の合計(Rv)と心拍出量と同じだけ血液(CO)を右房に返す必要があるため、末梢組織の圧(Pp)は、右房圧(Prv)よりも、CO×Rvだけ高い圧になります。
 Pp=Prv + CO×Rv 
になります。
ただ、筋肉があると、静脈にもポンプ作用が働くので、筋肉によるポンプで圧を作れる分(Pmuscle)だけ、逆に筋肉の手前の組織の圧は低くて済みます。
つまり、筋肉のある末梢組織の圧(Pp1)は、他の組織の圧よりも低くてよい状態となり、
Pp1= Pp - Pmuscle = Prv + CO×Rv - Pmuscle
となりますので、筋肉のポンプがあるとその組織の末梢静脈圧は低くて済みます。

 

静脈の抵抗に関して、静脈は動脈と違って断面が変わり、この断面の形も重要になります。静脈の形は結構簡単に変わります。コンプライアンス自体が、虚脱しているときのほうが高くなります。材質は同じでも、虚脱している長楕円のほうがコンプライアンス自体は高くなり、円ではコンプライアンスは低くなります。


また、粘性流体の抵抗ですので、断面積の形(流体が流れる向きに接する面の周の長さ)と中心からの距離などが関係しますので、動脈の抵抗血管の緊張性のコントロールのような能動的なスタイルではありませんが、静脈抵抗も変化する値ではあります。

 

右房圧が高ければ高いほど、末梢組織の静脈圧が高くならざるを得ず、臓器のうっ血が起きやすくなるということになります。